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部落問題資料室
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主張

 

一歩前進を踏み固め、就職差別撤廃へとりくみをさらに強めよう
(2000.6.26-第1974号)

 昨年6月、民間職業紹介の自由化をおもな内容とした、「職業安定法」の改定がおこなわれた。そのさい、法改定の内容として統一応募用紙の法的裏付けともなる項目と、大臣指針が盛りこまれた。このことは、統一応募用紙の趣旨を徹底させていくうえで、大きな前進といえる。
今回の改定では、「職業安定法」第五条の四「求職者等の個人情報の取扱い」で、公共職業安定所等(公共職業安定所、および職業紹介事業者、労働者の募集を行う者および募集受託者並びに労働者供給事業者)は、「その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、および使用しなければならない」と定め、第四八条「指針」でそのための必要な指針を労働大臣が公表することを定めた。そしてその労働大臣指針(労働省告示第141号)が公表され、昨年12月から施行された。
指針には、「求職者等の個人情報の取り扱い」の項目で「人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となる恐れのある事項、思想および信条、労働組合への加入状況」については、個人情報を収集してはならない原則を明記している。そして、高等学校もしくは中学校の新規卒業予定者から応募書類の提出を求めるときは「職業安定局長の定める書類(全国高等学校統一用紙または職業相談票〈乙〉)により提出を求めること」と明記した。
このことによって、統一応募用紙の法的裏付けができたことになる。

 これまで「統一応募用紙」の趣旨徹底を求める労働省・文部省の「通達」の根拠となる法律はなかった。そのため、民間企業などが居直った場合に強力な指導ができなかったが、これからは「職業安定法」とそれにもとづく「大臣指針」を根拠とした指導となる。
「職業安定法」第四八条の二「指導および助言」では、この法律に違反した者には労働省が指導および助言することができると定め、第四八条の三「改善命令」では、改善命令を出すこともできると定めた。
また、第四八条の四「労働大臣に対する申告」では、違反があった場合「求職者はその事実を申告し、適当な措置を執るべきことを求めることができる」とし、労働省が「必要な調査をおこない、その申告の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置を執らなければならない」と明記した。そして「第五章 罰則」第六五条で、「改善命令」に従わないものには6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられることになった。
さらに、大臣指針には「個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で、本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならない」と本人収集の原則なども明記されており、採用に関する身元調査の歯止めにもなる。個人情報の収集目的の範囲内での使用・管理、本人への開示・訂正権なども明記されている。
今後、これらの「職業安定法」の内容を周知徹底し活用し、さらに「統一応募用紙」のとりくみを強化していこう。

  この数年間すすめられている労働法制の規制緩和には、労働者の権利を後退させる側面や不安定雇用を拡大し差別構造を強化する側面が強く、労働界からも強い反発がある。部落解放同盟としても1998年9月、「労働法制の規制緩和による新たな差別の拡大に反対し、雇用差別の法的・社会的規制の強化」を求め、労働省に申し入れをおこない、そのなかで、「採用選考にかかわるプライバシー保護の法的基準の明確化」を求めていた。また、交渉のたびに「統一応募用紙」違反企業への強力な指導を求めてきた。そして、今回の法改正にあたっても、そうした観点を盛りこむよう重ねて要求してきた。そのとりくみの成果として、このような内容が盛り込まれたといえる。
今回は労働者の個人情報保護の観点から規制のあみがかかったが、今後は就職差別を禁止する法律の制定と「ILO111号条約」の批准が大きな課題となる。大阪などに加え、今年からあらたに東京でも「就職差別解消促進月間」のとりくみが始まった。また、6月28日には東京で、7月5日には大阪で、差別身元調査事件をふまえ幅広く各界の人びとの賛同をもとにした、就職差別撤廃の法整備などを求める大規模な集会も開催される。このようなとりくみを、さらに全国化する必要がある。
 一歩前進を踏み固め、就職差別撤廃のとりくみを前進させていこう。

《資 料》職業安定法(抜粋)1999年6月改定

(求職者等の個人情報の取り扱い)
第五条の四 ①公共職業安定所等は、それぞれ、その業務に関し、求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するにあたっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合には、この限りではない。
②公共職業安定所等は、求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。
(注)「公共職業安定所等」には、職業紹介事業者、労働者の募集を行う者および募集受託者並びに労働者供給事業者も含まれる。労働者の募集を行う者は募集形態の如何(直接募集、間接募集、委託募集)を問わず第五条の四が適用される。

(指針)
第四八条 労働大臣は、第三条、第五条の三、第五条の四、第三十三条の五及び第四十二条に定める事項に関し、職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者及び労働者供給事業者が適切に対処するために必要な指針を公表するものとする。
(指導及び助言)
第四八条の二 労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者及び労働者供給事業者に対し、この業務の適正な運営を確保するために、必要な指導及び助言をすることができる。
(改善命令)
第四八条の三 労働大臣は、職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者又は労働者供給事業者が、その業務に関しこの法律の規定又はこれに基づく命令の規定に違反した場合において、当該業務の適正な運営を確保するために必要があるとめとめるときは、これらの者に対し、当該業務の運営を改善するために必要な措置を講ずることを命ずることができる。
(労働大臣に対する申告)
第四八条の四 ①職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者又は労働者供給事業者がこの法律の規定又はこの法律に基づく命令の規定に違反する事実がある場合においては、当該職業紹介事業者に休職の申し込みをした求職者、当該募集に応じた労働者又は当該労働者供給事業者から供給される労働者は、労働大臣に対し、その事実を申告し、適当な措置を執るべきことを求めることができる。
② 事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置を執らなければならない。
第五章 罰則
第六五条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを6ヶ月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
 八 第四十八条の三の規定による命令に違反した者

《資 料》労働大臣指針(労働省告示第141号)・抜粋 1999年年12月施行

第4  法第5条の4に関する事項(求職者等の個人情報の取扱い)
1 個人情報の収集、保管及び使用
(1)職業紹介事業者等は、その業務の目的の範囲内で求職者等の個人情報(以下単に「個人情報」という。)を収集することとし、次に掲げる個人情鶉を収集してはならないこと。ただし、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りではないこと。
   イ 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
   ロ 思想及び信条
   ハ 労働組合への加入状況
(2)職業紹介事業者等は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で、本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならないこと。
(3)職業紹介事業者等は、高等学校若しくは中等教育学校又は中学校の新規卒業予定者から応募書類の提出を求めるときは、職業安定局長の定める書類(全国高等学校統一用紙又は職業相談票(乙))により提出を求めること。
(4)個人情報の保管又は使用は、収集目的の範囲に限られること.ただし、他の保管若しくは使用の目的を示して本人の同意を得た場合又は他の法律に定めのある場合はこの限りでないこと。                                            
2 個人情報の適正な管理
(1)業紹介事業者等は、その保管又は使用に係る個人情報に関し、次の事項に係る措置を講ずるとともに、求職者等からの求めに応じ、当該措置の内容を説明しなければならないこと。
  イ 個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置
  口 個人情報の紛失、破壊及び改ざんを防止するための措置
  ハ 正当な権限を有しない者による個人情報へのアクセスを防止するための措置
  二 収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置
(2)職業紹介事業者等が、求職者等の秘密に該当する個人情報を知り得た場合には、当該個人情報が正当な理由なく他人に知られることのないよう、厳重な管理を行わなければならないこと。
   なお、有料職業紹介事業者は特に厳重な管理を行わなければならないこと。

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