pagetop
部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

子どもの権利保障の実現へ
第60回全同数大会で活発な議論を
「解放新聞」(2008.11.10-2394)

 人権文化を切りひらく同和教育の営みをより多くの人のものとし、その内容のいっそうの進化と発展をめざし、11月29、30日の2日間、第60回全国人権・同和教育研究大会が、水平社発祥の地、奈良県で、奈良市中央体育館を主会場にひらかれる。
  今年は、「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」と謳った世界人権宣言が国連で採択されて60年目の年にあたる。そして、この宣言が求める人権と自由の尊重を確保するために、多くの人権諸条約が採択、発効されてきた。なかでも、来年は「子どもの権利条約」が国連で発効されて20年にあたる。
  こうした大きな節目の時期にひらかれる第60回大会を機に、人権・同和教育を軸とした解放教育運動の役割と成果をあらためて確認するとともに、いっそうの広がりと発展をめざして確かな歩みを続けていこう。

 今日、経済活動のグローパル化の影響を受けて、「非正規雇用」の増大にみられるように雇用形態など急速な社会の変化と、それにともなう経済的な格差を招き、その状況は単なる格差問題をこえて、従来の社会保障制度の枠組みでは解決しえない、生存権にかかわる貧困問題と認識すべき深刻な事態にいたっている。
  耳塚寛明(お茶の水女子大学大学院)さんは、高度経済成長期以降、じょじょに拡大してきた所得の格差が、こうした社会状況のもとで、経済的な困難を抱える家庭を直撃し、子どもたちの未来を奪っていると指摘する。
  個人のメリット(能力と努力)によって、社会的地位が獲得される社会のことをメリトクラシーと紹介し、学校が、人びとが生まれによる身分や階級に関係なく、学校数青での学力・学歴獲得競争を通じて、社会的上昇移動が可能な社会を実現してきたこと。ところが、耳塚さんらの最近の調査研究によると、このメリトクラシーに代わって、親(ペアレント)の富(所得)や願望(学力期待)が、子どもの学力と進路選択を規定するペアレントクラシーの到来、つまり、貧困や格差など親世代の不平等が、子どもの学力格差と機会の不平等に転化していることが明らかになっている。そのうえで、今日の学力格差という現象を、教育の問題に矯小化することなく、所得や雇用など格差社会に起因する社会問題として捉え、親世代の結果の不平等に介入する政策も不可欠であると指摘する。

 こうした耳塚さんの指摘は、解放教育運動にかかわってきた者ならば、違和感なく受け止め、理解することができるのではないだろうか。
  かつて、部落差別の結果、教育の機会を奪われ、不安定就労を強いられてきた親世代。そして、その子ども世代の長欠・不就学の実態を、部落差別の現実として捉えて、教育のありようを見直し、教育条件整備とともに、家庭と学校と地域が連携して、目の前の子どもたちをとりまくさまざまな問題の解決を図ってきた。
  こうした解放教育運動のとりくみは、一昨年からの全国学力・学習状況調査でも、就学援助を受けている経済的に厳しい家庭環境にある家庭の子どもが多く在籍するにもかかわらず、学力の向上が図られている「効果のある学校」として、明らかになっている。
  つまり、これまで解放教育運動のなかで培ってきた手法と積み上げてきた成果が、全国各地の家庭や地域、そして学校が今日抱えるさまざまな教育上の課題の解決に役立つことは明らかなのである。
  第60回全同数大会には、全国各地で積みあげられた豊かな実践を多数もち寄り、成果と課題について活発な議論が展開されることを期待する。
  そして、人権・同和教育、そして解放教育運動をさらに推しすすめ、全国各地の教育課題の解決と子どもの権利保障に向けて、そのとりくみの輪を広げていこう。

「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)