pagetop
部落問題資料室
NEWS & 主張
主張

 

被差別マイノリティの人権保障の闘いに連帯し、国際人権基準を機能させよう

「解放新聞」(2014.05.26-2668)

 1990年に部落解放同盟が世界の水平運動をめざして結成したIMADR・JC(反差別国際運動日本委員会)が4月24日に第25回理事会を東京でひらいた。2013年度活動報告と2014年度の活動方針を確認し、部落差別やカースト差別の撤廃、人身売買・搾取的移住の廃絶、先住民族やマイノリティの権利確立、司法の人種差別(部落差別もふくむ)撤廃、国際基準にもとづく人権保障など幅広い活動領域を網羅している。また活動の原則を草の根レベルの被差別当事者と活動にとりくむNGOとの連携、草の根・国内・国際の連携を形成することとしている。アジアの被差別マイノリティの厳しい生活の現場での課題解決のために、国内に国際人権基準を機能させること、そして国連の国際人権基準に反映させることを目的としている。
  反差別国際運動は、国際人権規約や人種差別撤廃条約批准を要求し、国連を中心にとりくまれている国際人権の流れを国内に機能させる重要な役割を担ってきた。設立当時は「国内問題が解決しないのに国際人権にとりくむのは疑問」の声もあった。しかしその後の経過をみていくと、政府に国際人権現約・人種差別撤廃条約・女性差別撤廃条約・子どもの権利条約、そして最近では障害者権利条約の批准を実現させた。国際人権基準が国内法として機能する状況が生まれてきている。また、人権教育や人権行政の内容に国際人権の考えを取り入れるようになってきた。国際人権諸条約の履行状況を監視する人権委員会設置法案を民主党政権のもとで、閣議決定するまでになったが、衆議院解散で廃案となった。

 差別排外的なヘイトスピーチをくり返す団体に京都地裁が人種差別撤廃条約の違反であると明確にのべ、賠償を認めたように、裁判でも条約が活用されるようになった。婚外子差別の民法規定は憲法違反とした最高裁判所判決では、国際人権機関の勧告に言及した。「ヘイトスピーチは表現の自由」「条約委員会の勧告に法的拘束力はない、遵守義務はない」という政府の姿勢はあるが、国際人権の流れは確実に国内の人権状況を変えようとしている。
  条約を批准した国は条約の実施状況を政府報告書として国連に提出し、条約委員会の審査をうけることが義務づけられている。審査する条約委員会へは課題を担っているNGOが連携して情報提供し、課題解決に有意義な政府報告書にたいする最終所見や勧告に反映させるように働きかけていく。今年の夏には自由権規約委員会と人種差別撤廃委員会に提出された日本政府報告書の審査がある。自由権規約委員会に提出された政府報告書にたいして委員会からすでに質問書が出され、政府が回答している。誠実でない政府回答にたいしては、批判的な意見書を日弁連などのNGOが作成し、委員会に情報提供している。人権委員会設置や死刑廃止、取り調べでの弁護士常時立ち会いなど司法の民主化を求める内容などであり、有効な委員会勧告を求めている。部落解放同盟は、部落にたいする否定的固定観念が克服されたかどうかを実態調査にもとづいて情報提供すること、マイノリティ女性(部落)の政策・方針決定過程への参加、複合差別をうける部落女性などの相談にのる専門相談員の育成、同和教育の総括などを自由権委員会が日本政府に求めるよう主張している。
  人種差別撤廃委員会へはヘイトスピーチと表現の自由に関する一般勧告35にしたがって、ヘイトスピーチがジェノサイド(皆殺し)につながらないように厳しく規制する差別禁止法や差別撤廃教育の徹底を勧告するように求めていく。「部落問題は条約に含まないのでコメントしない」とする政府見解にたいして、前回条約委員会が出した「インドのカーストと部落問題は入るとした一般勧告29を受け入れる」とする勧告に同意すること。特別措置終了後の政府の部落問題解決の連絡調整体制(担当部署)の設置、戸籍情報を差別的目的で利用した場合の罰則規定などの前回委員会勧告を政府が実行するように重ねて求めていく。

 人種主義・人種差別・植民地主義の克服、被差別部落出身者、アイヌ民族、沖縄の人びと、在日コリアンなど日本の旧植民地出身者とその子孫、移住労働者・外国人をふくむマイノリティ当事者間、マイノリティとそれ以外の人びとの間の相互理解と連帯を形成する人種差別撤廃NGOネットワークの活動を強化していく。国連が作成した「『職業と世系に基づく差別』の効果的撤廃に関する原則と指針案」(2007年)が実践的に活用されるように、インド、ネパール、バングラデシュ、スリランカ、日本のNGOと連携し、国際指標づくりの共同作業を推進することをとおしてアジアの被差別マイノリティとの連帯を創りだす。
  NGO間の連携や体験学習による交流のとりくみからはじめて、これからは被差別マイノリティの生活の場で異体的課題をともに解決するプロジェクトの推進に部落解放運動で培った知恵と経験を出し合って連帯することが求められる。
  インドのひとり親家庭の子どもへの奨学金支援、インドやネパールでのダリットの村で女性たちが組織化し、女性のエンパワメントと村の開発事業にとりくむ困難な闘いもはじまり、差別構造を打ち破る大きな希望を身近な村の民主化からとりくんでいる。
  フィリピンの山岳地域コルディリエラの先住民族女性が貧しいなかから資金を拠出し生活協同組合を作り、生活の賃を変えようと、とりくみはじめている。こうした困難な闘いの現場で部落解放運動が培ってきた知恵と経験を生かして連帯し、国際人権の流れの成果を生活の場へ伝えていく。また、生活の闘いの場から国際人権のとりくみへつなげていく国際連帯の形を創りだしていく。都府県連や支部での国際連帯のとりくみや経験を分かち合う場からネットワークを広げていこう。

「解放新聞」購読の申し込み先
解放新聞社 大阪市港区波除4丁目1-37 TEL 06-6581-8516/FAX 06-6581-8517
定 価:1部 8頁 115円/特別号(年1回 12頁 180円)
年ぎめ:1部(月3回発行)4320円(含特別号/送料別)
送 料: 年 1554円(1部購読の場合)