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部落解放の大道切り拓く
部落解放同盟第60回全国大会
松岡書記長が参院の「解放の議席」回復へ出馬
「解放新聞」(2003.05.19-2120)

 

 部落解放同盟第60回全国大会を、5月9、10日、東京・九段会館を主会場にひらき、代議員、中央役員936人が出席、転操期のなかの部落解放運動の大道を切り拓く方向を確認、決定した。新たな時代、情勢のなかで、新「同和」行政を確立させ、これまでの限定的な施策でなく、周辺住民とともに人権のまちづ<りを推進し、人権政策を確立していく道筋を、運動方針とともに人権政策検討委員会3部会報告として示した。また、当面する「人権擁護法案」をめぐる闘い、事件発生から舶年を迎えた狭山再審闘争の方向などを決めた。そして、今秋にも予定される衆議院解散1総選挙で、松本副委員長の5選をかちぬくこと、さらに来年7月の参議院選挙では、「解放の議席」の回復へ、松岡中央書記長が出馬することも決めた。こうした一連の多様なとりくみを地域から積みあげ、部落解放への確かな展望を具現化していこう。

地域で連帯、共闘を

 大会では岸田中央執行副委員長が司会をつとめた。解放歌を全員でうたうなか、各都府県連の荊冠旗が入場した。水平社宣言を岸本萌さん(東京)が朗読したあと、議長団に原田眞智子さん(京都)、深田広明さん(群馬)を選出した。
 本部を代表して組坂中央執行委員長が、60回という節目の大会の意義を強調、一般対策として成績条項を撤廃させ新たに創設した奨学金の闘いの例を紹介し、そうしたものを活用しながら、地域で連帯、共闘を作りあげていこう、とのべた。また、「人権擁護法案」の抜本修正、証拠開示のルール化を突破口に、40年という節目を迎えた狭山の闘いの強化、戦争は最大の人権侵害であると喝破した松本治一郎元委員長の闘いを受け継ぎながら、有事法制反対の闘いを訴え、世界中に人権が確立した社会を作っていこう、とよびかけた。
 来ひんあいさつでは、自見庄三郎・自民党(衆議院議員)、森本晃司・公明党中央幹事(参議院議員)、石井一・民主党副代表(衆議院議員)、土井たか子・社民党党首(衆議院議員)、中井洽・自由党副党首(衆議院議員)、草野忠義・連合事務局長、大道晃仙・中央実行委員会会長(代理)、岡部謙治・中央共闘副議長、小西清則・全同数委員長、山上益朗・狭山事件主任弁護人から、それぞれ祝辞をいただいた。
 議長による来ひん紹介のあと、福田中執が祝電を披露し、高橋康雄・大会運営委員長が大会の成立を宣言。石川一雄、早智子さん夫妻が狭山再審闘争のいっそうの支援を訴えた。
 午後からは、一般活動報告を谷元中央書記次長が、財務・会計決算報告を吉田中央財務委員長が、会計監査報告を石井中央会計監査委員が、中央統制委員会報告を高城中央統制委員長がそれぞれおこなった。
 また、提案事項として一般運動方針案を松岡中央書記長が、財務・会計予算方針提案を吉田中央財務委員長がおこなった。
 その後、午後3時半から3分散会会場で運動方針案などをめぐって討議をおこなった。

松本副委員長5選必勝も
今秋にも予想の総選挙戦で

 2日日は、前日の討議をもとに各分散会の報告がそれぞれの分散会議長からおこなわれ、つづく全体討論では広島、福岡、京都、愛知、兵庫、大阪選出の6代議員が①内外情勢②「人権擁護法案」抜本修正の闘い③狭山再審闘争④新たな「同和」行政・人権行政の創造⑤男女共同参画⑥選挙闘争、などで意見を出した。
 これらの討議を受けて松岡中央書記長が本部答弁と集約に立ち、方針案の字句修正と諸課題について本部の考え方を示した。また、補足答弁を組坂委員長、松本中央執行副委員長がおこなった。このなかで組坂委員長は、今秋にも予定される衆議院選挙での松本副委員長の5選必勝とともに、来年7月の参議院で「解放の議席」の回復へ松岡中央書記長を推し立ててのぞむことを明らかにした。
 つづいて報告事項、提案事項をそれぞれ賛成多数で採決した。
 吉岡中執、岡田中執がそれぞれ決議を読みあげて提案し、採択された。
 大会スローガンを確認したのち、西島中央書記次長が大会宣言を読みあげて提案、採択された。
 議長団退任あいさつにつづき、大野中央執行副委員長が閉会あいさつ。松本副委員長の力強い団結ガンバローで2日間の大会を終えた。

