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部落問題資料室
部落解放同盟ガイド

2005年度(第62期)一般運動方針

(3)今大会の意義と任務
 1 歴史的な「節目の年」を飛躍への契機にしよう
 ①第62回全国大会は、部落解放運動の大きな節目の年にひらきます。すなわち、今年は「第2次世界大戦」敗戦60年、「部落解放同盟」改称50年、「同対審答申」40年、「部落地名総鑑」差別事件発覚30年、「部落解放基本法」闘争開始20年という歴史的な年にあたっています。
 ②私たちの先達は「いたずらに時間の経過を積み重ねることが歴史と伝統ではない。歴史と伝統とは、その経過と経験をしっかりと総括し、未来に向けて何を継承し何を克服するのかということを明確に理論化し、思想化したものだけがその名に値する」と教えてくれています。
 ③部落解放運動が大きな節目の年にある今日、私たちはあらためて80有余年の運動の過去・現在・未来を見つめ直しながら、厳しい現状を切り開いていく的確な分析にもとづき、「よき日」に向けてのすすむべき道を明確にし、部落解放運動の飛躍への契機としていくことが重要です。 

 2 小泉反動政権と対決し、「人権立国」をめざす部落解放運動をおしすすめよう
 ①部落解放運動にとっての歴史的な「節目の年」は、日本社会全体にとっても大きな分水嶺にさしかかってきているといえます。部落解放運動は戦後60年間、憲法を軸に「戦争は最大の人権侵害である」との立場から、「平和と人権」を守り発展させるとりくみをおしすすめてきました。
 21世紀の時代環境のもとで、これからの日本の「国のあり方」、「社会のあり方」、「人のあり方」をめぐる論議が「平和と人権」を軸にして激しくなってきており、部落解放運動としても避けてとおれない責任ある論議と闘いが重要となってきています。
②その第1が、憲法と「教育基本法」をめぐる論議と改悪の動きにたいする闘いです。今年5月に国会憲法調査会が5年間の論議をへて「報告書」を提出するといわれていますが、この動きに合わせて、各政党の憲法論議と「教育基本法」論議が活発化しています。
  部落解放運動は、戦後60年の試練と検証を受けてきた憲法の基本精神である戦争放棄、基本的人権主義、主権在民は今後も揺るがすことのできない立場であると確信しています。部落解放・人権政策確立と軌を一にするこの立場を堅持しながら、現時点で憲法や「教育基本法」に「何を求めるのか」ということを具体的に議論し鮮明にしていく必要があると考えています。
 そのさい、改憲・加憲・創憲・護憲といったような政治的立場や戦術論に与することなく、差別撤廃・人権確立の立場を徹頭徹尾貫いた議論を展開することが重要です。したがって、憲法や「教育基本法」の一字一句を金科玉条のように扱うという姿勢ではなく、差別撤廃・人権確立にとって本当に守り発展させるべきものは何なのか、何を問題にするのかという真摯な議論の姿勢が必要です。
 明確なことは、憲法第1章の「天皇制」の権限強化や第2章9条の改悪による「戦争への道」、さらに第3章の基本的人権条項の平等権・社会権の改悪による「社会的弱者切り捨て」などにつながる好戦的な国権主義・新保守主義・新自由主義・反人権主義などの立場からの改悪策動は断固として許さない闘いを起こしていくということです。また、憲法問題に連動した「教育基本法」問題に関しても、「教育の機会均等」条項を充実化させるとともに、「天皇制」強化と一体化した「愛国心」の強要や「日の丸・君が代」の強制の動きについては断固反対します。さらに、生活保護制度や年金制度、介護保険制度などの増税路線と一体化した社会保障制度の改悪の動きにたいしても、憲法が保障する生存権および幸福追求権の立場から、充実した「社会的セーフティネット」を求める闘いが必要です。
 以上のような立場から、「憲法・教育基本法問題に関する基本見解」を今度末までの適切な時期にまとめる作業に着手します。
③第2は、憲法のなし崩し的な解釈にもとづく、イラクへの自衛隊派兵や派兵延長に反対する闘いです。「戦争のできる国」へと憲法9条を改悪する動向とあいまって、これを先取りし既成事実化してしまう思惑のもとに、なし崩し的にイラクへの自衛隊派兵を強行し、さらに1年間の派兵延長を国会論議もなしに決めたことは許すことのできない暴挙です。
