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特別抗告棄却決定に抗議し
狭山最新闘争を闘いぬこう
「解放新聞」(2005.4.18-2215)

 最高裁第1小法廷は、3月16日付で狭山事件の第2次再審請求の特別抗告申立を、棄却する決定をおこなった。弁護団は、3月24日に最高裁に新証拠と補充書を提出し、調査官と面会することになっており、その約束を反故にした抜き打ち的な棄却決定であった。
 庭山弁護士、鎌田慧さんら「狭山事件の再審を求める市民の会」は、3月25日に全国から寄せられた30万人を超える署名を最高裁に提出し、公正な審理、事実調べを求める要請行動を予定していたが、これも最高裁は無視した。
 このような最高裁の不意打ち的な棄却決定の強行は、弁護団の主張も新証拠も見る気はないし、全国の市民の声にも耳を傾けるつもりはないという、きわめて権力的な姿勢であり、断固抗議する。
 最高裁棄却決定の第1の問題点は、弁護団が多数の専門家の鑑定などの新証拠を提出し、事実調べを求めたにもかかわらず、事実調べを保障しなかったことだ。学者、文化人、ジャーナリストらがよぴかけた事実調べを求める署名は半年で75万筆にものぼった。
 名古屋高裁は4月5日付で、名張事件で弁護側から提出されていた新鑑定をもとに再審を開始する決定をおこなったが、名古屋高裁の小出裁判長は鑑定人尋問をおこなっている。
 鑑定人尋問や現場検証は、日野町事件や布川事件、足利事件などの再審請求でもおわれており、本来、裁判官は科学鑑定の専門家ではないのであるから、鑑定人の尋問によって専門家の意見を聞くのは当然であろう。ところが、狭山事件では、19年におよんだ第2次再審請求で、元警察鑑識課員の斎藤保・指紋鑑定士の5通の鑑定書をはじめ、多数の鑑定書が出されていたが、一度の事実調べもなされなかったのである。狭山事件では確定判決(2審・寺尾判決)以来30年以上も事実調べがおこなわれていないのである。あまりに不公平、不公正な裁判である。それを最高裁棄却決定は追認した。
 さらに、弁護団は、東京高等検察庁に2~3メートルもの検察官手持ち証拠があることを確認し、証拠開示を請求していた。さらに最高裁にたいしても証拠開示命令・勧告を申し立てていたが、まったく証拠開示がなされないまま棄却決定が出された。証拠開示を保障しないで弁護側の証拠をしりぞけた点でも不公平な決定である。

 また、最高裁棄却決定は、弁護側の新証拠を個別バラバラにして、不適法としてしりぞけ、いくつかの新証拠はまったく無視している。封筒の「少時」記載部分が万年筆で書かれたとする鑑定書を3人の元警察鑑識課員が出していたが、そのうち2つの鑑定書にはまったく触れていない。弁護団がくりかえし求めた新証拠とその他の証拠の総合評価も、自白の全面的な再検討もなされていない。
 名張事件の再審開始決定は、弁護側の新証拠を事実調べをおこなって正しく評価したうえで、従来の証拠と総合的に評価し、自白の見直しをおこなっている。これが、本来、「無実の人を誤判・えん罪から救済する」という再審制度の理念にそくした判断方法のはずだ。
 裁判員制度が導入され、市民が裁判官とともに刑事裁判をおこなう時代を迎えようとしている。市民常識を反映させ、刑事裁判の鉄則である「疑わしきは被告人の利益に」を正しく適用しようというために刑事司法の改革はおこなわれたはずであった。
 しかし、今回の最高裁の棄却決定を見ても、市民常識からする狭山事件の数かずの疑問にまったく答えていない。ことごとく可能性や裁判官の一方的な決めつけ、推測によって、弁護側の指摘する「合理的疑い」がしりぞけられているからだ。
 たとえば、脅迫状・封筒には、第1発見者である被害者の兄と届けられた警察官の指紋が検出されているが、直前まで持っていたとされた石川さんの指紋がない。
 栃木県警で29年も指紋検査をおこなってきた元ベテラン鑑識課員の斎藤保・指紋鑑定士が、紙からは指紋が検出しやすく、石川さんの指紋がないのは触れていないからだとする鑑定書を提出していたが、最高裁の棄却決定は、石川さんの自白は手袋などしていないとはっきりしているにもかかわらず、「自白に出てこないからといって、指紋がつかないようにしなかったとまではいえない」としている。
 これが「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に反していることは明らかだ。事実調べや証拠開示の保障など再審請求のルールがないまま、恣意的な判断が一方的におこなわれているといわざるをえない。
 名張事件の再審開始決定にたいしても、名古屋高検は異議申立をおこなった。あくまで権力のメンツを守ろうとしているだけではないか。死刑囚として再審を訴えつづける奥西さんは79歳である。真実発見が目的というなら再審開始を確定させ、ただちに再審公判をおこなうべきであろう。
 証拠開示もせず、自分たちの威信のみに汲汲としている検察の姿勢や最高裁のありかたも含めて、司法の実態に目を向け、さらに市民の手による司法改革の運動をすすめていかなければならない。

 最高裁の棄却決定にたいして、石川一雄さん本人、弁護団もただちに抗議の記者会見をひらき、えん罪を晴らすべく、第3次再審を闘う決意を表明した。庭山弁護士、鎌田さんら市民の会も全力で支援することを明らかにしている。
 石川さんの決意と弁護団のとりくみにこたえ、狭山事件が部落差別が生んだえん罪であるという原点と「一人は万人のために 万人は一人のために」の合言葉を忘れず、さらに、大きな世論をつくりあげ、第3次再審闘争をすすめていきたい。
 狭山弁護団は、今年の秋にも東京高裁に第3次再審請求を申し立てようと、新証拠などの準備を始めている。
 最高裁の問答無用の抜き打ち的な棄却決定の強行は、鎌田さんの本の広がり、あいついだ新聞記事、「ザ・スクープ」の放映、署名の広がりなど世論の高まりを恐れたものである。「可能性もないわけではない」などという棄却決定の苦し紛れのいい方こそ、弁護団の新証拠に追い込まれ、最高裁が逃げていることを示している。
 私たちは、弁護団の新証拠の積み重ね、マスコミ報道や新署名運動をとおした世論の広がりをバネにして、反撃の闘いを開始する必要がある。
 まず徹底して最高裁・特別抗告棄却決定を批判し、狭山事件の真相、石川さんの無実、司法の不当性を暴いていくことが大事である。最高裁にたいする抗議文や抗議ハガキの運動とともに、棄却決定批判学習や抗議集会を幅広くおこなおう。
 石川さんが不当逮捕され、えん罪におとしいれられて42年を迎える。5月24日には、狭山事件の再審を求める市民の会を中心にした実行委員会の主催で市民集会がひらかれる。不当決定にたいする抗議とあらたな闘いに向けた集会であり、全国の仲間の参加で成功させよう。最高裁を頂点とする司法を変えていく闘いも視野に入れ、原点にかえって狭山再審闘争を闘いぬこう。

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