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部落問題資料室
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主張

 

今年の闘いを総括し
新たな飛躍へ活かそう
「解放新聞」(2005.12.26-2250)

 2005年は、「部落解放同盟」改称50年、「同対審答申」40年、「部落地名総鑑」発覚30年、「部落解放基本法」闘争20年という歴史的な節目の年であった。しかし、この1年間を振り返ってみると、日本社会が「不気味な予兆」をもって大きく変わろうとする激動の年であったといえる。
 そのことは、「人権侵害救済法」の制定の闘いで国権主義・民族排外主義を基調とする「人権」反対派の公然たる台頭と衆議院解散・総選挙で巨大与党の出現というかつてなかった現象として表面化してきた。
 戦後60年の日本社会の歩みは、紆余曲折はあったものの「平和と人権」が社会的正義の理念であるとの基本的合意のもとに、歴史を刻んできた。しかし、現在、その基本的合意が崩されようとしていることに、強い危機感を覚える。1980年代なかばの中曽根内閣の「戦後政治の総決算」路線が、20年間の周到な準備期間をもって、いま、小泉内閣の「聖域なき改革」路線のもとで、現実化しようとしているのである。
 今年の闘いを振り返ったとき、まさに、「平和と人権」の歴史的分水嶺が2005年という年であったという時代認識が必要であると思われる。

 部落解放連動の1年間の闘いのおもなとりくみを具体的に概括しながら、新たな年に向けての課題と方向を提示してみたい。
 第1に「人権侵害救済法」制定の闘いである。今年の第162通常国会での成立をめざしたが、従来とは様相を違えた自民党内の国権主義・民族排外主義的な反対派の台頭で政府・与党内に混乱が生じ、「法案」提出は頓挫した。9月の参議院本会議での「人権擁護法案をできるだけ早期に提出」するという首相答弁にもかかわらず、政府・与党内では来年の通常国会に提出できるのかどうかの目途が立っていないという無責任な現状である。
 何としても、「総合的な人権の法制度体系」確立への一環である「人権侵害救済に関する法律」を閣法として次期国会に提出させ、1日も早い成立をかちとらねばならない。
 また、鳥取の差別撤廃・人権確立を心から希求する多くの仲間たちのねぼり強い努力で10月に成立した「鳥取県人権侵害救済条例」の成果を引き継ぎ、全国化していくとりくみを強化することである。
 第2に、差別糾弾闘争の強化の闘いである。まず、狭山第3次再審闘争である。3月16日に最高裁は、事実調べをおこなうことなく特別抗告を棄却するという不当な決定をおこなった。この暴挙にたいして国内外に怒りの声が大きく広がり、5月には市民集会、10月には狭山現地集会という形で、第3次再審で「かならず石川無罪をかちとる」という新たな闘いが着実に広がってきている。
 同時に、「なぜ不当判決を許しているのか」という観点から、狭山弁護団も大幅に強化され、来年の第3次再審請求への準備を精力的にすすめているところである。
 つぎに、差別事件の悪質・頻繁化にたいする糾弾闘争の展開である。ここ数年来、政治反動、経済不況、社会不安のもとで、差別事件が悪質・頻繁化してきていることに重大な警戒心をもたなければならない。東京や福岡での大量差別投書事件、行政書士による戸籍謄本等大量不正入手事件、全国であいつぐ差別落書事件、結婚差別事件、インターネットでのおびただしい差別書き込み事件など、枚挙にいとまがない。差別事件が増大するときは、社会が危険な方向にすすんでいるときであるという歴史的教訓をふまえ、差別糾弾闘争を徹底的に強化していかなければならない。

 第3に、衆議院解散と総選挙闘争である。参議院での「郵政民営化法案」が否決されたことで、小泉首相は豪議院を解散し、総選挙に打って出るという暴挙をおこなった。9月11日の総選挙結果は、自民圧勝・民主惨敗となり、衆議院議席の3分の2をこえる巨大与党が出現した。組織内候補の松本龍副委員長は6選を果たしたものの、多くの推薦候補を落選させたことは、「平和と人権」にとって大きな痛手となった。
 選挙結果の評価をめぐって、小泉劇場とかメディア選挙とかのいわれ方があるが、戦後60年の長さにわたって築き上げてきた「平和と人権」が危機に直面しているというシビアな認識のもとに、中央政界の横暴を許さないという地域からの闘いをもう一度組み立て直していくことが緊急の課題である。
 小泉政権は、巨大与党という圧倒的な数を背景に、特別国会では「郵政民営化法案」を楽らくと可決させ、来年の通常国会では「共謀罪」や「国民投票法案」の成立を狙っているといわれ、憲法改悪や国民監視体制への布石を着ちゃくとすすめている。
 部落解放運動としても、この1年間をかけてプロジェクトチームで憲法問題などで検討をすすめ、「憲法問題に関する中間報告」をまとめてきたが、今後さらにこれを全組織で深めていく議論を継続し、徹頭徹尾、「平和と人権」の立場から、積極的に政治にたいする発信をしていくことが重要である。

 第4に、日常活動の問題である。率直にいって、日常活動は全国的にみて停滞状況であり、地域格差が出てきているといわざるを得ない。差別実態の正確な把握による行政闘争、要求闘争が決定的に不十分であることから、仕事・福祉・教育・住環境分野などを中心に部落問題解決の仕組みを一般的、普遍的な差別・人権課題解決の仕組みとして押し出しながら「人権のまちづくり」運動へとつなげるという具体的な課題を見つけ出し得ていないのが現状である。日常活動の停滞が、組織強化と財政確立のとりくみを停滞させているといっても過言ではない。
 このようななかで、四半世紀以上にわたる不幸な分裂の歴史に終止符を打って、12月11日に長野県連が「推進の会」と組織統一を成し遂げたことは、今後の部落解放運動の諸潮流の統一に向けて大きな一歩を踏み出したものとして評価できる。
 各地で今年の闘いをしっかりと総括し、「よき日」のために、徹底的に地域からのとりくみを再編、強化し、「平和と人権」への揺るぎない地盤固めをしていこう。


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