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人権・平和のとりくみを強め、憲法の理念を全国で実現しよう

「解放新聞」(2019.10.28-2928)

 2019年5月3日、「日本会議」系の「公開憲法フォーラム」では、安倍晋三・首相がビデオメッセージであらためて「2020年の新憲法施行」への意欲を表明し、「令和」への改元を機に、「改憲」議論をすすめるべきだと訴えた。

 安倍首相は、同集会における2年前のメッセージで、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」とのべたことについて、「今もその気持ちに変わりはありません」とあらためて強調した。憲法9条への自衛隊明記も「違憲論争に終止符を打つ。私は先頭に立って責任をしっかりと果たしていく」と語るなど、憲法改悪への意欲を示した。

 同集会には、改憲に賛同する与野党の責任者が参加。自民党の下村博文・憲法改正推進本部長は「一度も憲法改正、修正できなかった時代を脱却しよう」と、改憲議論の必要性を強調。公明党の遠山清彦・衆院議員は「公明党の基本的姿勢は加憲。この立場から積極的に憲法議論に参加していく」と語った。

 集会をひらいた「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の櫻井よしこ・共同代表は、「新しい未来を構築していくため、何としても憲法改正を発議していただきたい」とよびかけ、国会における憲法審査会での議論の進展を求めた。

 また、2019年9月には、第4次安倍再改造内閣が発足した。安倍首相は会見で、7月の参院選挙で憲法の議論をすすめるよう訴え、国民の信を得ることができたとのべた。自民党として、憲法改「正」に向けた議論をすすめる考えだ。そのうえで、憲法改「正」原案の策定に向かって、衆参両院の第1党である自民党は、今後、国会の憲法審査会において、強いリーダーシップを発揮していくべきとのべ、憲法改悪を虎視眈眈と狙っている。

 しかし、安倍首相の「国民の信を得て、議論は行うべきだというのは国民の声として」憲法改「正」の議論は、本当に望まれているのだろうか?

 参院選の結果を受け、朝日新聞社は22、23の両日、全国世論調査(電話)を実施し、政府に一番力を入れてほしい政策は、「年金などの社会保障」が38%でもっとも高く、「憲法改正」が3%でもっとも低かった。参院選の比例区で自民党に投票したと回答した人に限っても、「社会保障」が39%で、「憲法改正」は4%であった。参院選の結果、与党と日本維新の会などの「改憲勢力」の議席が、改憲発議に必要な3分の2に届かなかったことには、43%が「よかった」と答え、「よくなかった」は26%だった。内閣支持層では「よかった」が31%で、「よくなかった」43%の方が多く、不支持層では「よかった」が66%で、「よくなかった」14%だった。

 安倍政権のもとでの憲法改正には「賛成」31%で、「反対」46%を下回った。今後、首相がすすめる政策には「不安の方が大きい」が55%で、「期待の方が大きい」32%を上回った。前回2016年の参院選後の調査で同じ質問をしたさいの「不安」48%、「期待」37%と比べても「不安」が増えた。世論調査でも明らかなように、国民は、改憲より社会保障、教育・子育て、景気・雇用、外交・安全保障を望んでいる。

 そして、学校法人「森友学園」に国有地が8億円値引きされて売却された問題や、首相の長年の友人である加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設の問題。官僚の忖度が行政の中立・公平性をゆがめた疑いが浮上したが、政府は都合の悪い文書を「怪文書」と断じ、決裁文書を改ざんした。

 これだけではなく厚生労働省の毎月勤労統計に端を発した統計不正問題では、56の基幹統計の約4割で不適切な処理が判明。厚労省では働き方改革に関し、裁量労働制の不適切データ問題が発覚し、1日の残業時間が1か月分より長いという、ずさんな処理を見抜けなかった。防衛省は、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備候補地である秋田県への説明資料作成にあたり、見落としや見誤りといった単純ミスを重ね、県民の怒りを買った。こうした安倍政権の驕り、昂ぶりが官僚を腐敗させ、民主主義を衰退させてきたことが、改憲勢力3分の2に届かなかった要因だ。

 しかし、改憲勢力が3分の2に届かなかったといっても安心はできない。安倍首相は、参院選直後に、「国民民主党の中に憲法改正を議論すべきだと考える人もたくさんいる」と期待感を示した。参院選で、自民党、公明党、日本維新の会をふくめた改憲勢力は81議席にとどまり、国会発議に必要な3分の2(非改選と合わせて164議席)には、4議席届かなかった。参院の国民民主党は21議席あり、安倍首相は、日本維新の会と国民民主党の統一会派をも画策している。

 また、安倍首相は、憲法改正のルールを定めた憲法96条の改悪を狙っている。憲法96条には、衆参両院で総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民投票で過半数の賛成を得て初めて改正が実現する。自民党は、日本の憲法改正要件は、諸外国のなかでもとりわけ厳しいと主張し、要件緩和をもくろんでいる。しかし、日本の改憲要件が諸外国と比べ、格別に厳しいわけではない、むしろ圧倒的多数の国で、日本より厳格な手続きを定めている。アメリカでは、上下両院の出席議員の3分の2以上の賛成で改憲を発議し、全50州のうち4分の3以上の州議会で承認される必要がある。ドイツでは、連邦議会、連邦参議院のそれぞれの賛成が必要。フランスは両院の過半数に加え、両院合同会議の5分の3以上の承認が必要である。自民党の「日本は戦後一度も憲法改正していない」との理由だけで、要件緩和することは言語道断だ。絶対に許してはならない。

 私たちには、この安倍政権を打ち倒し、「戦争法」をはじめとする憲法違反の法律を廃止し、平和といのちと人権を私たちの手に取り戻し、未来に引き継ぐ責任がある。1964年いらい、憲法の平和と民主主義、人権尊重の理念を日本社会において実現するために、第56回護憲大会が11月9日から11日にかけて函館市で開催される。憲法改悪を阻止し、平和と人権確立のため、第56回護憲大会に積極的に参加しよう。そして、戦争する国づくりをすすめ、新自由主義路線にもとづき貧困と格差を拡大する安倍政権と対決し、立憲主義と平和憲法を守り、人権・平和・民主主義の確立をめざし、すべての市民と連帯して闘い抜こう。

 

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