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主張

 

第76回全国大会の成功に向けて、
運動方針案の活発な議論をすすめよう

「解放新聞」(2019.01.28-2892)

 3月2日から開催する第76回全国大会に提案される一般運動方針案がまとまり、2月の第4回中央委員会での論議をふまえ、修正、補強される。都府県連や支部でも意見を集約し、大会の討議のなかで、方針案をさらに豊富化してもらいたい。

 方針案で強調しているのは、この間の人権や平和をめぐる国内外の危機的情勢をふまえた、差別や戦争に反対するとりくみの強化である。とくに安倍首相は、昨年の臨時国会で、第9条に自衛隊を明記するなどの憲法改悪に向けた自民党案の提示を強く指示していたが、憲法改悪阻止に向けた広範な闘いと世論の強い反発で断念した。しかし、安倍首相は2020年に改悪した憲法の施行に固執しており、憲法改悪に反対する闘いをさらに強めていかなければならない。

 国際情勢の特徴では、「米国第一主義」をすすめるトランプ大統領が、みずからの差別言動や差別排外主義的な政策を批判され、中間選挙で民主党が下院の過半数をこえる議席を獲得した。トランプ大統領は、メキシコ国境での「壁」建設予算をめぐって民主党と対立し、予算執行ができないまま、一部政府機関の閉鎖が継続している。また、イギリスでは欧州連合(EU)離脱案が与野党による反対多数で否決され、離脱に向けて混乱が続いている。EUでは、いずれの国でも移民・難民問題などを争点にしながら民族排外主義が台頭し、連立政権の与党になったり、閣外協力などで影響力を拡大している。

 こうした非寛容な政治勢力が伸張してきた背景には、新自由主義政策のもとで拡大した貧富の差や雇用状況の悪化などにたいする不満や不安がある。トランプ大統領の「米国第一主義」と同様の「自国主権」「自国第一」を掲げることで、既存政党にたいする批判が差別排外主義と結びつき拡大している。

 「私や妻が関係していれば、首相も国会議員も辞める」

 昨年2月の森友学園疑惑をめぐる安倍首相の国会答弁である。この答弁を受けて、森友学園との土地取引に関する公文書の改ざんがおこなわれたことが明らかになっている。しかも、8億円値引きの根拠はいまだに示されず疑惑は解明されないままである。一方、改ざんを指示したとされる理財局長を、一度は国税庁長官に昇進させるなど、行政への信頼失墜、政治責任の放棄が続いている。

 また、今年1月には賃金や労働時間を調査する「毎月勤労統計」での不適切な調査方法が明らかになり、統計までもがその信憑性を失うことになった。昨年の「働き方改革」をめぐる法案審議で、審議の前提となる資料や統計のねつ造、書き換え、まちがいが明らかになったばかりである。「入国管理法」改定の審議過程でも、外国人実習生の劣悪な労働条件の実態を意図的に隠蔽する法務大臣答弁がくり返され、外国人労働者の人権などをまったく無視した改悪が強行された。

 この間、「種子法」廃止や「漁業法」「水道法」の改悪も強行された。いずれもトランプ政権などの要請によるもので、外国資本の参入を可能にしている。これまでも安倍政権は、高額な米国製兵器も要求どおりに購入、生活保護費を減額するなど、社会保障費の削減をすすめる一方で、軍事予算を増大させている。

 さらに、安倍政権の景気回復策であるアベノミクスの失敗も明らかである。日本銀行(日銀)の「異次元の金融緩和」によって、株価を高騰させたものの、実質賃金は上昇せず、消費拡大に結びついていない。昨年末からの米中貿易摩擦の激化などで、日経平均株価も低迷したままであり、10月の消費税10%増税でいっそう景気は冷え込むだろう。

