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部落問題資料室
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スマトラ沖大地震・津波に
たいする支援活動の強化を
「解放新聞」(2005.2.21-2207)

 「津波被害を受けて間もないあわただしい状況のなかで、スリランカを離れ、日本に行くという決断は容易ではありませんでしたが、心から来てよかったと感じています。…草の根レベルで活動する人たちから話を聞き、震災後の被差別当事者の状況やコミュニティの復興について学べたことも大きな成果です」と反差別国際運動(IMADR)理事長のニマルカ・フェルナンドさんから感謝のメッセージが寄せられた。
 昨年12月26日に発生したスマトラ沖大地震・津波による犠牲者数は、1月31日現在で、被災国は13か国におよび死者・行方不明者数の総数は30万2000人をこえたと報道されている。
 また、被災者は500万人に達しており、犠牲者の国籍は50か国をこえた。まさに未曾有の被害状況である。また、記録的な被害にたいして国際的な緊急支援も広がっており、51か国の政府や国際機関から総額7千億円にもおよぶ支援金が拠出されていると報じられている。

 今回のスマトラ沖大地震・津波災害を、部落解放運動や人権運動をとりくむ立場から見てみたい。
 その第1の認識は、90年代以降の急激なグローバル化にともない、「国家の安全保障」の枠をこえる「人間の安全保障」という概念が国際政治に登場してきたという点である。環境破壊、テロ、疫病、経済危機、そして地震や津波など、国境をこえて個個の人間を襲う危機を、国際社会が総力をあげて予防や回復に協力する時代に入ってきているという現状を認識しておくことである。
 常に国際社会をリードしたがるアメリカも今回だけは、救援復興のまとめ役を国連に任せたように、国境をこえる大災害を大国が政治力で仕切るという時代ではないことを改めて明らかにしたのが、今回の大災害である。
 第2の認識は、スマトラ沖大地震・津波災害という惨事にたいして、防災や救援に協力して被害の拡大を抑えようという機運を国際社会全体によびおこしたという点である。世界保健機関(WHO)は1月24日、「被災地で懸念された感染症の流行がくい止められている」との見解を明らかにしている。流行の恐れが去ったわけではないが、当初「相当の死者が出る可能性がある」と警告した危機的状況は脱した、と報じられるなど、国境をこえた支援が被害を最小限に食い止めるための努力が功を奏していることがこの事実をみても明らかである。
 つまり、人類に共通の恐怖と教訓を与えた天災を、国際的なネットワークを構築することを通じて、″人災″による被害の拡大を最小限に食い止めるための努力が国境を越えて芽生え始めようとしていることの意義は大きい。

 しかし、一方では、インドが外国の一部援助を断ったように、国家の威信という「壁」が国際的なつながりを妨げようとしているのも事実だ。さらには、被災国政府の国内紛争の影響で、援助物資が実際には届いていない現状があったり、行政内部の対応の遅れや地方政府職員らの汚職が原因で、腐敗が復興の足かせになっている。
 スリランカでは、96万人にのぼる同国の被災者の約3割にしか政府の支援物資が届いていないことを政府自身が認めており、2月中旬までに7割程度の物資が被災者にいき届くよう努力する、と報じられている。また、スリランカ南部で独立記念日の2月5日には、津波の被災者約400人が援助物資の配給が遅れていることにたいする抗議デモをおこなっている。
 インドでも、社会的差別や抑圧を受けているダリットには十分な支援がいき届かず、さらに、政府は被災した漁民へ支給した補償金の半額しかダリットに支給しないという対応ぶりである。こうした差別を固定・助長する現状や、権力者や軍による災害復興という美名のもとにみずからの権限を拡大しようとする実態が浮き彫りとなってきている。
 「必要な人にいき渡る支援」を最大限追求するという視点で、中央本部は「救援対策本部」を設置し、募金などの協力をよびかけている。政府間だけの支援ではなく市民一人ひとりの協力が必要である。緊急支援の段階から、いよいよ中・長期にわたっての本格的な支援が求められている。

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