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部落問題資料室
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解放・人権保育運動を「人権のまちづくり」運動の柱に第34回全人保で理論と実践を戦わせよう

「解放新聞」(2011.10.31-2541)

 少子化や子どもの貧困などが大きな社会問題となり、問題解決へ向けた政策が現政権で実行されつつある。一方、東日本大震災や台風災害、福島原子力発電所の事故により、少子化対策などの財源確保がむずかしい状況も生まれている。WTO(世界保健機構)の昨年5月発表によると、2010年の日本の合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子どもの数)は、1.39で微増しているものの、少子化に歯止めがかかったとはいいがたい状況だ。また、児童虐待は5万5千件をこえ、前年より1万件以上も増える事態となっている。子どもの貧困率も非常に高い状況を推移していると思われる。これらの実態は日本で子どもや子育てにたずさわる人たちにとってひじょうに厳しい状況であり、出産や子育てと仕事の両立を可能とする社会環境整備の必要性を説いている。

 被差別部落をとりまく実態は1993年以降、全国的な調査はおこなわれていないが、実施した府県や市町村段階での調査結果は、全国平均より高い高齢化率を浮き彫りにしている。要因は多岐にわたるが、子育て世代にあたる青年層流出は大きな要因として分析できる。その原因は差別が確固として存在していることに他ならない。本年3月にだされた「部落青年の部落問題認識調査報告書」では、①全体的に低い学力水準②学歴格差の拡大傾向③子ども期の貧困が生み出す低学歴傾向④部落内で低く、部落外で高い学歴の格差⑤低位な学力が導く不安定な就業状況という5つの特徴があげられた。この調査に回答した青年の7割弱は部落居住者だ。
  したがって、被差別部落には、社会的困難を抱える青年と高齢者が多く居住しているといえる。結果、不安定な就業状況が「結婚できない、子どもをつくらない・つくれない」ことの誘因となり、少子化に拍車をかけていると言い換えることができるだろう。このような社会的困難を抱える人が集住する現実があるからこそ、同和保育所のもつ機能や役割はますます重要であり、解放保育運動の推進が不可欠だ。

 部落解放運動で、子どもたちの「低学力」を克服し、自己実現と社会参加に必要な力の獲得につながる豊かな「学び」と「育ち」をつくりだすことが大きな課題となっている。子育てや教育は、保育所や学校のとりくみだけで完結するものではない。解放保育運動が子どもの24時間の生活を視野に入れとりくまれてきたように、保育所・幼稚園・学校・家庭・地域の連携と協働による地域総体のとりくみが必要だ。多くの同和保育所で多数派となっている部落外の子どもや親たち、さらには解放保育にとりくんでこなかった保育所とも解放運動の成果を分かち合いともに力を合わせて発展させることが今こそ望まれている。被差別部落が抱えている問題が社会全体にも蔓延する今日、同じ課題や悩みを抱える人たちとともに、解放・人権保育運動を地域周辺とともに「人権のまちづくり」運動の重要なとりくみの柱として推進しよう。
  第34回全国人権保育研究集会を来年1月21日、22日、なら100年会館(奈良市)を中心にひらく。「幼保一体化」を柱とする新しい子育て支援制度案がまとまるなど、保育をとりまく状況が大きく変わろうとする今日、解放保育運動の理念をあらためて確認する集会にしたい。同時に全国各地の子育てをとりまく現状を交換し、理論と実践を闘わせ、今後の解放保育・人権保育運動のいっそうの原動力になることを期待する。


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