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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

人権啓発活動を強化し
研究集会へ結集しよう
「解放新聞」(2007.01.29-2304)

 1965年の「内閣同和対策審議会答申」は、「同和行政は、過渡的な特殊行政でもなければ、行政外の行政でもない。部落差別が現存するかぎりこの行政は積極的に推進されなければならない」と明記し、1996年の「地域改善対策協議会意見具申」でも、この答申を再確認した上で、「教育、就労、産業等のなお残された課題については、その解決のため、工夫を一般対策に加えつつ対応するという基本姿勢に立つべきである」とした。さらに「特別対策の終了、すなわち一般対策への移行が同和問題の早期解決を目指すとりくみの放棄を意味するものではない」と明確にのべている。
 しかし、同和行政や人権教育・啓発のとりくみは、2002年3月の「特別法」失効とともに徐徐に後退してきている。そうしたなかで、これまでの成果が大きく損なわれようとしている。差別実態は、格差拡大社会の進行とともに悪化し、2005年の「大阪府民人権意識調査」結果でも明らかなように差別意識も一部強まっている。それらを反映するように差別事件も、第9、第10の新たな「部落地名総鑑」の回収や電子版の回収・流出に見られるように悪質化し、とくにネットに代表される電子空間では差別放置状態といった状況になっている。
 それだけではない。今日のような格差拡大社会は底辺層の不満が拡大する社会でもある。既存の差別意識が不満のはけ口として利用されることも歴史で頻繁に見られた。これらの歴史を教訓化しなければならない。

 また、私たちに大きな責任があるとはいえ、昨年ほど部落問題がメディアで取り上げられた年はない。それもそのほとんどがマイナスイメージを増幅する報道内容である。被差別部落への偏見や差別意識が不当に一般化され、視聴者や読者の偏見が増幅している。これらを早急に是正しなければ確実に部落差別意識は強まり、これまでの部落解放運動や人権教育・啓発の成果を大きく損なう。
 こうしたなかでもっとも重要な課題の一つが人権教育・啓発活動の地道なとりくみと強化である。しかし、各地の人権教育・啓発のとりくみは「人権教育・啓発推進法」が制定され、多くの地方自治体で「人権条例」が制定されているにもかかわらず、十分に進展していない。

 このような状況のなかで、第21回人権啓発研究集会が2月8、9日に和歌山県白浜町で開催される。集会内容もタイムリーなものが多く、人権教育・啓発のとりくみを強化する重要な機会としたい。
 そのためにも今一度「人権教育・啓発推進法」成立時の3項目からなる附帯決議の内容を思い起こしてほしい。内容は「1、人権教育及び人権啓発に関する基本計画の策定にあたっては、行政の中立性に配慮し、地方自治体や人権にかかわる民間団体等関係方面の意見を十分にふまえること。2、前項の基本計画は、「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画等を踏まえ、充実したものとすること。3、「人権の21世紀」実現に向けて、日本における人権政策確立のとりくみは、政治の根底・基本に置くべき課題であり、政府・内閣全体での課題として明確にすべきであること」となっている。これらの主旨を再確認し「同和バッシング」のなかで悪化する偏見や差別意識を克服し、差別撤廃・人権思想の強力な普及が重要である。

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 そのためにも①全省庁にたいして、それぞれの職員研修も含めた人権教育・啓発を推進するための計画策定②人権とのかかわりの探い特定職業従事者にたいする人権教育・啓発を強力に推進していくためのカリキュラムやテキストの策定を含む計画の策定③すべての自治体にたいし、人権教育・啓発を推進していくための体制の整備と計画の策定④幼稚園や保育所、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院などすべての教育機関で、学習指導要領やカリキュラムへの位置づけを含めた人権教育・啓発の推進⑤民間の企業、農協や漁協、PTAや各種団体などで、人権教育・啓発を推進していくための体制の整備と計画の策定⑥隣保館や公民館などを拡充し、地域に密着した人権教育・啓発センターを整備するとともに、各方面で人権教育・啓発を推進していくためのリーダーの養成⑦人権教育・啓発の推進に関わるNGOやNPOにたいする積極的な支援などを求めていくことで、今日の逆風を跳ね返していくことを訴えたい。

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