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部落問題資料室
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主張

 

狭山第3次再審へ草の根のとり
くみを各地で展開していこう
「解放新聞」(2005.12.5-2247)

 狭山事件の確定有罪判決(東京高裁の寺尾判決)は、殺害方法を手で首を圧迫するという「拒殺」と認定し、自白と矛盾しないとしていた。それにたいして、弁護団は殺害方法は軟らかい幅広いものによる「絞殺」とする複数の法医学者による鑑定を提出した。
 第1次再審の特別抗告棄却決定、第2次再審棄却決定は、ついに「タオルによる絞殺と拒殺の併用」と認定を変更し、それでも自白と矛盾しないとして再審を棄却した。しかし、自白では、タオルは目隠しのために使われたことになっているので、タオルで首を絞めたという認定ではタオルが2本あったことになり矛盾する。弁護側の反論にたいして、異議申立棄却決定や今回の特別抗告棄却決定は、検察官が提出した石山鑑定に依拠して、今度は着衣をつかんで圧迫したという説をもち出して棄却している。しかし、着衣をつかんで首を圧迫という認定は「絞殺」を意味し、自白にはまったく出てこないし、確定判決の認定から大きくずれている。ここまで、認定を変えたのなら、鑑定人尋問をおこない、再審を開始すべきであろう。
 裁判所の認定は弁護団の提出した新証拠によって明らかに動揺している。新旧証拠を総合評価して、確定判決の有罪の事実認定に合理的疑いが生じていれば、再審を開始するというのが本来の趣旨である。ところが、狭山事件では、東京高裁や最高裁は、つぎつぎと、あらたな有罪方向の認定をして再審請求を棄却しているのである。
 再審請求の審理で裁判所が、事実調べもせず、「写真を肉眼で観察しても(弁護側の主張は)認められない」などと「密室」で一方的な証拠調べをおこない、有罪の方向で総合評価をしたり、あらたな認定をしたりすることは、無実の人を誤判から救うという再審の理念からして許されない。
 名張事件や布川事件では再審が開始されたが検察側は不当に抗告した。袴田事件、大崎事件、狭山事件のように再審を棄却する決定もあいついでいる。全証拠開示の保障も再審事件共通の課題である。えん罪をなくし再審の門をひろげるための司法改革、事実認定や再審請求の公正・公平な手続きのルール化が必要とされているのである。狭山の闘いを司法改革へとつなげていくことがだいじだ。

 4年後の裁判員制度導入が新聞などでもとりあげられるようになってきているが、一方で、鹿児島県志布志町での公選法違反事件をはじめ、人権無視の取り調べや不当逮捕、誤認逮捕もあとをたっていないという現実を忘れてはならない。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則をどう市民に徹底するか、弁護側の権利をどう保障し、えん罪を防止するかという議論こそが必要だ。
 警察の取り調べの可視化や代用監獄の廃止も今後の重要な課題となってくる。現代版の治安維持法といわれる「共謀罪」も、年明けの通常国会でふたたび問題になる。「共謀罪」反対の世論を大きくしなければならない。
 このような時期であるから、こそ、狭山事件の真相とともに、、身近なえん罪の問題などを通して、司法制度で人権確立が問われていることを訴えることが必要である。
 10月29日におこなわれた狭山闘争勝利に向けた徹底討論会でも、狭山を闘う一人ひとりが、さまざまな市民連動に関心を寄せ、参加しながら狭山を広げていくことの必要が訴えられた。具体的に他のえん罪事件にかかわりながら、おたがいに支援・連帯の輪を広げている報告も出された。
 勝利をきりひらくためには、これまでの運動のどこが不十分であったかを総括し、変えていくとりくみが必要であり、えん罪の真相、背景にある部落差別というときにも、現実から出発して訴えていかなければならない。
 10月30日には、狭山市内の旧入間川小学校跡地で、狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会の主催によるはじめての現地での全国規格の市民集会がおこなわれた。作家の中山千夏さんらのアピールをはじめ、地元の狭山市長も出席し、「第3次再審にかけた願いが司法に届くように祈念する」とあいさつし、地元新聞をはじめとして大きく報じられた。
 入間川小学校は石川さんが通った小学校であり、その跡地に43年目にたって、鎌田慧さんと対談した石川さんは、部落差別によって教育を奪われた生い立ちと再審に向けた決意を語った。参加者全員が狭山現地で、もう一度、原点にかえって第3次再審を闘うことを確認した。来年の再審請求に向けて、この運動の輪をさらに広げていこう。

 狭山事件再審弁護団は、第3次再審請求の申し立てに向けて提出する新証拠の準備をすすめながら、確定判決となっている2審・寺尾判決の誤り、第2次再審請求審の特別抗告棄却決定への各裁判所の棄却決定の誤りを、証拠判断の面からも、再審の理念からも徹底して批判する作業を積み重ねている。現在までに、あらたに9人の弁護人が弁護団に加わり、中山武敏・主任弁護人とともに、中北龍太郎・弁護士が事務局長に就任し、第3次再審請求にのぞむ。
 狭山事件の公正な裁判を求め、再審開始と石川さんの無罪を実現するために、まず、私たちがしなければならないことは、こうした第3次再審にとりくむ弁護団の活動を物心両面でささえることである。
 同時に、狭山事件がえん罪であり、石川さんが無実であること、有罪判決と棄却決定の誤り・不当性を具体的に訴え、再審を求める世論をひろげることである。とくに学習・教宣を強化するためにも、活動をささえる財源作りのため王も、月刊誌『狭山差別裁判』を活用し、購読をぜひ拡大してほしい。
 狭山事件の再審を求める市民の会(代表・庭山英雄弁護士)では、漫画家の石坂啓さんによる石川一雄さんのイラストを狭山シンボルマークとして、チラシやポスターなどに活用していくことをよびかけている。
 また、狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会では、「SAYAMA」の文字をあしらった緑のリボンバッジを一人ひとりがつけて、狭山再審をアピールするという「狭山リボンキャンペーン」をよぴかけている。ぜひ、リボンバッジを一人ひとりがつけるとともに多くの人にひろげよう。
 創意工夫をこらして、第3次再審に向けて、草の根の世論づくりをすすめよう。


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