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部落問題資料室
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部落地名総鑑と不正取得
事件の徹底究明にとりくもう
「解放新聞」(2006.04.24-2266)

 行政書士などが職務上請求書を使い、戸籍謄本や住民票などを取得し、興信所へ横流ししているという戸籍等不正取得事件は、各都府県連の努力によって、いくつかの点が明らかになってきた。
 中央本部は、ひきつづき事件の真相究明をよぴかけている。いまだに結婚や就職といった人生の節目に身元調査などの悪質な部落差別事件が起こっていることを想起させる事件だが、確信的な部落差別調査があったことを明らかにするまでにはいたっていない。
 あらためて、行政書士など職務上請求できる権利をもつ8業種と興信所との関係、さらには、興信所による部落身元調査がおこなわれている実態を解明するための努力が必要である。

 戸籍謄本や住民票などの不正取得事件について調査をすすめていた大阪府連は、市内の興信所から3冊の「部落地名総鑑」を回収した。1冊は今までに回収されていた8番目のものと同じものであり、残り2種類は、9、10番目にあたる新たな「部落地名総鑑」である。行政書士などによって不正に取得された戸籍謄本などが、興信所によって「部落地名総鑑」と照合され、実際の調査に使われていたかどうかをさらに追及していくことが求められている。
 各都府県連が調査した行政書士による戸籍謄本などの不正取得全国調査は、2006年3月10日段階で、Y行政書士が249件、T行政書士が1104件、K行政書士が438件、合計で1791件となっており、行政データが管理・保管されている年数(約1~5年)から推測しても相当の枚数の戸籍謄本や住民票が不正取得され、興信所などに横流しされていた可能性が高まってきている。

 また、全国調査によって、東京、愛知で、あらたに行政書士による不正取得が発覚。一定資格をもつ8業種にたいする特別制度(職務上請求書の使用)によって、戸籍謄本や住民票の写しを請求、取得し、興信所などへ横流しされていたという事実は、職務上請求にたいする抜本的な改革・改善と法的な規制や救済制度の必要性を示している。
 さらには、愛知の興信所が委任状を偽装し、戸籍謄本を不正に取得していた事件が発覚した。自治体による戸籍謄本と付票などを偽の委任状を作成し、提出すること宣よって、不正に取得しており、従来の行政窓口の取扱いでは、興信所などによる不正取得が発覚しにくく、無防備ともいえる状態にあることを取らかにした。また、この興信所は、1990年頃から全国の自治体から同様の手口で数千件の戸籍謄本を不正取得したことを認めている。
 こうして明らかにされてきた戸籍など不正取得・「部落地名総鑑」差別事件にたいして組弾闘争をさらに強化・推進していくことが求められている。
 その第1点は、部落差別による身元調査が現実におこなわれているという事実を部落内に徹底して訴え、差別への「怒り」を結集させることである。1989年に法務省が終結宣言した「部落地名総鑑」が、いまなお所持され、戸籍や住民票と照合し、差別身元調査が現実の問題として起こっていることを徹底して訴えることである。
 第2点は、「興信所と行政書士による差別身元調査事件糾弾闘争本部」を各都府県連はもとより、すべての地協・支部段階で設置し、「緊急差別身元調査事件報告学習会」などにとりくみ、現在までに明らかになった事件の真相を広く訴えることである。
 第3点は、3行政書士による戸籍などの不正取得に関する「公文書開示請求」のとりくみを徹底し、全国的な差帥身元調査の件数、日付などをひきつづき明らかにすることである。
 第4点は、行政にたいして徹底した真相究明を求めることである。とくに首長の決意を明らかにさせ、行政内部に「行政書士等による戸籍不正取得・密売事件および「部落地名総鑑」究明対策本部(仮称)」の設置をせまることである。とりわけ、不正に戸籍や住民票が取得されたと推測される被害者にたいして、行政の説明責任をどのようにおこなうのか、行政による被害者への説明を含めた被害者救済策を確立させることである。
 さらには、行政書士などと興信所との癒着構造の究明と興信所による差別身元調査の実態解明、興信所による自主規制のための行政指導や、悪質な業者にたいする差別身元調査規制条例の必要性などを、訴えていくことである。
 職務上請求という制度を悪用し、戸籍などを取得、興信所へ密売。その興信所は、「部落地名総鑑」を所持していた。誰の目から見ても明らかに部落身元調査がおこなわれていたことが推測される。しかし、現時点で差別調査を明らかにすることはできていない。
 今後は、この核心にせまる糾弾闘争が求められている。「部落地名総鑑」差別事件は終結どころか、この時代でも悪用され、部落出身を暴こうとする身元調査は、あとをたっていない。真相究明にとりくもう。

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