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部落問題資料室
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主張

 

一つひとつきめ細かにとりくみ
差別糾弾闘争を強化していこう
「解放新聞」(2007.03.05-2309)

 格差拡大社会は差別拡大社会でもある。今日の格差社会が差別事件にも大きな影を落としている。格差社会のなかでこれまでの部落解放運動と同和行政の成果が損なわれつつあり、格差社会の諸矛盾が被差別部落に顕著にあらわれている。また部落差別意識も一面で悪化している。そうした現実が差別事件にも大きな影響を与えている。新たな「部落地名総鑑」や「電子版・地名総鑑」の回収をはじめとして、ネットに代表される電子空間での差別事件、頻発する土地差別事件、戸籍不正取得事件、メディアに関係する事件などがそれである。これらの差別事件にたいして強力なとりくみが求められている。
 中央本部は、2005年1月23日に放送されたサンデープロジェクト差別放送事件にたいし粘り強いとりくみをおこない、テレビ朝日や朝日放送の会長・社長を代表とするメンバーと数度に渡る実勢な話し合いを重ね、本年2月16日に出演者である田原総一朗さんや高野孟さんらも交えて最終的な話し合いをおこなってきた。そうしたとりくみのなかで部落差別撤廃に向けてそれぞれの立場で努力していくことが確認された。

 差別糾弾闘争とは、差別にたいする抵抗であり、抗議であり、同時に差別をした人と部落出身者やその組織が真摯な話し合いを通して、差別事件の差別性や問題点や背景と課題までを明らかにしようとする教育の場であり、共生の道を作り出そうとする場でもある。
 差別をされたものが、差別をした相手に抗議し、反省と謝罪を求めるのも当然の行為である。それらの行為とその背景を掘り下げ、それらを是正する活動の総体を私たちは差別糾弾闘争と位置付けている。
 そのような意味で確認会・糾弾会だけが糾弾闘争ではない。電子空間内で発生している差別事件に代表されるように部落差別事件の形態が、これまでのとりくみ形態だけでは対応しきれていないのである。

 たとえば昨年9月に回収された「電子版・部落地名総鑑」や一部のネット流出問題へのとりくみは、そのことを顕著に示している。その問題点を列挙するだけでも、これまでのとりくみ方では対応できないことが分かる。
 問題点は、①「電子版・部落地名総鑑」の流出が多発する危険性が高まることであり②差別事件や差別身元調査を誘発・助長することになること③差別攻撃のターゲットである被差別部落の所在地を示すことによって④差別意識を活性化させ差別煽動性を持つ差別事件が増加することにつながる。さらに⑤電子空間上の差別事件を助長し⑥差別行為者を特定するのがひじょうにむずかしくなるとともに⑦ネット上から地名ファイルをダウンロードした人物を特定するのも容易ではなく⑧事件を予防するのも困難になるということである。
 それだけではない。ネット上の特徴とも重なって、複製や再利用がこれまで以上に容易になり、多くの人によって書き込みがおこなわれるなど情報の連鎖性・更新性などをもち、差別の連鎖が続くことになる。

 このような差別事件に対応するためには多様で柔軟な形態が求められる。
 多様で柔軟な差別糾弾闘争の形態とは、具体的差別事件の内容、悪質度、行為者の状況、被差別者の感情、社会に与えた影響、事件後の諸事情などをふまえ、当該の部落差別事件の差別性や背景・課題を明確にしつつ、以上のべた諸事情を勘案し、確認会や糾弾会を設定しない、あるいはできない形態であっても、国際条約や国内法、広報宣伝活動、電子空間活用など、これまでの成果を活用し、あらゆる戦術を駆使することである。それらの形態も差別糾弾闘争であることはいうまでもない。
 当該の部落差別事件の背景や課題を社会的課題に高め、それらを克服していくための立法措置をはじめとする制度や社会的システムを確立していくことも差別糾弾闘争である。
 今日、これら多様な形態をもつ差別糾弾闘争が弱体化している。一つひとつの差別事件にたいしてきめ細かくとりくむ必要がある。あらためて差別糾弾闘争が部落解放運動の原点であることを忘れてはならない。部落解放運動にたいするバッシングを跳ね返すためにもていねいな差別事件にたいするとりくみが必要である。
 そのためにも「差別糾弾闘争強化方針」で示された人権性・合法性・組織性・公式性・公開性・透明性・明確性・本質性・当事者性・正当性・迅速性・最新性・教育性・指導性が差別糾弾闘争の全過程を通じて透徹されなければならない。
 こうした原則をふまえつつ、萎縮することなく差別糾弾闘争を強化していこう。

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