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部落問題資料室
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主張

 

「人権侵害救済法」制定へ向け、
今国会閉会まで全力を尽くそう

「解放新聞」(2010.06.07-2472)

 第174通常国会は、当初予定のとおり6月16日に閉会を迎える見通しとなってきた。しかし、5月連休明けからの政局は、沖縄普天間米軍基地移設問題や、「政治と金」問題を中心にして国会混乱が続いている状況であり、7月の参議院選挙も絡んで混沌としてきている。
 私たちは、3月25日に開催した「部落解放・人権政策確立要求中央集会」で、今国会での「人権侵害救済法」の早期制定を求める意思統一をおこない、各政党や国会議員などに要請行動を展開してきた。この行動以降、与党各党や公明・自民の各野党などにも「法」制定への議論が再燃してきた。
 4月27日には、最大与党である民主党の内部機構として、「人権政策推進議員連盟」が発足した。これは、従来の「部落解放推進委員会」が継承・改組されたものである。発足総会には65人の衆参議員が参加し、会長に中野寛成・衆議院議員(大阪8区)、事務局長に松野信夫・参議院議員(熊本選挙区)が選出された。もちろん、部落解放同盟の組織内議員である松本副委員長は副会長、松岡書記長は事務局次長に就任している。その後も参加議員は増えてきており、5月21日段階では78人(衆50人、参28人)の議連になっており、すでに千葉法務大臣への激励・要請行動や勉強会を開催するなど法案策定・提出に向けた活発な活動を展開している。
 また、法務省側も5月11日に国際人権に造詣が深い横田洋三・中央大学法科大学院教授(財団法人・人権教育啓発センター理事長)を法務省特別顧問に委嘱し、検討体制を整えていることを千葉・法務大臣が閣議後の記者会見で明らかにしている。
 さらに、これまでの経緯と法案の性格からして超党派での合意をめざしていく仕掛けとして、政権交代後の新たな状況のもとで、従来の超党派組織であった「21世紀人権政策懇話会」を再編する作業を続けてきていたが、この組織も民主党・社民党・国民新党・公明党・自民党の5党でほぼ発足の準備が整ってきた。

 しかし、私たちがめざしてきた今国会での「人権侵害救済法」の制定は、国会会期の日程からいって、事実上不可能の状況になってきたと判断せざるを得ない段階である。残念の極みである。新政権運営のもたつきのもとで、「法案」策定の態勢を整えるのが遅れたことが大きな一因である。
 私たちも、この態勢の確立を促進させるために、中央段階での与党各党への要請を継続的におこなうとともに、各地実行委員会から民主党の各都府県連を通じて民主党中央本部への「早期制定」の要望書を提出するとりくみをおこなってきたことは周知のところである。このとりくみは功を奏したが、態勢確立の段階までであり、法案の策定・提出の段階にまでは至らなかった。
 一方で、2月3日の参議院本会議で松岡議員が代表質問で鳩山総理から「早期提出に向けて努力する」との回答を引き出し、国会論議の俎上に乗ってきた途端に、反対派の動きが国会内外で活発化してきたこともあり、政府・与党も慎重にならざるを得なかったという事情もある。
 反対派の人たちは、国会だけでなく全国的に地方議会に対する反対意見の要望書を採択させる運動を陰に陽に継続している。残念なことであるが、現時点で4県議会1市議会で「反対意見」が採択されている。しかも、2県議会は、以前「早期制定」を決議したところであり、政権交代による政治逆流が起こっていることを警戒し、各地域から早期制定の闘いを再構築する必要がある。

 政権与党の法案策定・提出への態勢確立の遅れ、反対派の執拗な妨害工作が存在するもとで、今国会での「人権侵害救済法」の成立は実現が困難になってきていることは事実である。
 しかし、私たちが求める「人権侵害救済法」は、党利党略や政争の具として弄ばれてはならないものである。何よりも差別・人権侵害に苦しめられている多くの人たちを1日も早く泣き寝入りの状態から解き放つことが求められているのである。
 そのための国内人権機関の創設が急がれるのであり、これまで長い時間をかけて政府や与野党が、その成立をめざして議論してきた経過があり、政治責任・政府責任が鋭く問われている。
 国連人権諸条約機関も日本政府に対して1998年以来、度重ねて「早期設立」を勧告しており、直近でも本年3月に人種差別撤廃委員会が2度目の勧告をしてきたし、5月に来日したピレイ国連人権高等弁務官は「日本の早期設置に期待している」ことを日本政府に要望している。国連人権理事国でもある日本は、これらの国際責務についても誠実に履行すべきである。
 私たちは、第174通常国会の会期末ギリギリまで「人権侵害救済法」の成立をめざす闘いを継続する。今国会での法案の策定・提出と成立という見通しが立たなくなっていることは遺憾であるが、鳩山総理の「早期提出の努力を約束」という答弁を後退させることなく可能な限り前進させる条件を今国会で整え、必ずや次期国会での成立を実現させていかなければならない。

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