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部落問題資料室
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主張

 

多くの指導者を輩出した福岡の地で90年の歴史に学び、10年後を見据えた運動を創造できる全青にしよう

「解放新聞」(2012.07.16-2577)

 全国水平社が京都の地で創立されてから90年という月日が流れた。本年、解放の父である松本治一郎委員長をはじめ多くの指導者を輩出した福岡の地で第56回を迎える全国青年集会をひらくことは大きな意義がある。日本が侵略戦争へと突きすすんだ時代、自由や平等といった理念を掲げる人びとにたいしては「売国奴」という烙印を押し、愚弄し排除してきたと歴史は語る。想像できないような弾圧のもと、差別という厳しい現実からの解放を求め、先人たちは団結し、全国各地へ瞬く間に部落解放運動を広げたことを忘れてはならないし、その先頭には青年がいたことを確認しよう。

 国内ではあらゆる分野で格差が拡大し、少数の富めるものと大勢の生活困難者が存在している。結果、自死者は14年連続3万人をこえ、生活保護受給者は戦後最大を更新し続け、210万人をこえた。いわゆる「負の連鎖」の影響範囲が広域化し、深刻化しているにもかかわらず、そこから救いあげる制度は「自己責任」という名のもと、基準の引き下げや廃止の方向で動いている。一部の幹部候補と専門職を除いては非正規労働者でまかなう方針で経済競争に突入した政財界からみれば、今日の社会の姿は当然の結果だろう。

 このような社会実態は差別意識を助長し、差別行為へと結びつける。「土地差別調査事件」をはじめ、「在特会」による差別街宣、ネット上での差別書き込みなど枚挙にいとまがない。とりわけ、昨年11月に発覚した「プライム事件」を端緒に、全国の自治体だけでなく、ハローワークや携帯電話会社から個人情報が不正に取得され、売買されている実態が発覚した。その多くが結婚や就職、浮気調査であることを容疑者は証言している。結婚や住居購入という人生の大きな節目で部落を排除・忌避する社会で1日も早い人権侵害救済制度の確立が必要だ。同制度確立にとって大きな山場を迎えている現在、青年の積極的なとりくみを強く要請する。

 解放運動からの青年離れがいわれて久しい。ただ現在の青年に結婚や就労などの悩みや差別への恐怖や怒りが薄れたのかといえば、それも違うだろう。これまでの運動の成果によって、露骨な差別言動は少なくなった。一方、これまで被差別部落に集住していた「しんどい人」が社会全体にひろがった。このような状況を青年みずからがどのように分析し、その課題を克服できる運動を発見できるかが大きな鍵を握る。
  10年たてば、水平社創立から100年を迎える時期に立っていることを自負しよう。2022年、後輩たちに責任をもって「よき日」になったといえることをめざし、福岡全青に青年が結集しよう。そして全青としても大きな節目となるよう奮闘しよう。


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