とどまることなく闘いを
本部答弁と集約

部落解放同盟第60回全国大会2日目、全体会での本部答弁と集約を要約して掲載する。

松岡書記長
新しいステージの運動創造めざして

 第60回大会の真撃な議論に、心から感謝を申しあげながら、集約をしたいと思います。
 まず議案書の訂正について別掲のようにお願いします。
 『別冊宝島』など一部マスコミの部落解放同盟にたいする誹諌中傷について。これらの背景には日共の差別キャンペーンがあり、それにのるかたちで出版されていることを、まず押さえてほしい。同時に彼らは、部落問題の解決に、まったく責任をもっていない。こうした人物にまともに対応する必要はないが、多くの激励の声があり、一定の見解を4月14日付『解放新聞』に掲載しました。しかし分散会でも意見がでましたが「このままほおっておいていいのか」ということについては、今後検討してまいりたいと思っています。
 男女共同参画の問題ですが、中央女性対策部のメンバーを特別中央委員にできないか、という意見がありました。解放同盟として男女共同参画の実現をめざし、大会や全国規模の集会、意志決定機関に、女性がすくなくとも30%となるようにとの目標をかかげています。特別中央委員の問題は、規約にもありますし、現状をふまえ、積極的に検討していきたいと思っています。同時に、青年対策部も同様に検討したいと思っています。
 狭山住民の会が116にもなりました。このネットワークを築いたらどうかという意見がありました。そのために中央本部のホームページに連絡先をとの提案もありました。積極的な対応をしたいと思います。
 「人権のまちづくり」運動の方針にかかわって、「運動の拠点としての隣保館や公的施設の点検活動」とありますが、「運動」を「人権のまちづくりと交流の拠点として」と明確にしたいと思います。
 天皇制の問題が運動方針から抜けているという指摘もありました。検討し、補強したものを中央委員会に提案し、決定集に載せていきたい。
 「一般対策の活用例」をとの意見についても積極的なとりくみをしていきたいと思います。
 「代議員証」に年齢と性別の項目があることについては、年齢別、性別の出席者を把握するためのものですが、「代議員証」と引き換える「代議員信任状」にも同じ項目があり、次回からは、「代議員証」から年齢と性別は除きたいと思っています。また、「性別」については性同一性障害などさまざまな問題があり、選択は本人の自由意志にまかせたいと思います。
 全体討論で運動方針案の内外情勢の「構造改革はかけ声倒れにとどまる一方で」との記述について、これでは「小泉構造改革を是」としている前提になっていると読めるとの指摘がありました。「是」としているつもりは毛頭ないわけですが、この部分については、後の基調方針にもあるように、「構造改革の本質は、むきだしの市場原理にもとづく『弱肉強食』の論理であり」というように、誤解のないように修正したい。
 「新同和行政推進施策基本方針」にかかわって、いくつか意見がありました。「新たな時代と社会の状況は、いよいよ部落問題の根本的な解決を実現する段階に至ったことを示しています」についてですが、「いいすぎではないか」という意見がありました。
 これについては、33年間つづいた「特別措置法」による「同和」行政は、大きな成果もあげたが、対象が部落のなかに限定され、その範囲にしか及ばないという限界ももっていました。部落問題は私たちだけの問題でなく、社会全体の問題すべての行政課題、政治課題として求めていける時代になり、新しいステージが生まれてきている。そのながれのなかで、「新同和行政推進施策基本方針」の具体的なところにつながっているわけで、その理解の上に立って、なお不十分な表現だということであれば、誤解のないような表現にすることについて検討してまいりたい。
 私たちは差別があるから「同和」行政を求めているわけで、法律があるから要求したんじゃない。これからも不変です。長野県や兵庫県の千種町のように、逆向きの姿勢をもつところも、たしかにあります。マイナス、危険はたくさんある。しかし、以前から「人権行政」というときに「人権一般にのみこまれてはダメ」という議論を重ねてきたように、危険性を認識しながら、とどまるのではなく、どんな闘いをしていくのかということだと思います。それが「新同和行政推進施策基本方針」です。新しい「まち
づくり運動」を展開して、すべての行政の課題とし、部落問題を解決していこう、という理念をうちたてる行政闘争を展開してきたわけです。そのとき私たちは、部落差別の実態をしっかりと把捉し、差別を生みだしている原因は何なのか。市民の差別意識を生みだしている原因は何なのか。部落問題解決に責任をもった新「同和」行政確立の闘いをしていかなければならない、ということを申しあげておきます。
 長い闘いのなかで、部落周辺の人の方が離れたところの人より「同和」問題にたいする認識が深まっている、という結果が00年調査で明らかになっています。これは、私たちの闘いが広がってきているということであり、だからこそ、「人権のまちづくり」を部落だけで考えずに、周辺の人とともに、差別のない部落問題解決のまちを創るんです。これはだれも否定できません。部落問題の具体的施策が、一般対策を積極的に活用すると同時に実態をふまえた特別措置を求める闘いをしていこう、という姿勢もしっかりもっています。あれかこれかの議論にならないよう、お願いしておきたい。