 すでに明白になってきているように、アメリカ、イギリスによって開始されたイラク戦争は最初から「大義なき戦争」であり、これに加担する形での「戦闘状態化しているイラク」への自衛隊派兵は、いかに「人道復興支援」という口実を設けようとも違憲であるといわざるを得ず、断固として反対するものです。
 部落解放同盟は、憲法の平和的な国際協調主義を堅持し、民間レベルからの国際連帯活動を強めていきます。その意味でも、北朝鮮による「拉致問題」などには強く抗議するとともに、他方、これらの問題を口実にした在日韓国・朝鮮人にたいする暴力的・排外主義的な民族差別の扇動行為にたいしては断固として反対していきます。
 ④第3は、地方分権推進と「三位一体改革」のもとで、部落解放に責任ある同和行政・人権行政を確立していく闘いです。90年代から本格化してきた地方分権問題は、95年施行の「地方分権推進法」(5年の時限法)、00年施行の「地方分権一括法」によって具体化してきました。市町村合併や「三位一体改革」、指定管理者制度などは、こうした地方分権にかかわる改革の一環として打ち出されてきています。
 地方分権論議は、近代以降の富国強兵政策や戦後の高度経済成長政策をおしすすめてきた中央集権型行政システムがさまざまな意味で制度疲労を起こしていることにたいして、画一と集積の行政システムから住民や地域の視点に立った多様と分権の行政システムに変革し、新時代にふさわしい地方自治を確立することに主眼があり、道州制論や廃県置藩論などが議論されています。
地方分権の推進が、民主主義の原点である地方自治の実現を図っていくものであり、
住民みずらが自分たちの地域のことに責任をもって考え決定していく住民自治を拡充していくものである限り、私たちはこの方向を基本的に支持します。
 しかし、地方分権の方向性はまだ混迷しており、地方への支配権を保持しておきたい国権主義的な政府・官僚の思惑も厳然とあり、一方で地方自治の能力が疑問視される自治体が現存していることも事実です。もっとも問題なのは、「住民自治」の問題を抜きにして、国と地方での「金と権限のぶんどり合戦」の様相を呈していることです。
 このような事態のもとで、私たちが取るべき道は、地方分権の本来の意味での推進を部落解放・人権政策確立の好機と捉え、部落問題解決への責任を果たす同和行政・人権行政を強固なものにさせていく闘いに果敢に打って出ることです。地方分権とは、どのような「まちづくり」をしていくのかということにほかなりません。地方分権時代の新たな「まちづくり」の基本政策の柱に差別撤廃・人権確立を明確に位置づけること、そのために「人権条例」制定の充実と拡大を図ること、その具体化の基本方向として「人権のまちづくり」運動を発展させていくことが、今までにも増して重要な課題となってきていることを認識しておかなければなりません。
 ⑤第4は、差別を拡大・再生産する政治反動・経済不況・社会不安の克服を求める闘いです。部落解放運動は、80有余年の闘いの歴史の中で、差別が拡大・再生産されていく背景には、必ず政治反動や経済不況による社会不安が存在していることを明らかにしてきました。
 戦前の軍国主義・ファシズムのもとでの差別弾圧はいうまでもなく、戦後の差別撤廃への同和行政が進展している時期でも事態は同様です。70年代の前半には、高度経済成長の最初の陰りであったドルショックやオイルショックによる経済不況のもとで「部落地名総鑑」差別事件が発覚し、バブル景気がはじけた後の90年代の後半にアイビー・リック社による大量身元調査事件が惹起しました。これらは、偶然起こったことではなく戸籍制度などに象徴される日本社会の差別システムが背景になっています。
 とりわけ、今日の小泉政権下での人命軽視の「戦争のできる国」への政治反動化や長期化している経済不況は、さまざまな社会矛盾を深刻化させており、社会不安が増大するという憂慮すべき事態を招いています。貧富の格差の拡大化、6年連続で3万人をこえる自殺者、失業とホームレスの急増、450万人をこえる若者層の未就労・不安定就労、いじめや引きこもりによる13万人の小中学生の不登校、残虐犯罪の多発化と低年齢化、児童虐待や高齢者虐待の増大、セクハラやDV問題の頻発など、社会不安が顕現化しています。このような状況のもとで、東京都での大量・連続差別投書事件や京都府での司法書士による身元調査結婚差別事件、さらにはインターネット差別書き込み事件など、差別事件が頻発化してきています。まさに、社会矛盾の集中的なはけ口として悪質な差別事件が発生したのであり、部落差別の社会的存在意義や社会的機能が如実に示されているといえます。
