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脱原発と反戦・平和のとりくみをすすめ、命と人権を大切にする社会実現を

「解放新聞」(2012.08.06-2579)

 6月16日、野田佳彦首相は、安全性が確認されたとして大飯原発3・4号機の再稼働を決定した。しかし、だれがみても安全性が確認されたとはいえない現状だ。防波堤や重要免震棟の工事なども先送りされ、ストレステストの2次評価も未実施であり、研究者による大飯原発敷地内の破砕帯に関する新知見も無視されていた。
  国会の福島原発事故調査委員会は7月5日に報告書を公表した。報告書では、「この事故が『人災』であることは明らかで、歴代および当時の政府、規制当局、そして事業者である東京電力による、人びとの命と社会を守るという責任感の欠如があった」と指摘。地震・津波対策を立てる機会が過去、何度もあったのに先送りされてきたと批判した。
  原発を推進するために、「安全神話」がつくられ、経済効率をあげるために安全性が無視されたのである。今回の再稼働も同じだ。経済効率が優先され、人びとの命を軽視する政治や社会の在り方を絶対許してはならない。

 報告書は、つぎのように先送りのすさまじい実態を指摘している。
  ①06年に経産省・原子力安全・保安院は新しい耐震指針を出し安全性のチェックを求めたが、東電は09年までに実施すると回答しながら、16年に先延ばしすることを社内で決め、保安院も黙認した。
  ②敷地の高さを越える津波が来た場合、海水ポンプが機能喪失し、炉心損傷にいたる危険性があることは、東電と保安院の間で認識が共有されていた。東電が対策を先延ばししていることを保安院は容認した。
  ③内閣府・原子力安全委員会は、全電源喪失の可能性を考慮する必要がない理由を東電に作文させていたことが明らかになった。
  ④米国で2002年以降とられているシビアアクシデント(過酷事故)対策がとられていれば、今回の事故が防げた可能性がある。保安院はこの情報を知っていたが、活かそうとしなかった。
  このように報告書は、東京電力と政府の規制当局が、危険性など問題を認識しながら、情報を隠し、改善をせず、3.11を迎えたことが事故の根源的原因であり、「人災」だと指摘した。
  また東電の事故調査報告を批判し、「想定外」とされた津波のリスクも、東電および規制当局によって事前に認識されていたことが検証されたと報告、いい訳の余地はないと批判している。さらに直接的原因を津波と限定すべきでないとし、地震による損傷の可能性を示唆、原子炉建屋内部の調査の進展をふまえ、さらに検証が必要だとしている。

 福島原発事故の原因解明も途中である。政府から独立した規制機関も発足しておらず、安全の確保と規制の仕組みも整備されていない。そもそも使用済み核燃料の処理の方法も決まらず、「トイレなきマンション」の実態も変わっていない。事故は終わっておらず、今後の地震に耐えられるのか、どのような方法で廃炉にいたるのかも明確でない。広範囲に放出された放射性物質の処理のめどもたたず、川の河口に新たなホットスポットができたりしている。
  再稼働決定後、首相官邸前は反対する多くの市民で埋め尽くされた。7月16日に代々木公園で開催された「さようなら原発10万人集会」も会場いっぱいの17万人であふれた。780万をこえる署名も提出されている。
  8月には、政府のエネルギー基本計画が出される予定だが、市民の命と安全を優先し、脱原発社会実現の道筋を示すよう声をあげていこう。

 人びとの命の軽視という意味では、戦争はさいたるものだ。命を軽視する政治や社会が横行すれば、真の平和とはいえないし、それは戦争への道とつながっていく。
  沖縄の米軍普天間基地は街の真んなかにあり、その撤去が課題になってきたが、今度は構造上の欠陥が疑われている垂直離着陸機オスプレイが配備されようとしている。オスプレイは、最近1年でもモロッコとフロリダであいつぎ墜落事故をおこしており、沖縄の全自治体が強く反対している。岩国基地に一次駐機が予定されたため、山口県知事、岩国市長も反対を表明した。また、オスプレイは配備後、日本全国で低空飛行訓練をおこなうとされている。ここでも命と安全の軽視がある。
  敗戦から67年、「国家の利益」という得体が知れぬもののため、命を捨てることを強要された時代があった。そのような状況を二度と許してはならない。そのためにいまから、「国益」や「経済効率」よりも、命と人権を大切にする政治と社会を根付かせていく必要がある。
  脱原発、オスプレイ配備反対など、命と人権を大切にする政治と社会実現へ、各地でとりくみを強めよう。


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