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新証拠を大大的に情宣し、5・23狭山市民集会に結集しよう

「解放新聞」(2017.05.15-2810)

 狭山第3次再審闘争では、万年筆のインクに関する「下山鑑定」に続いて、有罪の決め手とされてきた鞄の発見が警察のでっち上げであることを明らかにした新証拠が提出され、3大物証とされてきた万年筆、腕時計、鞄がすべて崩れた。万年筆、腕時計、鞄は、いずれも自白で発見された「秘密の暴露」ではなく、ねつ造された証拠だ。部落解放同盟各都府県連は支援者とともに新証拠を武器にさらに広範な支援運動をつくりだし、事実調べ、再審開始をかちとろう。5月23日の狭山市民集会に全国から結集しよう。

 弁護団は3月2日、流王英樹・土地家屋調査士による調査報告書などを新証拠として提出した。提出された報告書は、証拠開示された事件当時の航空写真をもとに、①鞄発見現場と鞄を捨てたという場所の自白が食い違っていること、②鞄発見は自白にもとづいた「秘密の暴露」ではないこと、を明らかにしたきわめて重要な新証拠だ。

 鞄については、2013年3月に弁護団の粘り強い開示請求によって、事件直後に警察が撮影した現場一帯の航空写真112枚が開示された。弁護団は、この航空写真をもとに自白と鞄の発見場所の特定に全力を注いだ。依頼を受けた土地家屋調査士は2度にわたって現地調査・測量をおこない、航空写真のうえに、自白の鞄処分地点と実際の鞄発見地点、警察官らの捜索した場所を特定した。場所の特定は根気のいる作業であったが、土地家屋調査士はこれを精密に調査・測量して割り出した。場所の特定にあたっては、石川さんの自白調書や実況見分調書にくわえ、2010年に証拠開示された鞄捜索報告書と取調べ録音テープのやりとりが綿密に検証された。ここでも、鞄捜索報告書や取調べ録音テープなどの開示された証拠が重要な役割をはたした。その結果、鞄発見地点と自白の鞄処分地点は、東西で32・4メートル、南北で16・4メートル離れており、しかも鞄が発見された場所は幅1・3メートル、深さ0・75メートルの久保川とよばれる水路であるが、石川さんの自白では「山(雑木林)と畑の間の低いところ」となっており、まったく別の場所であり、形状も違っている。自白図面上も久保川は「みぞ(溝)」と書かれ、それとは別に線が引かれた線上に「かばん(鞄)」と書かれており、鞄が発見された地点が石川さんの自白した鞄処分地点と大きく食い違っていることが明らかになった。

 今回の新証拠は、有力な有罪の証拠とされてきた自白による鞄の発見が虚偽であり、鞄の発見が「秘密の暴露」ではないことを明らかにしたきわめて重大な証拠だ。寺尾判決は、鞄、万年筆、時計を自白にもとづいて発見された被害者の所持品だとして有罪の根拠としているが、万年筆が下山鑑定によって被害者のものでないことが明らかになったのにひき続き、鞄についても「秘密の暴露」とはいえないことが明らかになった。すでに腕時計については、バンド穴の使用状況から被害者が使用していたものでないことを専門家が明らかにしており、3物証はここにすべて崩れ去った。

 昨年10月、被害者の兄の調書が証拠開示され、そこに石川さん宅から発見された万年筆を使って書いた数字が添付されていた。1から10までの数字がくり返しきちんと並んで書かれた資料だ。被害者の兄が数字を書いた万年筆は、警察が被害者のものかどうかを確認するためにもってきたもので、カモイで発見された万年筆であることは疑う余地がない。今回、弁護団がこの数字を書いた万年筆のペン先(ペンポイント)の鑑定を依頼したところ、川窪克実・鑑定人は、細字のペン先(ペンポイント)の万年筆であると鑑定した。

 だとすると、脅迫状を訂正した万年筆と発見万年筆はペン先の太さが違うという大きな矛盾にぶつかることになる。知ってのとおり寺尾判決では、殺害後、石川さんは被害者の万年筆で脅迫状を訂正し、その万年筆を自宅にもち帰り、カモイに置いたという筋書きになっている。そうであれば、訂正万年筆と発見万年筆は同じ太さでなければならないのだが、脅迫状訂正箇所(「五月2日」「さのヤ」)の万年筆は中字(ペンポイント)で、発見万年筆は細字(ペンポイント)でまったく別なものであった。それが今回あらためて鑑定によって確認された。

 そうすると、被害者の万年筆で脅迫状を訂正したという石川さんの自白そのものが虚偽であることが浮き彫りになってくる。万年筆については、昨年8月のインクに関する下山鑑定によって被害者のものではないという決定的な事実が科学的に暴露されているが、川窪第3鑑定は、被害者の万年筆で脅迫状を訂正したという寺尾判決の認定を根本から崩す重要な新証拠となることは明らかだ。

 下山鑑定に続く川窪鑑定によって、寺尾判決は完全に崩れた。発見万年筆は事件とまったく関係のないものだ。2度の家宅捜索のあとに発見されたことや自白の不自然さとあわせて考えれば、万年筆は警察がねつ造したことがいよいよ鮮明になった。

 2月8日にひらかれた第31回三者協議で弁護団は、この間提出した森鑑定、魚住鑑定、川窪第3鑑定の重要性を説明した。これにたいして検察官は、下山鑑定、川窪鑑定については反証・反論の方向で検討するとした。弁護団は、いずれの新証拠も、事件の根幹を揺るがす重要な証拠であり、検察官の反論・反証が出されれば、正面から再反論するとしている。万年筆に関連した新証拠をめぐる闘いは、いよいよ正念場を迎えている。

 狭山第3次再審では、すでに187点の証拠が開示され、開示された証拠にもとづいて弁護団は鑑定書などを作成し、つぎつぎと新証拠を提出した。その数はすでに191点になっている。だれがみても脅迫状とはっきり筆跡の違う狭山警察署長に宛てた上申書、証拠開示で石川さん宅のものではないことが明らかになった犯行に使われた手拭い、カモイの万年筆が被害者のものではないことを明確にした下山鑑定、そして今回の川窪鑑定などの新証拠によって、寺尾判決は完全に崩れ、石川さんの無実が明らかとなった。全国の支援者は下山鑑定や取調べテープについての学習を深めよう。全国各地で、狭山パンフや取調べ再現DVDを活用し、下山鑑定や取調べテープについて教宣を強め、事実調べ・再審開始と証拠開示を訴えよう。

 5月23日には、石川一雄さんの不当逮捕から54年を迎える。全国各地で、新証拠の学習・教宣をすすめ、えん罪54年をアピールし、事実調べ・再審開始を広く訴え、要請ハガキや署名活動をすすめよう。不当逮捕から54年を迎える5月23日には東京・日比谷野外音楽堂で、狭山事件の再審を求める市民集会を開催する。5・23には全国から日比谷野音に結集しよう。


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