 したがって、私たちは、一つひとつの差別事件をけっして見過ごすことなく、丁寧に事件の差別性とその原因・背景を明らかにする「糾弾要綱」を作成し、差別撤廃への社会変革と人間変革の闘いを持続させることが重要です。  
 ⑥第5は、マイノリティ団体や広範な共闘団体、人権NGO団体とともに「人権立国」を実現する闘いです。小泉反動政権下での政治的反動・経済的不況・社会不安が人権を否定し差別を助長するという社会状況のもとで、「人権屋の横行」とか「人権のインフレ」などの口実で「差別撤廃・人権確立が絶対的正義ではない」との論調にもとづく差別勢力が公然と台頭してきており、部落解放運動や他の人権NGO運動に露骨な攻撃をかけてきている事態を断じて看過することはできません。
私たちは長い部落解放運動の苦闘の歴史から、「部落差別が単独で解決することはあり得ず、あらゆる差別を許さない社会的土壌が形成された時に可能になる」という確信と教訓を獲得しています。すなわち、「部落解放の展望をこうした自主・強制の真に人権が確立された民主社会の中に見いだす」とした現在の綱領的立場であり、松岡参議院選挙で「虹の連合」として掲げた人権政策マニフェストを実現する「人権立国」をめざす闘いです。
 部落解放運動は、国内外のマイノリティ団体をはじめ反差別・人権確立を求める心ある広範な団体や個人との連携・協働をしっかり強化していきながら、いっさいの国権主義・新保守主義・新自由主義・反人権主義的な差別助長への動きを許さず、「人権立国」実現へのとりくみを具体的に強化していかなければなりません。

 3 今年度の「6つの重点課題」をやりきろう
①小泉反動政権と対決し、「人権立国」をめざすという部落解放運動にとっての05年度の重要なとりくみ課題として、以下の6点を提起します。
 第1の課題は、「人権侵害救済法」の早期制定をかちとり、「人権の法制度」の総合的確立を実現する闘いです。現在開会されている第162通常国会で、何としても「人権侵害救済法」の制定をかちとり、差別や人権侵害で苦しんでいる多くの人たちの人権回復の道筋を1日も早く確立していかなければなりません。それは、「人権擁護法案」が廃案になってから1年半におよぶ立法不作為の怠慢を許さず、政治の責任と役割を強力に求めながら実現しなければなりません。
 「人権侵害救済法」の制定は、私たちが20年の長きにわたって求め続けた「部落解放基本法」の規制・救済法的部分を実現する闘いです。この闘いは、さらに残されている宣言法的部分を取り込んだ包括法としての「差別禁止法」、組織法的部分としての「審議会設置」や「行政機構の整備」、さらには差別撤廃を生活圏域から具体的に推進していくための「人権のまちづくり推進支援法」(仮称)を実現していくなど、日本での「人権の法制度」の総合的確立へとつなげていく重要な闘いであり、早期決着をはかっていく必要があります。
 したがって、今年度の闘いとして、 (ア)第162通常国会で「人権侵害救済法」制定の実現をめざします (イ)「人権侵害救済法」制定への政治の責任と主導的役割を各政党へ強力に求めます (ウ)「人権の法制度」の総合的確立への一環という視点を明確にします。
②第2の課題は、「特別措置法」失効後3年をふまえ、部落解放に責任ある同和行政・人権行政の前進をかちとる闘いです。02年3月末をもって33年間続いてきた「特別措置法時代」が終わって3年目を迎え、激変緩和措置も基本的には最終段階になってきています。「法の有無にかかわらず、部落差別が存在する限り同和行政は継続し、一般施策を活用した人権行政として発展させる」と態度表明してきた行政の部落問題解決への責任を厳しく問い直す必要があります。
 とりわけ、「人権教育・啓発推進法」を武器にしながら、各自治体での「同和行政基本方針」「人権行政基本指針」の策定・具体化や差別撤廃・人権条例の制定・充実・具体化の取り組みは重要な意義をもってきており、このとりくみをさらにおしすすめ、部落差別撤廃に責任をもつ同和行政・人権行政を前進させていく行政闘争を強化しなければなりません。そのさい、「同和・人権行政の原点は相談活動である」という視点を重視することです。
