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「伝えたい思い」を大切に、部落解放文学賞をはじめとした文化運動にとりくもう

「解放新聞」(2016.08.15-2775)

 部落解放文学賞は今年42回をかぞえ、昨年10月末までの応募期間に、総数149編の作品が寄せられた。第1次選考と最終選考をへて、入選7編、佳作7編を選出し、本年7月23日、大阪市・ホテル大阪ベイタワーで表彰式をおこなった。受賞者は一人ひとり表彰状を授与され、日頃の創作の苦労からひととき解放され、受賞を喜びあった。また、そのあとの懇親会では、選者と受賞者がともにテーブルを囲んでおおいに語りあった。反差別・人権確立の立場で創作に励む人たちが、今年も本文学賞に集い、いっそうの創作への決意を誓いあえたことについて、選者の先生方、応募者の皆さんのご協力に心から感謝したい。

 長年、詩および識字部門の選者を務めていただいている金時鐘さんが昨年、著書『朝鮮と日本に生きる-済州島から猪飼野へ』(岩波新書)で大佛次郎賞を受賞された。この賞は人間への深い洞察と、歴史や現代文明への鋭い批評を評価された作品におくられる権威ある賞だ。懇親会の冒頭では、金さんの受賞を祝して花束が贈呈され、部落解放文学賞実行委員会の鎌田慧代表からお祝いの言葉がおくられた。また、詩部門選者の野口豊子さんが、金さんの詩2編を朗読した。
  懇親会ではそれぞれの部門の選者から、受賞作品にたいして厳しくも熱い講評が語られた。部門ごとに着席したテーブルでは、選者と受賞者が交流し、創作の苦労がねぎらわれた。

 いま、日本社会はきわめて危機的な状況にある。戦争への体制を整え、改憲に突きすすもうとする安倍政権のたび重なる暴挙にもかかわらず、参議院選挙では改憲勢力が3分の2を占める結果となった。
  主催者として祝辞をのべた組坂委員長は、今日のきわめて厳しい政治情勢のもとでこそ、部落解放運動の原点というべき識字運動が大切だと強調した。みずからが歩んできた歴史をふり返り、跡づけることで、自分と父や母や、祖父や祖母の誇りを取り戻す。そうした営みが地域の誇りを取り戻す闘いにつながってゆく。今日、自治体財政のひっぱくや隣保館事業の後退とともに、識字学級の運営が困難になっている現状がある。他部門が応募数を維持しているのにくらべて、識字部門の応募数が減少しているのには、そうした背景があると考えられるが、こうしたなかでこそ、日頃のとりくみを部落解放文学賞につないでいこう。

 被差別民衆には、文化を支えてきた歴史があり、芸能や芸術、生活文化にかかわる豊かな財産がある。これらをふくめ「伝えたい思い」を大切にした文化運動を全国各地で活性化させよう。厳しい時代にこそ、理論や方針に加えて闘う人びとの「共感」が大切である。
  今年10月末締め切りの第43回部落解放文学賞に反差別、人権、平和への多くの思いを寄せよう。


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