 われわれは、こうした安倍政権による反人権主義・国権主義の政治を変革していくために、統一自治体選挙と参議院選挙で、人権と平和、民主主義の確立をめざす政治勢力の結集に向けて全力で選挙闘争にとりくもう。方針案では、「部落差別解消推進法」具体化など、部落解放・人権行政の推進に果たす組織内議員の重要な役割も強調している。組織内議員、推薦候補の必勝をかちとろう。

 部落解放運動の当面の重要課題では、「部落差別解消推進法」具体化のとりくみのなかで、部落問題解決に向けた相談体制の充実、教育・啓発の推進や条例づくりを全国ですすめよう。この間、兵庫県たつの市と加東市で条例が制定された。さらに、宮崎県えびの市や日向市、高知県土佐市での人権条例制定のほか、福岡県小郡市、飯塚市、大分県豊後大野市、豊後高田市、玖珠町、九重町、熊本県菊池市などで「部落差別解消推進法」をふまえた人権条例の改正がおこなわれた。

 今年4月1日から施行される東京都国立市での「人権を尊重し多様性を認め合う平和なまちづくり基本条例」では、すべての人を社会の一員として包摂すること(ソーシャル・インクルージョン)を基本理念として、部落出身者をはじめ、民族、性別、障害、性的指向などを具体的に例示し、差別を禁止している。罰則はないものの、市長の諮問機関が救済策を検討し、実施するなどの救済措置も明記されている。

 また、「部落差別解消推進法」第6条の部落差別に係る実態調査は、法務省が中心となって、本年に実施される。これまで調査項目、調査サンプル数などについて要請をしてきたが、今後の部落差別撤廃に役立つ施策の確立に向けた実態調査になるようにするべきである。今後、部落差別事象の集約に向けて、自治体への照会がおこなわれる。自治体、教育委員会などにたいして、しっかりと回答するように要請していこう。さらに、都府県・市区町村でも、同様の設問で実態調査をおこない、より詳細に地域での部落差別の実態が明らかになるようにとりくんでいこう。

 部落差別事件では、インターネット上の差別情報の氾濫が深刻になっている。鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争では、いよいよ証人尋問がはじまる。ヘイトスピーチと同様に、差別を公然と煽動する鳥取ループ・示現舎の言動を許さず、裁判闘争に勝利しよう。

 また、同じ鳥取ループ・示現舎による「部落探訪」は、復刻版出版禁止の仮処分が出された「全国部落調査」を利用して、全国の被差別部落を写真付きで、インターネット上に公開している。そのなかには、未組織部落もふくまれており、きわめて悪質なものである。自治体や法務局への削除要請にとりくむなど、広く部落差別の実態を社会に訴えるとりくみを強化しよう。

 狭山再審闘争では、弁護団が万年筆や脅迫状にかかわって、石川一雄さんの無実を科学的に証明した新証拠を提出している。

 インクにふくまれる元素を分析し、石川さんの「自白」によって発見された万年筆が被害者のものではないと明らかにした「下山第2鑑定」や、コンピュータによる脅迫状の筆跡鑑定によって、脅迫状の筆跡は別人のものであるとした「福江鑑定」など重要な新証拠である。「福江鑑定」にたいする検察側反証には、すでに福江意見書などで反論しているが、こうした新証拠の学習や情宣活動をすすめ、部落差別にもとづくえん罪である狭山事件の真相と石川さんの無実を訴え、再審実現に向けた世論を大きく拡げていこう。

 さらに、5月には天皇代替わりがある。新元号の制定をふくめた祝賀ムードのなかで、被災地訪問や「護憲発言」など天皇個人を賛美する風潮も強まっている。「貴族あれば賤族あり」という部落解放運動の立場を堅持し、天皇制賛美と政治利用の強化を許さない広範な闘いをすすめよう。

 今日、こうした闘いの課題とともに、部落解放運動を前進させていくための運動と組織の強化が急務の課題になっている。全国水平社創立100周年に向けて、第76回全国大会での活発な討議をもとに、部落解放運動の展望を大きく切り拓いていこう。

 

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