 地方分権や市町村合併という時流のもとでは、各自治体での支部・地協による行政闘争の強化が、同和行政・人権行政を前進させることができるかどうかの決定的な原動力になります。差別実態の反映である部落住民の悩みや要求を大事にする総合相談活動を中心とした「実態と現状の把握」にもとづく行政闘争を強化するとともに、「三位一体改革」や指定管理者制度の導入などの複雑な行政動向をしっかりと分析し、機敏な対応をおこないながら同和行政・人権行政を後退させることなく発展させていくことが重要です。
 したがって、今年度の闘いとして、 (ア)全国各地での行政闘争を再度徹底的に強化します (イ)中央本部で「行政闘争実施基本要綱」を4月末までに作成します (ウ)「指定管理者制度に関する基本方針」の徹底をはかります (エ)「人権条例」自治体ネットワーク化のとりくみを本格化します (オ)中央・ブロックでの「行政闘争指導・支援体制」を確立します。
 ③第3の課題は、再審-無罪獲得に向けた課題を鮮明にし、狭山闘争勝利を実現する闘いです。狭山事件が発生し、石川一雄さんがでっち上げ逮捕されてから42年目になります。寺尾不当差別判決から31年目であり、今年1月29日で最高裁への特別抗告を申し立ててから3年が経過しました。
 度重なる不当な判決に、私たちは口惜しい思いを何度も抱きながらも、ねばり強く「本当に狭山闘争を勝利に導く鍵は何か」ということを追求し続けてきました。特別抗告審での最大の争点の一つは、証拠の脅迫状の封筒に書かれている「少時」の文字が万年筆で書かれているということであり、ボールペンで書いたとする石川さんの「自白」と完全に食い違っており、無実とえん罪を証明しているということです。これを「斎藤一連鑑定」をはじめ、それを補強する一連の鑑定書が裏付けています。
 東京高検は、自由権規約委員会の勧告や不十分ながらも改正された「刑事訴訟法」の趣旨にしたがって、全証拠を開示すべきです。最高裁は、30年間も事実調べがおこなわれていない不当な状況を排し、公正・公平な再審開始への決定をおこなうべきです。 
 最高裁第1小法廷が「いつ結論を出してもおかしくない」という緊張した時期にあって、私たちは狭山再審闘争の勝利に向けて、新100万人署名の成果をふまえて、国内外の広範な公正裁判を求める声を結集するとともに、えん罪・誤判をなくす公正な証拠開示のルール化を具体化させる「刑事訴訟法」改正・司法制度改革へのとりくみをさらに強化していくことが重要です。仮出獄後10年をこえながらも、なお「見えない手錠」に繋がれている石川一雄さんの完全無罪を一日も早くかちとらなければなりません。
 したがって、今年度の闘いとして、 (ア)公正裁判を求める「新100万人署名」の成果を引き継ぎ、公正裁判実現への闘いをさらに強化します (イ)証拠開示のルール化へ向け、国内外の世論形成を継続します (ウ)「狭山住民の会」の闘いをさらに強化します。
④第4の課題は、悪質・頻発化する差別事件にたいし糾弾闘争を強化する闘いです。
 差別事件は、時代状況の反映で強まったり弱まったりするものであることは歴史の事実が実証しています。まさに、政治の反動化、経済の長期不況、社会の不安増大という今日的な時代背景は、部落差別をはじめとしてさまざまな差別事件を増加させています。特徴的なことは、長年にわたる差別身元調査の禁止条例や教育・啓発などの差別を防止するとりくみが一定前進してきている状況のもとで、インターネットや差別落書・投書などといった「顔の見えない差別事件」が横行し、その内容も虐殺や抹殺を宣言するなどきわめて悪質な差別扇動をおこなわれています。
 悪質・頻発化してきているそれぞれの差別事件を重視し、徹底した差別糾弾闘争を丁寧に継続していくことが必要です。とくに、昨年4月に施行された法務省の改訂『人権侵犯事件調査処理規程』を差別者の駆け込み寺や糾弾闘争の押さえ込みなどに悪用させることなく、これを凌駕する力強く洗練された糾弾闘争を展開していくことです。まさに、差別糾弾闘争は、部落解放運動80有余年の歴史のなかで鍛え上げられた闘いであり、憲法12条の「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」とする憲法規定にもとづく正当な自救的行為であり、いかなる権力からも不当な干渉を受ける筋合いはないということをはっきりさせておかなければなりません。「人権侵害救済法」が制定されたとしても、この基本は不変です。
