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NEWS & 主張

主張

 

10・31狭山市民集会に結集し、事実調べ・再審開始、
「再審法」改正をかちとろう

「解放新聞」(2019.10.07-2925)

 今年9月9日、東京高裁で第40回三者協議がひらかれた。弁護団は、福江意見書と下山第2鑑定について検察側に反証の提出時期等について求釈明をおこなっていたが、検察官は、福江意見書にたいする反証については10月に提出の予定であるとしたものの、下山第2鑑定にたいする反証については見通しがたっていない状況であると説明した。

 知っての通り、狭山事件では、石川さんの自白にもとづいて自宅カモイから被害者のものとされる万年筆が発見され、それが有罪の決め手とされてきた。万年筆はこの事件のカギを握る決定的な証拠である。下山第2鑑定は、発見された万年筆のインクからは、被害者が事件当日に使っていたインクにふくまれるクロム元素が検出されなかったことを蛍光X線分析で科学的に立証したもので、裁判の行方を決定付ける第一級の鑑定書である。

 この鑑定は昨年8月に提出されているが、すでに1年以上が経過している。昨年12月の第38回三者協議で、検察官は下山第2鑑定にたいして実験をおこなうなどして反証を提出するとのべたので、弁護団は今年4月におこなわれた第39回三者協議で、反証を提出する時期等について明らかにするよう検察官に求めたが、検察官は下山第2鑑定にたいする反証の提出時期を明確には答えなかった。このため弁護団は、7月に書面で提出の時期を請求したが、今回の三者協議で、検察は提出の見通しが立っていないと回答した。

 そもそも万年筆の発見については事件当初からねつ造されたものではないかという疑問がもたれていた。石川さんが不当逮捕されたあと、警察は2回の家宅捜査をおこなったが自宅からは何も出てこなかった。第1回目は、石川さんが逮捕された5月23日、第2回目は再逮捕の翌日の6月18日とそれぞれ10数人の刑事が2時間以上かけて家宅捜索をおこなっているが、そのときは発見されていない。ところが3回目の捜索で、数人の刑事がわずか24分で発見している。

 また、石川さんの自宅から発見された万年筆のインクと、被害者が使っていたものとは違っていることが当初から指摘されていた。2013年に被害者のインク瓶が証拠開示され、ジェットブルーという名前でかつて販売されていたパイロットのインクであることが判明した。彼女は事件のあった日、学校のペン習字の授業でその万年筆を使っているが、そのインクはジェットブルーだ。しかし、石川さん宅のカモイから発見された万年筆のインクは、ブルーブラックだった。ジェットブルーとブルーブラックではインクの成分が違う。下山第2鑑定は、蛍光X線分析でインクにふくまれている元素を調べ、発見された万年筆のインクには被害者が使っていたインクが入っていないことを突き止めたのだ。証拠の万年筆が被害者のものでない疑いが明らかになった。

 いっぽう、弁護団は昨年1月に、コンピュータによる筆者異同識別鑑定である福江鑑定を提出したが、これにたいして検察官は科学警察研究所技官による反証意見書を提出してきた。そこで弁護団は、福江鑑定人による反論の意見書(福江意見書)を昨年12月に提出したが、今回、福江意見書にたいする反証については10月に提出の予定であると回答した。

 ところで最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は6月25日、大崎事件の第3次再審請求の特別抗告審で、鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部の再審開始決定を取り消し、再審を棄却する不当きわまりない決定をおこなった。地裁、高裁で認められた再審開始を最高裁が取り消すというのは前例がなく、また、下級審に差し戻すのではなく、最高裁自身が自判して、再審請求を棄却するという決定も前例がない。今回の決定は、検察官の特別抗告が抗告理由に当たらないとしながら、職権で判断したとして再審開始決定を取り消している。しかもそのうえで下級審に差し戻すのではなく、鑑定人尋問もやらずに法医学鑑定が再審の理由にならないとして再審を棄却している。大崎事件弁護団は、これらは判例に違反し、内容の判断に事実誤認があるとして最高裁第1小法廷宛てに異議申し立てをおこなったが、最高裁から主任弁護人に電話連絡で異議申し立てについては立件しないとの連絡が入ったという。

 今回の最高裁決定は、まったく不当な決定である。再審開始を認めるための新証拠の証明力、再審のハードルを不当に高くしたもので、しかも、第1小法廷の判事全員一致の決定であり、一つの事件の決定とはいえ、今後の再審請求の審理への影響も懸念され、狭山闘争にも影響が出ることが心配される。

 大崎事件の再審請求人・原口アヤ子さんは6月に92歳になった。大崎事件ではこれまで再審開始決定が3回出ているが、事件発生から40年たって最高裁は棄却するという決定をおこなったのだ。弁護団は第4次再審請求の準備をはじめているが、そもそもこのように再審が長引く原因となっているのは、検察官による再審開始にたいする抗告が認められているからである。最高裁の法と人権を無視した決定に強く抗議するとともに、検察官の抗告の禁止や再審における証拠開示の保障など、「再審法」の改正を求める運動を強めていかなければならない。狭山事件の第3次再審でも検察官は証拠開示に応じようとせず、弁護側の新証拠にたいしてつぎつぎと反証を出してきているが、再審妨害を許さない法改正が必要である。

 いっぽう、東京高裁で狭山事件を担当している後藤眞理子・裁判長は7月31日、事実調べをまったくおこなわずに三鷹事件の再審請求を棄却する不当決定をおこなった。三鷹事件は、戦後、国鉄をめぐっておこった三大事件の一つである。1947年に中央線三鷹電車区構内に入庫中の無人電車が暴走し、死者6人、負傷者20人を出した事件で、国鉄で人員整理の反対闘争が激化しているなかでおきた事件だ。組合員10人の共同謀議による計画的犯行であるとされたが、その後竹内景助さんの単独犯行とされ、竹内さんに死刑判決がいい渡された。無実を訴え再審を求めた竹内さんは1967年に無念のうちに獄死し、再審を引き継いだ妻も1984年に死去。竹内さんの無念を晴らすために遺族・弁護団が2011年に再審請求を申し立てた。弁護団は、単独犯行では電車を動かせないことを明らかにした東大名誉教授の鑑定、目撃証言が信用できないことを指摘した心理学者の鑑定、自白の虚偽を示す新証拠などを提出し、事実調べを求めてきたが、後藤裁判長は鑑定人尋問をいっさいおこなわず昨年結審し、再審請求を棄却した。

 狭山事件では、弁護団は、この間、鑑定人尋問の請求(事実取調べ請求)について準備している。裁判所は、双方の新証拠、主張が出そろった段階で事実調べの必要性を判断するとしているため、鑑定人尋問は検察官の反証内容とそれへの反論をふまえた尋問になるので、弁護団は、鑑定人尋問の請求を準備していくために、検察官にたいして反証の内容、提出の時期について回答を求める求釈明をおこなってきた。

 今後、鑑定人尋問を実現し、なんとしても再審開始決定をかちとるために、弁護団の鑑定人尋問の請求にあわせたかたちで事実調べ・再審開始を求める世論を盛り上げていこう。

 拡大全国狭山活動者会議・狭山住民の会全国交流会では、狭山事件の確定有罪判決である寺尾判決から45年を迎える10月31日の日比谷野音の狭山事件の再審を求める市民集会を全力でとりくむことを誓い合った。全国各地においても支援団体と協力して、集会や学習会、街頭宣伝をおこない、新証拠の学習・教宣を強化し、狭山事件の再審開始を求める世論を広げよう! 10・31狭山市民集会に結集しよう。

 

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