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部落問題資料室
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主張

 

原点に返り反戦平和のとり
くみを大きく発展させよう
(2001.08.06-第2030号)

 現在、小泉首相は、「改革」をかかげ異常な高支持率をえているが、一方で靖国神社公式参拝を公言し、国内外から強い批判を受けている。そして、その姿勢を変えようとしないばかりか、「A級戦犯も刑を受けており、死んだら仏だ」と居直っている。しかし、A級戦犯をどうあつかうかという問題は、侵略戦争の反省を日本政府としてどのような姿勢で示すのかという問題であり、小泉首相の論理は適用しない。
 また、A級戦犯が祭られていなければ良いという問題でもない。そもそも靖国神社は戦争の象徴である。戦争で戦闘に参加し、たとえ死んでも「神」「英霊」として祭られ国民から尊敬され感謝されることを示し、兵士を戦場にかりだす精神的支えの役割りをはたしてきたのが靖国神社なのである。
 さらに、天皇制と結びついた神道という特定の宗教で運営されており、死者や遺族の意思とは無関係に祭られてしまう。しかも、戦争で死んだ軍人軍属のみが祭られ、空襲で死んだ民間人などは対象にならない。したがって、靖国神社公式参拝は、戦争犠牲者の慰霊とはまったく性格が違うものなのである。むしろ、このような性格をもった靖国神社にこだわる首相の姿勢自体が、侵略戦争を美化する危険な兆候と見られるのは当然である。
 一方、沖縄の平和公園にある「平和の礎」には、敵味方の違いなく沖縄戦で亡くなったすべての人の名前が刻まれている。その平和公圃でひらかれた平和記念式典に小泉首相が出席することは、誰も反対しなかった。
 今、私たちに必要なことは、すべての戦争犠牲者を追悼し、不戦の誓いを新にすることではないか。

 「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書をめぐる問題で、政府は国内外の強い批判を無視し、検定を合格とした。侵略戦争への反省を「自虐的だ」とする「自由主義史観グループ」を中心に作られた教科書だけに、侵略戦争を正当化し、「日本軍慰安婦」問題や南京大虐殺などの歴史的事実を消し去るという誤った歴史認識にたっており、多少の修正で合格にできるものではない。
 私たちは、不戦の誓いを具体化するためにも、このような教科書の採択を許してはならない。そして、若者や子どもたちが戦争の悲惨さや侵略戦争の反省・教訓などを正しく受け継いでいく事が大切だ。
 悲惨な戦争への記憶が薄らいでいくとともに、不戦の誓いを脅かす動きが進行している。一昨年は、「国旗国歌法」「周辺事態法」「盗聴法」「住民基本台帳法」改定など、平和・人権・民主主義と逆行する法律があいついで強行成立された。
 そして今、小泉内閣で、靖国神社公式参拝が強行されようとしている。また、憲法違反の「集団的自衛権」行使、有事法制の整備についても検討され始め、憲法改悪を画策する流れも強まりつつある。
 私たちは、これら戦争を準備する動きを阻止するとりくみを拡大しなければならない。

 戦後の日本は、侵略戦争の反省から「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と日本国憲法を制定した。そして、第九条で国際紛争解決の手段として武力は使わないことを決めた。
 また「世界人権宣言」は、世界中から差別をなくし、すべての人の人権を守ることが平和な国際社会をつくる基礎だと明らかにした。国際化が急速にすすむなかで、この精神を具体化し共生社会をつくる積極的なとりくみが求められている。
 今後、「不良債権処理」などで倒産の増加と雇用情勢の悪化など、経済の混迷が予想される。そして、その不安や不満のはけ口が一方で差別に向かい、もう一方で偏狭なナショナリズムに向かう危険性がある。これも歴史の教訓である。
 このような情勢をふまえつつ、平和憲法と「世界人権宣言」の精神をもう一度かみしめ、原点に返って反戦平和のとりくみを拡大していこう。

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