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侵略戦争と植民地支配、沖縄戦などの反省と教訓をふまえ、平和憲法を活かそう

「解放新聞」(2013.08.19-2631)

 政治状況の右傾化・悪化によって憲法が改悪される危険性が現実味を帯びてきている。安倍首相は憲法改悪に執念を燃やしており、まず96条を改定して、改憲のハトドルを低くしたいといっている。
  現在、憲法改定を国会が発議するためには、衆議院と参議院それぞれの3分の2以上の賛成が必要で、改定の承認には国民投票で2分の1以上の賛成が必要となる。この衆参両院の「3分の2」を「2分の1」にしようというのだ。安倍首相は、現憲法の改定の手続きは諸外国に比べてハードルが高すぎると主張するが、欧米諸国に比べても高すぎるということはない。
  米国では、上院と下院の3分の2、全米の4分の3の州議会の承認が必要で、日本よりハードルが高いと思えるが、これまで憲法改定はおこなわれている。
  憲法改定のハードルが、一般的な法律制定に比べ高く設定されているのには理由がある。憲法は、国のあり方を示す最高法規であり、国家が公権力を濫用するのを防ぎ、国民の権利が抑圧されないように守るものである。それが故に、政権が代わるたびに、あるいは一時的熱狂で改憲され、国民の権利が抑圧されないよう、改定のハードルを高くしているのだ。

 また、日本国憲法は一度も改定されていないことが問題だという主張をよく聞く。的外れな議論だ。改定が必要な部分があるなら、何をどのように改定する必要があるのか、明確にして、議論をおこして、有権者に問うべきだろう。多くの人びとが納得できる改定内容なら、ハードルを越える民意はつくることができるはずだ。
  安倍・自民党が憲法改悪でめざす内容は、昨年4月に「自民党改憲草案」として公表された。その内容は、一言でいえば戦前に逆戻りするような内容だといえる。天皇の元首化、国防軍の保持、集団的自衛権の行使、日の丸・君が代の尊重義務などが明記され、戦争の反省から生まれた平和憲法の精神をふみにじる内容となっている。そして、「国民の保障された権利及び義務」についても条件を付け、「公益及び公の秩序に反してはならない」と人権の制限を盛り込んでいる。集会、結社、言論、出版など「表現の自由」についても「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」の禁止を盛り込み、大幅な権利制限を可能とさせ、戦前の「治安維持法」を想起させる内容となっている。さらに「家族は、互いに助け合わなければならない」という内容の項目をわざわざ加えているが、これは「家族愛」とは別の話で、社会保障や福祉を削減し「家族の助け合いでなんとかしろ」と国が市民に強要することが目的だ。
  まさに「戦争を避ける憲法」から「戦争ができる憲法」へ、「国家権力を縛る憲法」から「人びとの自由と人権を縛り義務を強要する憲法」へと変質させる改憲草案である。このような憲法改悪がおこなわれれば、国のかたちはさま変わりし、戦前に逆戻りしてしまう。このような改定は絶対に許せない。

 憲法論議の背景には、歴史観の違いも大きく影響している。安倍首相は、「河野談話」と教科書検定の近隣諸国条項を廃止し、「村山首相談話」にかわる談話を発出したいと表明し、中国、韓国、米国などからも批判や懸念の声があがっている。それに関連した橋下徹・大阪市長発言も国際的に批判された。現憲法は、侵略戦争と植民地支配や沖縄戦の反省と教訓をふまえ、ふたたび戦争をしないことを誓い、平和主義と主権在民、基本的人権の原則を明記し、敗戦後の日本の人びとに圧倒的賛意をもってむかえられた。その現憲法の理念を生かすのか、侵略戦争などを正当化し戦前回帰をめざすのかが、いま問われている。
  今年の8月で敗戦から68年が経過するが、いまの日本国憲法=平和憲法の理念とその意義を再確認することが、いまこそ求められている。戦争の悲惨さ、命と人権の尊さ、そして戦前の人権抑圧の暗い時代状況や平和憲法を獲得するにいたる歴史をもう一度学習し、平和憲法の意義を広く伝えていこう。そして、憲法の理念を活かすとりくみをすすめよう。


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