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第23回中央福祉学校への参加をとおして「人権と福祉のまちづくり」実現へ地域での実践を強化しよう

「解放新聞」(2016.11.14-2786)

 少子・高齢化時代を迎えた今日、安倍政権は社会保障制度を大きく改悪しようとしている。公的年金が将来的に減額されるほか、医療や介護などの公的保障のしくみが後退させられようとしている。
  これまでも、介護保険については、ヘルパーの利用時間派遣の回数を制限したり、保険で給付されていた介護施設の食費や居住費を自己負担にするなど、給付削減の制度改悪がおこなわれてきた。そのうえ、安倍政権は給付削減だけにとどまらずに、要支援1または2対象者を保険給付の枠外に、軽度者(要介護1または2)を特別養護老人ホームへの入所の対象外にする制度を強行した。
  また、財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)は2015年6月に生活援助や福祉用具貸与などを「日常生活の通常負担するサービス・物品」と位置づけ、原則自己負担にすべきだということを打ちだしている。膨らみ続ける介護費を抑えるためとして、2018年度の介護保険制度見直しに向けた議論が、社会保障審議会(厚生労働大臣の諮問機関)の部会ではじまった。見直しの内容は、介護認定の要介護度が軽い人にたいしてのサービスについて絞り込むことが柱になりそうだ。年内に結論をだし、来年の通常国会で法改正をめざすとしている。さらに、現行は40歳以上とされている介護保険料支払い対象年齢を20、30歳代に引き下げ、徴収する動きもある。このままでは、保険料や税金だけは取り立てられ、まともな給付保障は受けられないことになってしまう。
  私たちはこのような生活・福祉にかかわる施策をめぐる厳しい情況をふまえ、「自助」「共助」「公助」の理念を最大限に生かした運動をすすめてきた。しかし安倍政権は、自己責任論による「自助」「共助」のみを強調することで、行政責任を放棄し、社会保障制度を改悪しようとしている。このような策動と断固闘わなければならない。

 この間、生活・福祉関係の運動方針で提起してきたように、高齢者や障害者、ひとり親家庭、子どもたちが地域のなかで安心して暮らすことができるまちづくり運動にとりくみ、「自分たちのまちを自分たちで創造していく」ことが大切だ。介護・福祉サービス、ヘルパー資格取得のとりくみなど、雇用創出や人材育成のとりくみともあわせて、一人ひとりの「生きがい」や「社会参画」を実現する支援施策の充実に向けて活動を強化していこう。
  そのためにも、必要なサービスや自立支援の施策を行政に求める闘いをすすめるとともに、「地域福祉計画」の具体化に向けて、社会的支援を必要とする人が排除されることのない地域福祉運動を自治体議員や部落内外との協働の力でとりくんでいくことが必要だ。
  また、「障害者差別禁止条例」が現在、21道府県で制定されている。今年4月には「障害者差別解消法」が施行された。「障害者権利条約」など、福祉や生活に関連した先進的な条約や法律に学びつつ、生活・福祉関係の共闘運動をすすめていかなければならない。そして、「人権と福祉のまちづくり」の実現のために、「地域福祉計画」のなかに隣保館の役割など、部落問題の解決の視点を位置づけさせ、福祉や医療制度を充実させていくとりくみをすすめていくことが求められている。
  10月5日に、社会保障制度や隣保館運営・事業について生活困窮者自立支援法への対応、障害者差別解消に向けた教育・啓発の推進などを柱に厚生労働省(生活・福祉関係)交渉をおこなった。さまざまな課題があるなかで今後も継続した交渉をおこない、部落問題の解決につながる制度や施策の実現に向けてとりくみを強めていこう。

 これまで「人権のまちづくり運動」を主軸として、各都府県でそれぞれ特色をもった運動がすすめられてきた。地域によってその形は多様となっており、国や自治体の福祉政策などにかかわる一般施策を活用したとりくみ、他のNPOと連携した協働のとりくみ、社会福祉法人など立ち上げ、事業を展開しているところや、「人権課題の解決に質する」ことを設置運営目的とした隣保館のはたす役割を明確にしながら、隣保館を中心に部落を「核」とした人と地域の活性化にとりくんでいるところなど、さまざまだ。
  今後も、「人権と福祉」の拠点施設としての隣保館活動(事業)を強化するためにも、全国隣保館連絡協議会などと連携を強めながら、とりくみをすすめていくことが求められている。さらに、こうした隣保館活動(事業)とあわせて、「生活困窮者自立支援法」の積極面を活用していくことも重要だ。
  12月3日、4日と第23回中央福祉学校を愛知県名古屋市内でおこなう。1日目は、全国隣保館連絡協議会会長の川﨑正明さんから「隣保館の現状と今後の課題について」、DPIの日本会議副議長の尾上浩二さんから「「障害者差別解消法」と公的施設に求められる課題(仮〕」についての報告を受け、学習を深める。その後、「障害者差別解消法」と隣保館、相談事業を中心とした活動などのテーマを中心にグループ討議をおこなう。2日目は、前日のグループ討議の報告と、京都府連西三条支部が中心になってとりくんでいる子どもの居場所づくり事業についての実践報告がある。こうした実践報告や討議をとおして、各都府県連の課題や問題点などを共有していきたい。
  中央福祉学校に積極的に参加するとともに、今後も、各都府県連のさまざまなとりくみをよりいっそう強めよう。また「人権と福祉のまちづくり」の実現のために、「地域福祉計画」のなかに隣保館の役割など、部落問題の解決の視点を位置づけさせ、生活・福祉の課題を中心にセーフティネット機能をもつ社会保障制度を充実させていくとりくみをすすめていこう。


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