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部落問題資料室
NEWS & 主張
「人権教育が形式化」と
草加市長が交渉で見解

「解放新聞」(2009.04.20-2415)

鹿児島県龍郷町差別講演事件で
  【埼玉支局】県連は、2月9日、草加市文化会館で鹿児島県龍郷町差別講演事件(別項参照)で草加市と交渉をおこなった。交渉では、木下博信・市長や宮嶋昭雄・教育長が差別事件にたいする見解を示したが、K元校長が差別講演のもとになった実践書の改訂版を事前の協議もなく出版したことが判明し、交渉が紛糾した。その後の2月28日にK元校長が県連事務所を訪問し、「実践書を絶版にした」ことを報告した。

市長、教育部長、K元校長が謝罪
  交渉には、県連の片岡明幸・委員長をはじめ県人権教育研究協議会などから52人が参加した。
  見解を求められた木下草加市長は「申し訳ない。悔しい思いでいっぱい」とのべたうえで、「人権教育が形式化しているのではないか。建前でやっていればいいと思っているのではないか。深い人間の心にかかわる問題として学ばなければならない」とのべた。宮嶋教育長は「K元校長だけの責任ではなく、私たち自身も責任を負わなければならない」とのべ、「市内33校で研究会を組織し小中学校の人権同和教育のガイドラインを作成する」と今後のとりくみをのべた。
  K元校長は「多大な迷惑をかけ、申し訳ない」とのべ、「講演会の時点では、同和問題の認識が浅かった。自分の心の底の差別意識、潜在意識があらわれた発言で、結果として偏見を植えつけることになった」と反省し、あらためて同和問題を学び直し、「人間の見方を学び、自分自身を変革したと思う」と語った。また、講演のもとになった実践書の図書のあつかいで、K元校長が「出版社と相談して問題のか所を修正し、改訂版を出版した」と報告。しかし、12月の糾弾学習会での「話し合いが終わってから出版する。事前に解放同盟と協議のうえで出版する」という約束が反故にされたことや、その改訂版の内容にもまだ認識や事実に大きな誤りがあり、参加者から怒りが起こり、厳しい追及となった。K元校長は「指摘された点をふまえて改訂した」と弁明したが、参加者は納得せず、交渉は紛糾した。休憩後、K元校長が「図書の販売を停止し、回収をおこなうために全力をあげる」と約束。また草加市も3月中に差別事件にたいする見解を提出することを約束した。
  県連は、この差別講演事件について、1月29日の北足立地区を皮切りにはじめた県内各地区での教育委員会交渉でも見解を求め交渉を重ねた。1月30日の県人権教育課との交渉では、武正和己・県人権教育課長が「元校長という指導する立場にあったものの発言として重く、厳粛に受け止めている」とのべ「小学校では「えた・ひにん」は教えない」し、講演のような授業をした場合、「偏見を植えつける授業になる」との見解を示していた。

事件の概要
鹿児島県龍郷町差別講演事件とは、「えた・ひにんを選ぶ人は、いないですよね」と08年8月、鹿児島県龍郷町(奄美大島北部)の教育委員会がひらいた教育講演会で、講師として招かれた埼玉県草加市のK元小学校校長が差別講演をおこなった事件。12月24日には、鹿児島県連が糾弾学習会を同町でひらき、K元校長は「同和問題にたいする認識の浅さと、心の奥底に潜んでいた差別意識から出たもの」と謝罪した。(本紙2392号、2407号に掲載)

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