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「戦争法」強行採決から4年、
戦争する国づくりを許さない闘いの強化を

「解放新聞」(2019.09.09-2922)

 2019年6月、大阪市での20か国・地域首脳会議(G20サミット)は米中摩擦による世界経済の減速に懸念を示し、「自由、公正、無差別な貿易・投資環境の実現」を明記した首脳宣言を採択して閉幕した。

 トランプ米大統領は、大阪で開催されたG20サミット閉幕後の記者会見で、「日米安全保障条約」の破棄について「全く考えていない」としながらも、「不公平な条約だ」とのべ、現状を「変えなければならないと話してきた」ことを明らかにした。トランプ大統領は、日本が攻撃されれば米国が日本を守ることになっているのにたいし、米国が攻撃されても日本には米国を守る義務がないのは「不公平」だとあらためて指摘した。そのうえで、「われわれが彼らを守るなら彼らもわれわれを守る必要がある」と語った。

 トランプ大統領の発言は、あながち脅しやウソとは思えない。TPP(環太平洋パートナーシップ)からの離脱、パリ協定からの離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)の改定、イラン核合意からの離脱などを強く主張し、それらを実現してきたからだ。

 このトランプ発言に安倍首相は、「大統領は大統領の考えを述べたのだろう」としたうえで「自衛隊と憲法の関係で、私たちに何ができるかは、初めて会った時から説明している」と強調した。また、2015年に集団的自衛権の行使を一部容認する「安全保障関連法」=「戦争法」が成立したことをあげ、「同盟は極めて強いものだ。だから、大統領も同盟を破棄する考えはないと述べている」ともいっている。菅官房長官も出演したテレビ番組で、米側に真意を問い合わせるかについて、「一連の発言は(日本ではなく)第三者に対する発言だ。政府の立場で反応すべきではない」と強調した。いずれにせよ、トランプ大統領の真意を聞くことなく、また、この間の日米首脳会談で、どんな「日米安保条約」についての協議がされたのか明らかにせず、はぐらかし、説明責任を果たそうとしない。

 2019年度の防衛予算案は18年度当初比1・3%増の5兆2574億円となり、5年連続で過去最高を更新した。新防衛大綱の目玉となった、海上自衛隊最大の「いずも」型護衛艦2隻を事実上の航空母艦に改修するのに必要な調査費として、7000万円が計上され、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の関連経費は、総額1757億円となった。

 改修対象の護衛艦「いずも」と「かが」の2隻には、短距離離陸・垂直着陸能力をもつ米最新鋭ステルス戦闘機F35Bの着艦時に発生する高熱に対応するための甲板塗料の耐熱性試験や、発着時の騒音が艦内の居住空間に与える影響について調査がおこなわれる。

 イージス・アショアについて、概算要求時点では総額2352億円を計上していた。試験費用の次年度以降への先送り、構成品の見直しなどで経費を圧縮した。

 米政府からの有償軍事援助(FMS)による調達経費は7013億円。イージス・アショアのほか、6機のF35A(681億円)や9機の早期警戒機E2D(1940億円)などがふくまれる。19年度の新規契約にともなう装備品の後年度負担は、今年度より2割増の2兆5781億円を見込み、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)は1987億円で、今年度より10億円増えた。アメリカ追随をやめず、軍事費を増加させ、国民生活に必要な福祉・教育予算を切り捨てる安倍政権の暴走を絶対に止めなくてはならない。

 日本政府は、韓国にたいして半導体およびディスプレイ生産に必須の材料3品目の輸出を規制すると発表した。経済産業省は今回の措置について、「日韓間の信頼関係が著しく損なわれた」との理由としている。規制対象であるフッ化ポリイミド、フォトレジスト、高純度フッ化水素は、半導体・テレビ・スマートフォン製造において必要不可欠だ。韓国は、これらの品目の輸出優遇国リストから除外され、契約ごとに最長90日を要する審査を受けることになった。日本政府は否定しているが、韓国大法院の強制徴用賠償判決にともなう報復措置であることは明らかだ。

