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部落問題資料室
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主張

 

奨学金闘争の現状と課題を
明らかにし闘いをすすめよう
「解放新聞」(2005.6.27-2224)

 2002年3月の「地対財特法」失効をまえに、部落解放同盟は「経済的理由で進学を断念する」という部落差別の実態を生み出さない、という基本姿勢を明確にしながら、解放奨学金制度を継承・発展させた奨学金事業の実施を求めて闘いをすすめてきた。
 この闘いは、まず02年度、全国規格で実施される一般施策の高校奨学金としては学力要件(成績条項)を設けない初めての奨学金、いわゆる「補助」事業の創設という大きな成果を勝ちとった。
 この成果をより確かなものにしていくために、05年度から都道府県に移管される高校奨学金事業が、解放奨学金制度の成果や「補助」事業の意義と役割をふまえた「奨学主義」を柱とした制度として実施されることを求めて、全国の同盟員をはじめ、労働組合や教育関係者ら広範な団体・市民とともに闘いを展開してきた。

 そこで、今年度から実施される高校奨学金事業をみながら、これまでの闘いの成果と今後の課題を確認しておきたい。
 まず、東京、愛知、福岡など約3分の1の自治体で、学力要件や所得要件など各要件で従来の各奨学金制度の長所を活かした新制度への一本化を今年度から勝ちとることができた。つまり、「育英」主義から「奨学」主義を柱とする制度への変更という点では、最大の成果を得たが、残りの約3分の2の自治体は、結論を来年度以降に先送りしたという点で今後の課題が残されている。
 結論を先送りした泊治体について、今年度は旧「日本育英会制度」と「補助」事業を併存させて奨学金事業を実施していくが、地方分権や行財政改革など国の構造改革という大きな流れのなかで、補助金など高校奨学金事業の財源をめぐる状況も変わってきており、来年度以降も「補助」事業が継続されるという保障はない。高校奨学金制度の一本化に向けた早急なとりくみと、最後までの粘り強い闘いが求められる。

 闘いの成果として勝ちとった奨学金制度を、より充実した制度へと発展させていくとりくみを継続していくことも重要である。公的奨学金は「真に必要な者」にたいしては「給付制」であるべきという理念のもとに奨学金制度の改革・充実を求めてきた。また、今後も求めつづけていくものであるが、こうした私たちのとりくみに追い風となる動きも出てきている。
 昨年3月、最高裁は、子どもの高校就学費用に当てる目的で加入した学資保険の満期保険金で、収入認定をして生活保護費の減額をおこなった保護変更処分の取り消しを求めて争っていた、いわゆる「福岡学資保険訴訟」で、「近時においては、ほとんどの者が高等学校に進学する状況であり、高等学校に進学することが自立のために有用であるとも考えられる」とのべ、原告勝訴の判決を出した。
 この判決を受けて、生活保護制度の見直しの方向性について検討をすすめていた「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」は、昨年12月に取りまとめた報告書で、「高校進学率の一般的な高まり、『貧困の再生産』の防止の観点から見れば、子供を自立・就労させていくためには高校就学が有効な手段となっているものと考えられる。このため、生活保護を受給する有子世帯の自立を支援する観点から、高等学校への就学費用について、生活保護制度において対応することを検討すべきである」との提言をおこなった。厚生労働省は今年度から生活保護制度の見直しに着手し、「高等学校等修学費」が今春より新設されている。

 つまり、福祉の分野で、実質給付となる高校進学のための制度が創設されたのである。私たちにとって、この最高裁の判断や「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」での議論を、福祉の分野の議論にとどめておく必要性は何もない。
 本来、憲法や教育基本法が保障する教育を受ける権利や教育の機会均等をどのように保障していくべきなのかというきわめて教育に関する議論であり、奨学金制度はどうあるべきかという議論に発展させていかなければならない事柄なのである。
 長引く景気の低迷により子どもの教育費を負担できない家庭は依然として増加しており、学費の減免を受ける生徒や経済的理由で退学をする生徒が、昨年度も増加していたと伝える調査もある。
 各都府県連・支部で、奨学金制度のいっそうの充実を求めるとりくみを柱に、教育分野での地域の協働したとりくみをすすめ、子どもたちの進路をよりたしかに、より豊かに保障していくとりくみをすすめていこう。

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