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部落問題資料室
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東日本大震災にたいし、長期支援体制を作り出し、協働の力で復興をはたそう

「解放新聞」(2011.03.28-2512)

 テレビの実況放送が、津波によってのみ込まれる人びと、車、家屋を映しだす。眼前の事態にたいして、何もできないはがゆさ。
  大自然の猛威にたいして、人間とはいかに非力なものかを、3月11日に発生した東日本巨大地震(東北地方太平洋沖地震)は、あらためて知らしめた。
  最初の地震は三陸沖を震源に、マグニチュード9.00という、95年に起きた阪神淡路大震災の1450倍で、04年のスマトラ島沖大地震に続く規模といわれている。死者、不明者を合わせると現時点でも2万人をこえる。避難している人びとは30万人以上に達する(3月21日現在)。今後、被害の解明がすすむにつれて、死者の数は増加するものと思われる。
  地震とそれに続く巨大な津波が、多くの人びとをのみ込んだ。だが、それは自然災害だけでなく、人災でも多くの生命が奪われていることも事実だ。
  たとえば、絶対どんな事態が起きても安全だと裁判でも主張し、地域社会でも喧伝してきた原発が、福島第1原発で、炉心溶融をともなう大災害を引き起こしている事実一つをとっても、明らかだ。
  政府は、原発の問題をはじめ、あらゆる情報をただちに、被災者や国民に知らせ、迅速な措置を取るべきなのだ。しかし、管総理が東京電力に乗り込み怒りをあらわにしたように、東電側は情報を細切れに出し、事故を意図的に過小想定しようとし、協力会社という名のもとで、下請企業に措置をなすりつけようとしていた。そこには差別の構造が、透けて見える。炉心溶融という人類史上最大の危機の事態に、適切な措置を取りえていないのがいまの現実だ。


 現時点では、自衛隊や警察、米艦隊を使った救援活動が、何よりも優先される。毛布、衣類、食料や生活必需品、ガソリン燃料や暖房用燃料などを一刻も早く避難所や被災者に届けるという人道的な支援が、まず第一だ。余震が続くなかで、寒さと食糧不足を、きょうも被災者、避難所生活者は強いられている。長期化する避難所生活は、肉体面と同時に精神面でもストレスを蓄積していく。
  肉親の死は、生き残った人びとの心に大きな痛手を残す。家屋の倒壊などによる喪失は、家財道具の配置まで含めて、一人ひとりのアイデンティティの根拠の崩壊にもつながる。被災した人びとの心が癒やされ、人間のまちとして復興がかちとられるまでには、まだまだ時間がかかる。
  阪神淡路大震災での大きな教訓の一つは、支援や復興から取り残される人びとをつくり出したことだった。一人の洩れもなく、すべての人びと、とりわけ社会的マイノリティの人びとに支援、復興が届くことが重要だ。そして、ふるさとが再興できるように、全力をあげた長期支援体制をつくり出そう。

 当面、まずなによりもカンパ活動に重点を置き、それぞれの部落で活動を展開しよう。
  部落解放運動がこれまで培ってきた経験やノウハウをもとに、自助・共助・公助の原則をふまえながら、復興へ向けて、社会連帯として活動を展開しよう。私たちに問われているのは、「人命こそ最大の人権」との認識に立ち、一人ひとりがどう社会連帯としての社会責献ができるかである。
  私たちは、差別の構造の連鎖の上に成り立つ原子力発電に反対してきたが、地震が頻発するこの社会で安全といえないことが、事実をもって明らかになった。これまでどおりの社会に回帰する復旧ではなく、人間と自然、社会のあらたな関係を創造する復興へ、国民的な議論を交わし、行政側にもそうした姿勢を求めていこう。差別のない、人が人として生きていける社会を、長期支援体制を作りあげ、被災者とも協働しつくりあげていこう。


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