 大阪でおこなわれたG20サミットで日本政府がみずから主張した「自由、公正、無差別の貿易原則」が採択されたにもかかわらず、その意義から大きく逸脱した報復措置を絶対に許してはならない。

 安倍首相は拉致問題の解決を国内で政治利用し、朝鮮高校を授業料無償化措置から排除し、在日コリアンへのヘイトスピーチを放置し、朝鮮敵視政策を継続してきた。しかし、二度の米朝首脳会談が実現すると安倍首相は突然、「無条件の対話」を提起したが、朝鮮からは、まったく相手にされなかった。また、G20後、突然のトランプ大統領の訪朝が実現し、朝鮮半島情勢が進展するなか、まったく存在感を示すことができず、蚊帳の外におかれている。いまこそ、過去における日本の植民地支配、朝鮮戦争、南北分断による、多くの不幸を乗り越え、日朝韓での対話による外交で、東北アジアの平和を築いていかなければならない。

 「憲法にしっかりと「自衛隊」と明記し、違憲論争に終止符を打つ」。安倍首相は今年5月、改憲派の集会に寄せたビデオメッセージで、こう強調した。安倍首相が示したのが「9条の1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持、交戦権の否認)を残しつつ、自衛隊を明文化する」との案だ。つまり、1項と2項からなる9条の条文に、新たに自衛隊の存在を明記する条文を加えるというものだ。

 2006年に、初めて首相の座に就いた安倍首相は、「戦後レジーム(体制)からの脱却」というスローガンを掲げた。12年末、ふたたび政権の座に返り咲いたあとは、このスローガンを封印したが、14年7月に集団的自衛権の行使を一部認め、憲法解釈を変更する閣議決定をおこない、翌年9月には集団的自衛権の限定行使を可能とする「安全保障関連法」=「戦争法」を成立させた。憲法解釈の変更は「解釈改憲」ともよばれるが、首相は悲願の一部を達成したともいえる。

 日本は憲法第9条2項で国際法上の「戦争」を可能にする戦力と交戦権を否定しているため、海外で武力行使はできない。「戦争法」で集団的自衛権の行使が一部容認され、自衛隊は海外で武力行使ができるようになったが、自衛隊の海外での活動の違憲性は、これまでどおりずっと問われることになる。

 安倍政権は、歴史修正主義をもって戦後日本社会が選択した平和主義を破壊し、戦争する国に変えようと憲法を改悪しようとしている。このような動きを、決して許してはならない。

 私たちは、7月21日投開票の参議院選挙で、憲法改悪を許さず、人権と平和の確立をめざす政治勢力の結集に向け、全推薦候補の当選をめざして全力で闘った。結果、憲法を改悪しようとする自民・公明・維新などの「改憲勢力」の議席は、「改憲」発議に必要な3分の2議席を割り、憲法改悪阻止に向けた成果をあげた。

 しかし、投開票日翌日の7月22日午後、自民党本部での記者会見に自民党総裁として臨んだ安倍首相は、冒頭発言でこう語った。「この選挙では憲法改正も大きな争点となりました。街頭演説のたび、議論を前に進める政党を選ぶのか、それとも議論すら拒否する政党を選ぶのか。今回の参院選はそれを問う選挙だと私は繰り返してきた。少なくとも議論は行うべきである。これが国民の審判であります」。「改憲」発議に必要な3分の2議席を割ったにもかかわらず、与党が参議院の議席を過半数確保したことを理由に、国民の審判を得たとし、何としても自分の任期中に憲法改悪を虎視眈眈と狙っている。

 安倍政権は「戦争する国」づくりのため、米トランプ政権の要求に応え防衛省の予算を拡大し、自衛隊を海外での無制限の武力行使に道をひらくことを、目論んでいる。

 「戦争法」の廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回とともに、平和を希求し、核兵器のない世界を求める世論と運動を発展させよう。

 

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