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部落問題資料室
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主張

 

反差別国際連帯活動を強化しよう

「解放新聞」(2011.10.17-2539)

 1976年の第31回全国大会で国際人権規約批准促進運動にとりくむことを決定していらい、部落解放運動は、国際人権規約批准、人種差別撤廃条約加入など国連の人権諸条約批准・加入に注目してきた。国連の場で、部落問題が提起されたのは1983年の人権小委員会である。国際連帯活動が飛躍したのは、1988年に反差別国際運動が設立されてからである。ドイツのスィンティ・ロマ中央委員会をはじめスリランカ、ネパールなどのNGOの参加を得て、国際人権NGOとして、国連での協議資格を獲得し(1993年)、多くの人権NGOに国連での発言を保障してきた。
  部落問題やインドのカースト問題が本格的な議論になったのは、1995年に日本が人種差別撤廃条約にようやく加入した翌年、人種差別撤廃委員会へのインド政府報告書審査からである。そこでは、条約第1条のdescent(世系)差別に含まれるとする委員会と、対象にならないとするインド、ネパール、バングラデシュ、日本などの政府との対立があった。同和行政を推進している日本政府が推進役ではなく、拒否の姿勢を貫いていることは、厳しく批判されなければならない。

 2000年に「世系差別は国際人権法によって禁止された差別である」という人権小委員会決議がなされ、2002年には人種差別撤廃委員会が、「世系に関する一般的勧告29」を採択した。国運は、インドのカースト差別だけに注目するのではなく、世系差別とし、「職業と世系に基づく差別」を国際人権基準として明確にする努力をしてきた。差別を解決するためには、法的枠組みが必要であり、条約を機能させるための実定法が必要である。条約の実践報告を各国に定期的に求めることをとおして、法的枠組みを整備させ、差別解消をめざす。差別が存在している事実の確認、差別の実能暮調査し事実を統計的数字によって示すことは、解決するための基本的姿勢である。
  しかし、日本の問題は、部落問題の存在を認めておきながら、「同じ日本人」論による観念的な平等を主張するだけで、実態調査によって差別の事実を明らかにすることに消極的であることだ。日本政府は同和行政にとりくんできたにもかかわらず、市民的及び政治的権利に関する国際規約に関する人権委員会でも、人種差別撤廃委員会でも政府報告書には部落問題に関するまともな報告はない。

 「一般勧告29」に触発される形で、セネガル、マリ、ナイジェリアなど、西アフリカ諸国での世系差別が明らかになった。人権小委員会は特別報告者を選出し、「職業と世系に基づく差別」の調査を委託し、特別報告者の最終報告として「職業と世系に基づく差別の効栗的撤廃に関する原則と指針案」が人権理事会に提出された。部落問題やカースト問題が「職業と世系に基づく差別」としての新しい概念を獲得した。
  こうした国連の動きを生み出してきたNGOI部落解放同盟、反差別国際運動、ダリット人権全国キャンペーン(NCDHR)、ヒューマンライツ・ウオッチ、そして2000年に発足した国際ダリット連帯ネットワーク(IDSN)などは、2000年ごろから人権小委員会への情報提供を中心としたロビーイングを活発化してきた。国内では、人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)が連帯して活動した。
  今年6月、ジュネーブに関係NGOが集まり「ダリットの権利・国連での10年上」れまでとこれから」を討議し、課題や戦略を含む宣言にまとめた。重要な点は、連帯運動の成果である「職業と世系に基づく差別撤廃のための原則と指針」を国連文書として人権理事会に承認させることである。承認によって国際人権基準となる。「職業と世系に基づく差別」を国連条約機関が横断的に重要課題として取り上げ、有効利用できることになる。
  また、連帯運動は、インド、ネパール、スリランカ、バングラデシュのダリットの村で活動してきた青年たちが世系差別を認めない関係各国政府と対時し、国際舞台で発言する勇気を与えてきたように、草の根レベルに変化をもたらす。
  国連人権高等弁務官が「世界は、アパルトヘイトの壁を壊したように、カーストの壁を打ち破る」と表現した。地域や国・文化をこえて、これからの10年は世界規模の連帯運動を創り出していく時であり、部落解放運動や同和行政の経験を生かして、反差別国際連帯のとりくみを強化していく。国際的な潮流となりつつある取り調べ可視化法の制定とともに、人権侵害救済法・差別禁止法など部落問題解決のための国際人権諸条約を踏まえた実定法の制定が求められている。


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