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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

部落完全解放の
「よき日」めざし
心新たに闘おう

 新しい年、全国水平社創立八〇周年という年を迎え、全水創立の原点にかえり、心も新たに部落完全解放=人間解放へ向かってともに手をたずさえて闘い抜こう。
 今年は、わが部落解放同盟にとってひじょうに重要かつ厳しい年となる。
 第一に「部落解放基本法」制定闘争であるが、多く国民的世論を背景に制定させた「人権教育・啓発推進法」にもとづく「基本計画」の素案が文部科学省・法務省から公表された。しかし、その内容は不十分である。とくに「同和」問題について、国民的課題といいながら、国の責務については一言も言及していないことなど、今後のパブリック・コメントで徹底的に批判し、内容を充実させねばならない。年一回の国会への報告についても、全国的な人権教育・啓発についての実態調査などをきっちりとおこなって、具体的な成果や課題を明らかにした報告書にすべきである。
 また、各自治体に移る人権教育啓発の諸事業を明らかにし、政府にたいし財政的措置をしっかりと講ずるよう、強く求めていかねばならない。この法律の三年以内の見直しという付則を考えれば、この「人権教育・啓発推進法」を画にかいた餅にしてはならないのである。
 第二に、人権侵害救済法制定に向けての闘いは待ったなしの状況にある。一月下旬から始まる通常国会での論戦の前論戦はすでに渦中にあり、①政府から独立した人権委員会にすること②「差別禁止法」(仮称)の課題③人権委員会を都道府県、政令市にも④人権委員会の選任に被差別の当事者を⑤マス・メディアの人権侵害は自主解決とすべきで、権力の恣意によって報道の自由などが侵害されてはならいこと⑥確認会で糾弾学習会への不当な介入を許さないこと⑦内閣府と関連づけた人権委員会とすること、などいくつもの課題をクリアしていかねばならない。
 第三に「人権擁護委員制度の改革」についての答申も公表されたがこれも不十分なものであり、人権委員会と関連づけた実効性ある改革案になっていない。一部、私たちの意見も取り入れてはいるが課題が多く、世論を巻き起こし、より充実したものにする必要がある。
 第四に、三月三十一日で「特別措置法」は期限切れを迎えるが、その法失効後の中心的課題として奨学金制度について全力でとりくんできた。その結果、教科書無償闘争と同様に、特別対策を普遍化する方向へと要求を拡げ、一定の成果をあげることができた。実害のない奨学金制度とするため地自治体の教育委員会への裁量権や具体的交渉などを早急におこなって、学習権の確保に総力をあげねばならない。まさに「部落の解放は教育に始まって教育に終わる」からである。
 第五に小規模住宅改良事業を「人権のまちづくり」に有効に活用することである。未指定部落や立ち遅れのある部落などで周辺地区とともに、ソフト面を主眼としながらも、ハード面の施策として十分活かすことができる。
 第六に地対室のうけ皿であるが、省庁再編のさい、法律の付帯決議もあるように、人権問題は政府・内閣全体でとりくむこととなっており、内閣府が所管するのが妥当である。今後とも、国会内外での闘いを強化し、自治体とも連携し、これを実現するために努めねばならない。

 第七に狭山再審闘争の勝利に向け、さらに国内外の世論をおおいに盛り上げることである。例年の10・31中央総決起集会にはインドのダリットの代表が連帯のあいさつをされ国際的世論への大きなうねりを築く第一歩となった。事実、インドではダリットの人びとがパスを連ねて日本領事館へ狭山再審を求め要請をおこなっているし、国連の規約人権委員会などでも証拠開示について日本政府へ厳しい勧告がおこなわれたことも記憶に新しいところである。
 また、栃木県警で二十有余年鑑識担当警察官だった斎藤保さんが、石川一雄さんの無実を証明する新鑑定書を作製したことは、国民や世界に大きなインパクトを与えた。弁護団の粘り強い闘いのなかで、また新たな無実の根拠が出てきたのであり、東京高裁第5刑事部の高橋省吾裁判長は斎藤鑑定人の鑑定人尋問すべきであり、斎藤さんもこれに応じるといっている。
 私たちは斎藤鑑定の中身をわかりやすく国内外の人びとに訴え国民闘争も強化し、石川さんの無罪をかちとらねばならない。

 最後に、平和、人権、民主主義を三本柱とした日本国憲法が改悪され、戦争への道をすすみかねない危険な情勢を阻止する闘いを強化することが重要である。私たちの闘いは憲法を具体化するという面をあわせもって運動を展開してきたことからも、何としても主権在民、戦争放棄、基本的人権の三本柱は守り抜かねばならない。
 偉大な解放の父・松本治一郎先生は「戦争は最大の差別である」と喝破された。わが同盟は無差別テロにも反対し無辜の民を殺す報復の戦争にも反対しながら、いわゆる「難民」支援のカンパ活動などをおこなってきた。世界から貧困差別、抑圧をなくすことこそ、テロ防止の最良策であることをIMADRなどをとおして世界に訴え、反差別国際連帯の闘いを強める決意である。
 平和や人権が脅かされようとする今こそ、わが同盟は固く団結し、国内外の心ある多くの仲間の皆さんとともに手をたずさえ、部落解放の「よき日」に向かって、さらに闘いを強化しよう。

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