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部落問題資料室
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主張

 

解放保育運動の実践の積み重ねを
人権保育運動として進化・発展を
「解放新聞」(2009.11.16-2444)

 本年は「子どもの権利条約」が国連総会で採択されて20周年、日本が加入して15周年にあたる。18歳以下のすべての「子どもの最善の利益」を保障しようとするこの条約の精神は、私たちが求めるものと一致し、いわば人権確立の歴史の到達点を現す。この節目の年に、全国解放保育研究集会は、名称を全国人権保育研究集会とあらため、新たなスタートを切る。歴史的な政権交代が実現した年でもある。好機ととらえ、この間強行されている「保育の市場化」に歯止めをかけ、「皆保育」の理念を全国に確立する節目の年となるよう、ともにとりくみをすすめることが求められる。
  この間、白公政権が推しすすめた政策で、社会的格差と貧困が拡大している。部落でも、「特別措置法」終了などで変化がおきている。旧同和保育所でも、今日、部落の子どもが少数になっているところが多く、経験したことのない現実があらわれている。そうした現実を認識し、これまでの実践の積み重ねを人権保育運動として進化・発展させることが、本集会に課せられた任務だ。解放保育運動を人権保育運動へと進化・発展させるための課題と方向を、参加者全員で深められるよう、集会の構成も例年から大きく変更している。

 解放保育運動は、被差別部落の子どもや親の実態から出発した。差別を見抜き、差別を許さない子どもに育ってほしいという願いから、具体的には、子どもの生きる権利として、その成長を保障するとりくみをすすめてきた。そのとりくみは、1人ひとりの子どもたちと、親の生活・地域の課題へとつながり、地域ぐるみの子育てとして、たしかに位置づけてきた。
  しかし一方、今日の子どもをとりまく環境をみたとき、子どもの生きる権利を奪うような事件や、虐待の問題など、深刻な社会状況のなか、1人ひとりを認め、支え合い、ともに豊かに生きるという価値観は失われつつある。そして差別意識を温存、助長する社会の体質はいまだ変わっていない。そのような社会のなか、部落の子どもが在籍する保育所だけで反差別の保育をすすめ、差別に怒りをもち、生きる力を積みあげたとしても、差別問題はいつになっても解決しない。
  差別の問題は差別を受ける側のとりくみとともに、差別をする側におかれている人びとへのとりくみも重要であり、すべての地域で解放保育が必要だ。また、部落差別だけではなく、身近にあるさまざまな差別に気づき、差別を見抜き、うちかつ力を育てるとともに、すべての子どもに差別を許さない人権を尊重する価値観を育てることが大切だ。
  しかも、子どもの保育や教育にお金をかけてこなかった日本は、いま大きな反省をふまえ、新たな段階を迎えようとしている。
  このような状況のなか、解放保育が大切にしてきた「人権を大切にする心を育てる保育(教育)」は、その果たすべき役割がますます大きくなっている。本集会は、子どもたちの姿を中心にすえながら、保育所・幼稚園・保護者・地域が、ともに子どもの人権確立へのとりくみをすすめるための方向性をたしかめあえる場としたい。

 全国解放保育研究集会は、第32回目の今年から全国人権保育研究集会に名称を変更する。少子化が社会問題となる一方、経済格差が子どもの育ちに影を落とす情勢のもと、これまで積み重ねてきた解放保育運動の実践を、変化する社会のなかで、すべての子どもの育ちを豊かに支える子育て運動として進化、発展させるための改称だ。また、一方で、ほかのさまざまな人権課題にとりくむ保育実践と出会い、交流することで、より豊かに発展するものと期待している。
  誰もが安心して子どもを産み育てられる「人権のまちづくり」の中心的課題として、これまでのたしかな解放保育運動の実践のうえに、人権保育の創造をめざそう。子どもの育ちと子育てを応援するみなさんの積極的な参加を願う。

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