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部落問題資料室
NEWS & 主張

賤称語が残る古地図事件で見解
出版社が差別助長しない編集へと

「解放新聞」(2012.12.31-2600)

 「穢多村」や「非人」表記のある江戸時代の東京都内の古地図(尾張屋版切絵図)と現代地図が安易に重ね合わせることができる書籍が出版された問題で、11月20日に出版社と、第4回話し合いがもたれた。出版社から社長と担当の編集本部長、中央本部から和田中執、東京都連から長谷川三郎・委員長、藤本忠義・副委員長、近藤登志一・書記長らが出席した。

中央本部の「基本見解」を支持
  意見交換では、これまでの論議(第1回=5月25日、第2回=8月8日、第3回=10月10日)をもとに加筆、訂正されてきた見解文をもとに、おもに社としての見解と今後の対応を中心に協議した。
  見解文では、歴史的史・資料の改ざん、修正は原則としてしない方向であるが、今日問題になっている土地問い合わせや身元調査事件の深刻な実態があるなかで、今回の書籍については、被差別部落が特定され、差別に利用される可能性が否定できないことから、「穢多村」「非人」表記を削除し、差別を許さない社としての姿勢を明確にした内容をふくめて、削除した旨を解説文として付記することが提案された。
  また、部落問題をはじめ、さまざまな人権問題への研修の積み重ねを社として共有化できるようにすること、部落差別の今日的な実態を学ぶことを基本に、人権問題担当者の設置なども検討していくことが課題として取り上げられた。
  この間の話し合いでは、03年の『五街道分間延絵図』の刊行で中央本部がまとめた「古地図・古絵図刊行および展示に対する基本的な考え方について」で示した、「歴史研究・史料における古地図・古絵図などの取り扱いについては、被差別部落の地名や身分呼称が出てくること自体を問題視しているのではない」ことを明確にしながら、「学術的なる利用も含めて、相当な配慮をした上で協議しながら、地名などの取り扱いを決めていくべきである」ということを基本にしながら、出版社とていねいな論議を重ねてきた。
  見解文でも、こうした方向をあらためて確認するとともに、「関係史料・資料の公開など、その取り扱いに関わって、関係機関との協議をすすめ、公開の度をより高めていく方策を確立していくこと」に向けて、建設的な意見交換が必要であるとした。
  中央本部は、地元の東京都連、当該支部の意向も尊重しながら、基本的には公開度を高める方向で話し合いをすすめてきたが、今回は、出版社の最終的な見解文にもとづいて、「穢多村」「非人」表記を削除し、解説文を付けて出版することで合意した。
  なお、これらの措置は、今後の重版分からで、社としての考え方をふくめた解説文を付けて出版されるが、今後とも、さまざまなケースを想定しながら、幅広い論議をすすめていく課題であることも話し合いのなかで確認された。


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