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部落問題資料室
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人権教育・啓発強化へ各地で
人権週間のとりくみを展開しよう
「解放新聞」(2007.11.26-2346)

 1948年12月10日、国際連合第3回総会で「世界人権宣言」が採択された。その日を最終日とする1週間が日本では「人権週間(12月4~10日)」として、さまざまな人権行事がとりくまれる。それらのとりくみを年中行事に終わらせず、人権確立に向けた具体的で効果的なものにする必要がある。とりわけ人権教育・啓発の強化はもっとも重要な課題であり、人権侵害を予防・発見・解決・救済できる人権教育・啓発が求められている。現実に生起している人権侵害や、そこから提起される人権課題の解決から遊離した人権教育では、人権実現の力にならないとともに、多くの人びとから支持されない。

 「差別をしてはいけない」といった視点だけの人権教育では、人権侵害の加害者としての自身を克服することだけが重視され、自身の自己実現と結びつかない人権教育と認識されてしまう。しかし、これが多くの人びとの人権教育イメージである。自身に役立つ人権教育、自己実現に結びつく人権教育、人権侵害を救済できる人権教育であれば、より多くの人びとが興味深く意欲的に学ぶ。
  「差別をしない」人権教育から「差別をさせない許さない」人権教育、「人権侵害を予防・発見・救済・支援・解決できる」人権教育が求められている。それらのヒントは現実社会に存在する。学校教育現場や地域社会、職場、家庭などのなかにあふれている。その一つが現実に生起している人権侵害や人権相談の内容である。

 また、あらゆる人権侵害を予防し、発見し、支援・救済・解決するのは、一定の知識と実践経験をもつ人権教育を受けた人びとであり、それらの人権侵害を分析するのも、人権教育を受けた専門家である。多様な人権教育を展開するのも同様である。
  多様な立場の人びとにたいする人権教育の課題は無数にあり、直接的であろうが間接的であろうが、現場で役立つ実践的な人権教育の課題は山積している。しかし、多くの分野で現場から遊離しているのではないかと思われる人権教育がある。しかもそれが惰性的におこなわれていることが少なくない。今一度、人権週間を前に人権教育を何のためにやっているのかということを再認識し、具体的で実践的な人権教育を展開する必要がある。

 さらに、今日の差別事件の背景に深くかかわっているのが根強い偏見や差別意識である。それらを克服するためにも強力な人権教育・啓発の推進が求められている。
  ネット上の差別事件が多発しているという現状と重なって、煽動的・挑発的な内容や憎悪に満ちた差別事件が増加している。最近の「同和バッシング」関連の出版物も既存の偏見を活用する形で措くことによって、偏見にもとづく差別意識を根強くもった人びとの支持を受けており、差別事件を助長している。
  差別意識がもっとも活性化するのは、優越意識と被害者意識が重なったときである。先に提示した「関連本」はこれらの状況を助長している。
  一般的に差別意識が伝播する場合、うわさ、デマ、流言などが重要な役割を果たしているが、とりわけ社会的な偏見や差別意識に迎合する形で強調・歪曲された情報は、正確でない情報でも容易に真実だと受け止められる。

 被差別部落にたいする偏見や差別意識があるもとでは差別的な情報の方が伝播しやすく、偏見に合致した部分的な情報だけが流されることによって、差別が助長されている。差別が強化されるときのパターンの一つに被差別者の「悪人」をヤリ玉にあげ、反論しにくい雰囲気を作り上げたうえで、攻撃するという手法がある。最近、これらの手法が多用されている。
  こうした状況を抜本的に改善するためにも、2000年に施行された「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」や各地方自治体の「人権条例」を積極的に活用し、人権週間を機に、人権教育・啓発の具体的計画を作成するとともに、強力に実践していく必要がある。また、多くの地方自治体で、これまでに作成された人権教育・啓発計画を「絵に画いた餅」にせず、行動の指針にするよう、人的・財政的措置を強く求めることも重要である。
  それらのとりくみが真に人権週間を意義あるものにすることを強調しておきたい。

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