 したがって、今年度の闘いとして、 (ア)悪質・頻発化する差別事件の社会的背景を分析し、差別撤廃に向けた課題を鮮明にしていくための「糾弾要綱」を必ず作成し、「社会性・公開性・説得性」に貫かれた糾弾闘争を強化していきます (イ)差別事件・糾弾要綱の報告を集中し、全国的な共有化をはかれるように中央糾弾闘争本部体制の機能を強化します。
 ⑤第5の課題は、地域からの「人権のまちづくり」運動を根づかせ広げていく闘いです。差別撤廃・人権確立に向けて、行政闘争や糾弾闘争を強化するとともに、私たち自身がみずからの努力と責任で生活圏域からの具体的なとりくみをおこなっていく必要があります。それが地域からの「人権のまちづくり」運動です。
 隣保館や教育集会所を拠点として、地域福祉運動や地域教育運動、地域就労支援運動などを中核的なとりくみ課題としながら、今日では「ムラ自慢・支部自慢」という特色のある「人権のまちづくり」運動が各地でじょじょに根づいてきています。
全国の各地域で、とりくみやすい課題から手がけていって、「人権のまちづくり」運動をさらに拡大していき、他の「男女共同参画社会づくり」や「ユニバーサル社会づくり」、「内外人の平等と共生の社会づくり」など各種の「まちづくり」運動と重複・連動させていくことも重要となってきています。
 これらのとりくみが、「差別撤廃・人権条例」の制定や具体化を求める現実的な受け皿となるとともに、地方分権時代での住民自治のあり方や行政と住民のパートナーシップのあり方などでも先駆的な意義をもってくるであろうことは疑いの余地がありません。
 したがって、今年度の闘いとして、 (ア)「人権のまちづくり」運動の具体事例と現況の全国集約をすすめ、経験と成果を共有するために、全国実践交流会をひらきます (イ)「人権のまちづくり」運動の推進組織のあり方に関して、「部落解放運動とNPO活動の組織論について」(仮称)を整理します (ウ)「人権のまちづくり」運動と各種まちづくり運動とのネットワーク化のあり方を検討します。
⑥第6の課題は、とりくみ課題を明確にして継続的な反差別国際連帯運動を強化する闘いです。88年に「反差別国際運動」(IMADR)を結成して、本格的な国際連帯活動を開始してから、既に17年目を迎えています。各地域での独自の活動なども活発化し、多様化してきました。
 部落解放同盟として、この間の活動をふまえ、「国連の国際人権基準具体化のとりくみに連動し、アジア・太平洋地域を中心とした被差別当事者運動との連携行動を深める」という方向での連帯・交流・学習活動を展開していきます。
 とくに、昨年末で期限を終えた「人権教育10年」の継承として、今年を初年度としてとりくみが開始されている「人権教育のための世界プログラム」の国内具体化の活動を強化していきます。また、インドなどのカースト問題や日本の部落問題に直接関係する「職業と世系にもとづく差別」の明確な規定と差別撤廃への原則と指針づくりをすすめている国連人権小委員会の活動と連携した積極的なとりくみをおこなっていきます。この「職業と世系にもとづく差別」にたいするとりくみは、部落解放運動の長年に亘る国連への働きかけのもとで実現してきたものであり、部落解放運動の国際貢献の重要な成果であり、強力なとりくみを継続していきます。
 さらに、中央本部国際局を中心として、これまでの各地域での国際交流のとりくみを集約しながら、被差別当事者運動との具体的な共同プロジェクトを模索し、継続していく活動のあり方などを検討し、目的意識的な課題にもとづくとりくみをすすめます。 
 したがって、今年度の闘いとして、 (ア)「人権教育のための世界プログラム」の国内具体化のために、政府や地方自治体への働きかけとともに、各界へのとりくみ要請を強化します (イ)「職業と世系にもとづく差別」の明確化と差別撤廃への原則と指針づくりへ向け、国連や関係団体への働きかけを強化します (ウ)反差別国際連帯活動全国交流会を随時開催し、継続的なとりくみ課題の明確化と経験の共有化をはかります。

 4 組織・財政強化と人材育成への目的意識的なとりくみを強化しよう
①以上のような闘いやとりくみをすすめていくためには、それを担う強固な主体の形成が急務となっています。主体形成への「3つの任務」を提起します。
