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部落問題資料室
コラム
荊冠旗 第2522号/11.06.13
 狭い斜坑のなかを腹ばいで石炭を掘る(寝堀り)男、その後ろでは女が掘られた石炭を集める。山本作兵衛と聞くと、この絵が思い浮かぶ
▼先月末、ユネスコの「世界記憶遺産」に、作兵衛の絵と日記類などが登録されることが決まった。これまで、人権宣言、アンネの日記、ベートーベンの第9自筆譜などが登録されている
▼作兵衛は福岡県嘉穂郡笠松村(現、飯塚市)で1892年に生まれた。15歳で炭鉱夫となり、1955年まで50年間続けた。2年後から日記の余白部分や広告紙の裏に絵を描き始めた。当初の墨汁で描かれたものが、多くの人の目にとまり、大きな紙に色彩を施し描き、書くことになった
▼登録された理由は、歴史の記録は国の公文書や会社が中心だが、現場の労働者みずからが記録したことだった
▼作兵衛の絵の特徴は、絵と不可分一体のものとして文字が書き込まれていること。子や孫に炭鉱の歴史を伝えたいが、字だけなら捨てられてしまうことから絵を添えた
▼炭鉱労働を正確に伝えるだけでなく、ヤマを訪れた人たちを描いていることもおもしろい。祭文語り、猿回し(縁起が悪いと抗夫には嫌われた)、春駒、のぞき、細工職人などが見事に描き込まれている
▼スクラップ&ビルド政策としてヤマがつぶされて久しい
▼作兵衛の描く世界へのノスタルジーでなく、ビルドされたものが何だったのか、という反省こそが、いま、重要なのではないか。

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