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コラム

荊冠旗 第2766号/16.06.13

 プロボクシングチャンピオンだったモハメド・アリ選手が亡くなった。栄光の歴史とともに晩年はパーキンソン病との闘いが加わった。小学生時代からボクシングに目覚め、練習を積み重ね、1960年のオリンピック・ローマ大会では金メダルを獲得した。しかしオリンピックで勝っても、黒人のアリへの差別は続いた
▼自伝によると、このときの金メダルは怒りによって川へ投げ捨てたという。反差別への自覚のなかで急進的に黒人解放運動を担っていたマルコムⅩとも親交を深めカシアス・クレイという「奴隷の名」を捨て、イスラム教に改宗し、モハメド・アリを名乗った
▼そして1967年にはベトナムの人びとを殺し侵略する兵役を拒否した。このことでベルトを剥奪されたが、74年、南アフリカの地で大方の予想をくつがえし見事にチャンピオンに返り咲いた
▼兵役拒否などは、世界で注目される人物でないとアピール力は薄いし、実行は困難だろう
▼アリのグローブと写真を家に飾るオバマ米大統領は「困難な時代に立ち上がり他人がしないときに発言した」と死を惜しんだ
▼人びとに先がけ時代を切り拓く行動をおこなうことは勇気がいることだ。だが歴史がいつかは正当な判断を下すことになる
▼9・11事件のあと、追悼式に困難な体を押して参加したアリは「イスラム教は平和な宗教だ」と叫び、人びとの団結を訴えた。この精神はいまこそ継がれねばならない。

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