第1の任務は、組織強化へのとりくみです。新たな時代の組織強化の方針として、01年の第58回全国大会で「組織強化基本方針」を決定しました。そこでは、今後の組織強化への重要な方向が提起されました。すなわち「綱領・規約をふまえ“人間的自立と共生をめざす個人主体”の組織づくり」、「全地域での市町村・校区単位での“人権のまちづくり委員会”の組織づくり」、「人権を軸とした“分野別・課題別運動”を推進する組織づくり」、「国際人権基準を具体化・活用する人権擁護・促進のための組織づくり」、「同盟員の多様なニーズに対応するネットワーク型組織づくり」などの課題でした。また、この間、同盟員や部落住民さらには周辺の地域住民への「相談活動」を強化しながら、実践的な運動課題の提起と組織化へのとりくみの重要性も提起してきました。
 さらに、市町村合併にともなう新たな行政区での支部・地協組織のあり方についても居住を基礎ということを基本にしながら効果的な運営方法を検討していく必要があります。しかし、これらの取り組みは、その必要性が認識されてきてはいるものの、具体的実践の面では全国的にみてとりくみが決定的に遅れているといわざるを得ません。このことは、松岡参議院選挙闘争に如実にあらわれてきました。少子・高齢化や若年層の部落外流出などのもとでの部落実態の多様化への組織的対応が不十分であり、新たな課題での外への広がりが遅れているという組織実態が明らかになってきています。他方、全国的な松岡選挙のとりくみを通じて、離反していた「兄弟姉妹の絆」を回復しつつあることやマイノリティ諸団体との新たな協働行動への萌芽も作り出してきています。
 これらの事実をふまえ、ひきつづき「組織強化基本方針」の具体化をはかるとともに、今年度はつぎのとりくみをおこないます。 (ア)ブロック別に組織指導・支援体制の機能強化をはかります (イ)諸潮流の組織統一へ向けた目的意識的な活動を展開します (ウ)組織実態把握への「組織強化全国一斉行動」を秋に実施します。
②第2の任務は、財政強化のとりくみです。部落解放運動の基本は自主解放であり、自力・自闘です。「特措法」時代の補助金行政のもとで、団体補助金・事業委託金を勝ち取ってきましたが、「特別措置法」失効や補助金などの財政改革の時流のもとでは困難な状況になってきています。もちろん、行政と市民とのパートナーシップという原則からすれば、社会的に認知されるさまざまな市民活動にたいする補助金・事業委託という方法はきわめて正当であり、これからも基本的に是認されるべきものであることは言を待ちません。
 問題は、任意の民間団体である部落解放同盟の独自の自主活動については、自主財源でまかなうということが忘れられてはならないということです。すなわち、行政補助金の取得が困難になってきたから運動が財政的に苦しいというのは、本末転倒の論理です。しかし、現実には多くのところで補助金依存の財政運営がおこなわれてきたことも事実であり、ここから一刻も早く脱却して自主財源を確立していく真剣な営みが必要です。
 そのために、今年度はつぎのとりくみをおこないます。 (ア)「特別措置法」失効3年目の組織財政事情の全国実態を把握します (イ)基本財源(同盟費・機関紙誌・各種カンパ)の確立を徹底します (ウ)新たな財源確保への本格的な検討を運動原則をふまえておこないます。
③第3の任務は、人材育成へのとりくみです。少子・高齢化や若年層の部落外流出という事態は、部落解放運動の新たな担い手が減少しており、目的意識的な人材育成が急務であることを示しています。とりわけ、少数点在地域では、事態が深刻であり、支部解散をするところもでてきています。若年層の部落外流出が一概に懸念すべき事態であるとはいい切れませんが、部落外に居住する部落出身者組織化を図っていく政策を具体化すると同時に、「人権のまちづくり」運動などを中心に魅力ある新たな運動を創造しながら、若者が部落内に定住できるような住宅・就労政策を打ち出すことが、人材育成にとっては不可欠です。
人材育成の問題は、部落解放運動の浮沈を賭けた最重要なとりくみであるといっても過言ではありません。
 そのために、今年度はつぎのとりくみをおこないます。 (ア)少子・高齢化や過疎化問題、少数点在地域の実態をふまえた人材育成を検討します (イ)新たな運動展開による人材発掘と育成を追求します (ウ)人材育成のための中央解放学校などの研修体制を充実します。

 

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