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部落問題資料室
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統一応募用紙改定を契機に
就職差別撤廃のとりくみを
「解放新聞」(2005.10.10-2239)

 今年の4月1日から全国高等学校統一応募書類など、いわゆる「統一応募用紙」が改定された。おもな改善点は、「保護者氏名」欄が削除されたことと、「所属クラブ等」欄を「校内外の諸活動」欄に変更したことである。1996年にも改定されたが、そのときは「本籍(都道府県のみ)」欄と「家族構成」欄、「胸囲」「色覚」欄が削除された。これらは、私たちが全国同和教育研究協議会などとともに要求し、とりくんできた成果である。
 保護者欄では、母子家庭の生徒の排除につながったり、面接で家族関係や親の職業などを聞くきっかけになるとの理由で削除を要求してきた。
 また、「所属クラブ等」欄を「校内外の諸活動」欄に名称変更したことで、学校以外で頑張った活動なども書きやすくなった。
 今回の改定の趣旨をふまえ、改定を契機に統一応募用紙をさらに徹底させていこう。

 統一応募用紙のとりくみは、1973年から全国的に行政指導され、求職者の個人情報の収集を制限することで、就職差別を防ぐ大きな役割を果たしてきた。そして、1999年の職業安定法改定で新たに制定された「第5条の4」(求職者の個人情報の取り扱い)と「労働大臣指針」によって法的裏付けがなされ、制度としての前進をかちとってきた。
 しかし一方で、いまだに違反事象があとをたたない。最近では、新潟で多くの違反事象が判明し、とくに指導的立場にある自治体関係の職員採用でも違反事象が多いという深刻な状況も判明した。また各地の県同教などのとりくみのなかでも、多くの違反事象が摘発されている。
 これらの違反事象をなくすためには、全国で点検活動をおこない是正するなど、就職差別撤廃のとりくみを強化する必要がある。
 また、これらの違反事象が法令違反であるという認識が徹底していないことも、違反事象が絶えない一因と考えられる。その意味で、就職差別を許さないという厳しい姿勢とともに、「職業安定法」改定の趣旨も周知徹底していこう。

 大阪でおこった差別面接事件にみられるように、民間職業紹介業者が急速に増え、その紹介を通じての就職が増えるなかで、就職差別が見過ごされかねない状況がある。差別面接事件のさいには、民間職業紹介業者が、紹介した企業で差別面接がおこなわれたことを認識しながら放置し、違反質問を指摘した求職者にたいして、こだわらずに就職活動に専念するよう説得するということがおこっている。就職差別を糾すことがおろそかにされ、業績が優先されているのである。
 私たちはこの問題を重視し、急速に増えている人材派遣業者を含め、この業界での就職差別撤廃のとりくみを強く求め、厚生労働省交渉や業界団体との話し合いをおこなっている。
 さらに、ハローワークの仕事を民間にやらせようとする「市場化テスト」の動きもある。そのような状況のなかで、これまで労働行政のなかで不十分ながら積み上げられてきた就職差別撤廃のとりくみが後退する危険性がある。
 このような情勢をふまえつつ、民間職業紹介業者、人材派遣業者にたいしても、就職差別撤廃の立場に立つことを厳しく求めていく必要がある。

 東京都や大阪府などの労働局や自治体が、「就職差別撤廃月間」などを設定し、啓発を中心にとりくみを推進している。「公正採用選考人権啓発推進員」の設置は、遅れてきた東北などでもすすんできている。点検活動をかねて「推進員」設置企業にたいするアンケート調査をおこなっている県も多い。各都道府県労働局や自治体行政の活動は、就職差別撤廃の要となるものであり、とりくみ強化を再度要求していく必要がある。
 点検活動という意味では、「受験報告書」のとりくみの全国化も必要だ。まだ「受験報告書」のとりくみをおこなっていない県では、実施を強く求めていこう。
 同企連など企業の自主的なとりくみも積み重ねられている。また部落解放中央共闘会議もこのとりくみを重視し、過去2回にわたりアンケート調査をおこない、パンフやリーフレットを作成・配布しているが、今年6月にも啓発資料を作成・配布し、傘下の労働組合に自主的な点検活動をよぴかけている。最近では、宗教者も就職差別撤廃をテーマに学習会をひらいている。このように労働組合や共闘関係への働きかけ、同企連、県同教などとの連携も重要である。
 就職差別撤廃をめざす多くの人びととともに、統一応募用紙の改定を好機ととらえ、その趣旨の徹底と点検活動を含め、とりくみを強めていこう。


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