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部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

人権週間を機に差別の現実を見つめ
人権確立へ向けた行動をしよう
「解放新聞」(2008.11.03-2393)

 「世界人権宣言」が国連で採択されて、今年で60年をむかえる。
  いうまでもなく、世界人権宣言は第2次世界大戦の痛苦な反省のうえに立ち、人権こそが「世界の自由、正義、そして平和の基礎」であることを認識し、採択されたものである。そして、人権とは何かを「すべての人びととすべての国が達成すべき共通の基準とし」た。人権は、だれにも、いつでも、どこでも保障され、尊重されることがのべられ、「すべての者は、この宣言に規定する権利と自由が完全に実現される社会的および国際的な秩序についての権利を有する」と謳いあげている。
  宣言から60年間、この精神の発展と具体化のために、実に多くの人権諸条約(国際人権法)が提唱、締結されている。しかし、残念ながら国内法の未整備などを口実に、日本政府が批准するものは、その半数にとどまるのが現状だ。だが、国際人権諸条約に示されたものこそ、現在の人権基準なのだ。

 しかし、問題は、世界人権宣言や国際人権諸条約が存在しながら、現実の世界には差別が、人権無視・軽視が満ちあふれていることだ。人、モノの大規模移動、瞬時にして大量の情報が伝達され、経済活動の脱国境化というグローバル化がすすむなかで、経済的繁栄を享受するごく一部の人びとと、大多数の貧因や飢餓、医療や教育など不十分に受けることができない人びとに二極分解しているのが世界、日本の現状なのだ。
  人権が「人間として生きる権利」であればこそ、なぜ、こういう事態が起こるのかを探り、その原因をとりのぞく努力をすることは当然のこととなる。
  たとえば、金融資本主義の危機が喧伝され、国際的な救済措置への協力体制の必要性がマスメディアを通じてあたかも当然であるかのように報じられている。だが、考えてもみよう。非正規労働者の増大、ワーキングプアとよばれる層の増大、低賃金・長時間労働者の増大などという現実は、錬金術や賭博経済をもとにした金融資本主義と表裏一体、メダルの裏表の関係なのだ。こうした非人間的な労働のもとでバブルが形成されたのだ。
  こうした現実をどう変え、人権をどう確立するか、という観点から、世界人権宣言60周年を機に考え、実践していこう。

 そのときに重要なのは、現実から出発し、人権の確立をめざすという方向性だ。とくに、経済的な問題以外にも、日本にたいしては国連などから、えん罪、犯罪被疑者・服役者のとりあつかい、死刑、教育、貧困、さまざまな差別(差別禁止法や救済法の必要性を含めて)、社会保障(社会的セイフティーネット)の問題などが、人権上のゆゆしき課題として指摘されている。
  人権週間を一つの機会として、こうした問題を教育・啓発という視点から講演会、集会、学習会などのかたちでとりあげ、さまざまなイベントも盛りあげ、多くの人びとに訴え、ともに行動に参加するようよぴかけよう。
  私たちの、部落を拠点にした地道なとりくみが、少しずつであっても、確実に日本を世界を変えていく、という自信と確信をもって歩み続けよう。

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