強国な組織建設と次代の人材育成を

 奨学金の問題では、日本育英会の移行問題について、署名活動の協力に閑して、中央の連合とも協議していきたいと思います。
 男女共同参画の問題については、男女共同参画基本方針の内容を具体化、実現できるよう、中央本部として全力をあげてまいりたい。
 京都、福岡からも厳しいなかでの闘いの報告がありました。こうした教訓を対岸の火事とせず、私たちの課題として、一日も早く態勢を整えよう。
 「人権擁護法案」は、この第156通常国会で抜本修正をかちとるため、全国的な闘いをしていきたい。政府からだされた「法案」は部落差別の解決には役立たない。地方人権委員会を都道府県に設置し、地方自治体がすすめようとする人権行政や「同和」行政と、どう連動させるのか、これが重要な問題となる。地方自治体からも抜本修正を要求するとりくみを、ぜひお願いしたい。
 狭山についても、たくさん意見をいただきました。残念ながら5月23日に不当逮捕40年を迎えてしまいます。再審開始をかちとるためには、狭山弁護団の活動を有利にすすめられる状況を創りだすことが必要で、司法改革の中身として「証拠開示のルール化」を実現できるよう、全力をあげよう。狭山を知らない若者が増えており、総学習運動を展開しよう。差別性、えん罪性はどこにあるのか、あらためて学ぶ必要がある。
 証拠開示のルール化を求める署名運動を5月23日からスタートさせたい。総学習用のテキストも作成いたします。秋にはぜひ討論集会をしたいと思っています。再審の門をひらく、大きなうねりを創っていきたい。
 いま、部落解放運動は大きな転換点を迎えています。時代の変化にもひじょうに危険な傾向があります。このことをしっかりとみながら、私たちはけっしてとどまることなく、実態をしっかりつかみ、厳しいが、この道を大会方針をもとに切り拓いていこう。
 そのためにも強固な組織を確立していかなければならない。あらためて水平社の歴史に学び、自力自闘の精神で組織建設をすすめていく必要があります。
 同時に、中央本部、都府県連、支部が一致協力し、次代の人材育成に全力をあげていこう、ということを申しあげ、大会の集約にかえさせていただきます。

 

原点に立ち返って
松本龍副委員長

 全体討論で「若い人たちに狭山を知らない人がいる」との発言がありました。私もそう思っています。もう一回、原点に立ち返る必要があると思います。
 一つは、警察権力による狭山差別事件だということの認識を。警察は何としても犯人をデッチあげなければならない状況のなかで、「部落ならやりかねない」という予断と偏見のなかで石川さんを逮捕した。われわれ部落民一人ひとりが石川さんだったかもしれない、という思いで、怒りを再構築していただきたい。
 そして、差別事件を追認し、事実調べも、証拠開示も、現地調査もしない司法が、狭山差別裁判をおこなつてきた。
 三つ目は、石川さんが獄中で、奪われた文字や教育をとり戻し、不屈の闘士となって今日までがんばつている姿に、学んでいかねばならない、と思います。
 松本治一郎は「特別措置法」を知らずに亡くなりました。「法」以前の50年間の運動が「法」を制定させたわけです。松岡書記長の発言にもありましたが、法律があるから「同和」行政や運動があるんじゃない。これまでの闘いをすすめてきた無名の人たちの想いを、これからの新しいステージのなかで、われわれが積み重ねていかなければならないんだな、バトンをうけてがんばっていかなければならないんだな、と思いましたので突然でてきて、補足にかえさせていただきます。

 

松本、松岡の必勝を
組坂繁之委員長

 まずは5月8日夕の、私の「中日友好使者」の称号授与を祝う会に、たくさんの方にお集まりいただき、あらためてお礼を申しあげます。
 選挙闘争について、何人かの方から発言をいただきました。松本龍副委員長の衆院議員5選を、なんとしてもかちとらなければなりません。
 74年9月の狭山連続闘争で、松本龍青年が汗みどろになり、集会後のゴミを集めていた姿を、思いおこします。松本龍の5選に向けて、絶大なるご協力をお願い申しあげます。
 参議院選挙でございますが、いよいよ来年7月です。
 組織、財政が地元でもしっかりしている所、それは大阪府連であり、府連委員長で中央書記長の松岡徹しかない、と思います。ただし、選挙は勝たねばなりません。むずかしい選択です。いろんな形がありますが、細かく申しあげません。必勝をめざし、がんばっていく。
 国会ではいま、松本龍代議士が孤軍奮闘です。この松本龍代議士とスクラムをくんでいくことが必要ですから、昨日の中執委で、「私に一任」ということになりました。われわれが力を合わせ、松岡徹書記長を参議院議員選挙におしだし、勝利に向かってがんばっていきたい、このことを訴え、補足とします。


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