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NEWS & 主張

主張

 

差別排外主義の台頭に抗して、荒廃した社会情況の変革に向けた
連帯—協働の闘いを強化しよう

「解放新聞」(2019.12.09-2934)

 国会では、首相主催の「桜を見る会」をめぐる問題が連日とりあげられている。どのような人物が首相と桜を観賞しようがどうでもよいと思うが、招待されるのが、各界での功績、功労という条件があり、「桜を見る会」の費用が政府負担となれば、公費、すなわち税金が使われているのであるから、たんなる親しい仲間とお花見をするわけではないので、そのような公的行事を私物化するのが許されないのは当然である。とくに安倍首相の後援会行事のようなものになっていたり、「私人」と閣議決定までしている昭恵夫人が招待者を推薦しているなど、さまざまな問題がとりあげられているが、一番驚いたのは、招待状を送付したリストが破棄されていたことである。

 普通、招待状リストは、次年度に開催されるであろう同じ行事のために保存してあるのが通常の行政的な措置である。その招待状リストが、国会議員が質問のために資料請求した日と同じ日にシュレッダーで破棄されていたという。これでは、都合の悪い情報はないことにしてしまえばいいということではないか。

 かつて防衛省で、イラクや南スーダンに海外派兵されていた自衛隊の日報をとりまとめていたにもかかわらず、その存在を隠蔽していたとして大問題になったことがあったが、同様のことがおこなわれている。また、森友学園や加計学園の問題でも、こうした公文書の破棄がおこなわれていた。

 まさに都合の悪いことには答弁しないで居直る、証拠となる公文書は破棄してもかまわないという、安倍政権の民主主義軽視の体質が首相や政権に忖度する官僚組織をつくり出している。

 安倍政権は、11月20日で通算在職日数が2887日となり、桂太郎・首相をこえて単独で憲政史上最長となった。長期政権の奢りがこうした体質を生み出している。9月11日に第2次改造内閣が発足した直後、不祥事で経済産業大臣、法務大臣が続けて辞任し、首相自身の森友学園・加計学園疑惑も解明されていない。今回の「桜を見る会」問題でも首相自身が「一切関知していない」とした虚偽答弁を指摘されている。安倍首相は、野党が要求している予算委員会での審議に応じ、疑惑や疑問にたいして、しっかりとした説明をすべきである。

 しかし、安倍首相は、こうした政権の立ち枯れ状態にもかかわらず、憲法改悪に固執している。われわれは、断固としてこの改憲策動を許さず、安倍政権退陣に向けた共同行動を強めていこう。

 今日、安倍政権による軍事費の増大と社会保障費の削減、消費税増税で、格差や貧困の問題が深刻化している。しかも、大学入試のセンター試験を変更してはじまる大学入学共通テストで導入予定であった英語民間試験について、萩生田文部科学大臣の「自分の身の丈に合わせて頑張って」という発言でも明らかなように、現実にある格差や貧困を認識しながら、それを容認するのが安倍政権の姿勢なのである。当然、厳しい批判が集中し、発言の撤回、制度導入の延期が決定したが、格差や貧困の問題は放置されたままである。

 さらに、安倍首相は「急速にすすむ少子高齢化への対応」などとして、「全世代型社会保障検討会議」を新設し、70歳までの就労機会確保などに向けた具体策を検討しようとしている。しかし、年金制度問題で明らかになったように、公的年金の受給開始年齢を遅らせ、しかも支給額削減をするためのものであることは明らかである。

 そのうえ、医療や介護制度も改悪し、非正規、派遣など低賃金での労働を強要するなかで、6年連続で軍事費予算の過去最大を更新している。安倍政権は沖縄・辺野古の新基地建設強行、高額な兵器の購入をはじめ、憲法違反の護衛艦「いずも」の空母化、米国が主導するホルムズ海峡での「有志連合」に同調する、中東地域への自衛隊派兵の動きなど、米国に忠誠を尽くし、従属的な日米軍事同盟の強化をすすめている。

 また、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を4倍以上に増額するように要求されていることや、農産物の市場開放など一方的に譲歩する内容である日米貿易協定の締結など、トランプ政権のいいなりであり、これでは米国の属国である。

 こうした安倍政権を支えるのは、天皇制を美化し、「韓国人を殺せ」などとヘイトスピーチをくり返し、公然と差別や暴力を煽動する差別排外主義勢力である。欧州連合(EU)加盟諸国でも、移民や難民排除を主張する差別排外主義政党が伸張し、政権に参加したり、有力な野党として政権に影響を与えるなど、世界的に民主主義の危機がいちだんと深まっている。

 安倍政権も、米国との軍事同盟の力を背景に北東アジアでの覇権、支配的な政治力を確立しようとしているが、中国や韓国との対立を激化させ、アジアのなかでも孤立を深めているのが現実である。そこには、かつての侵略戦争の反省もなく、あまりにも歪曲した歴史観を押しつけようとする外交姿勢が根源にある。今日、インターネット上での差別情報の氾濫もこうした政治情況を反映したものである。

 安倍政権のもとで深刻化する貧困と格差の問題の根源に目を向けることなく、インターネット上の差別言動やヘイトスピーチのように、部落民や在日コリアン、障害者などにたいして公然と差別や暴力を煽動することでしか自分にまとわりつく不満や不安を解消することができない社会情況が生み出されている。そこには、自分たちよりも弱い立場の存在を確認し、攻撃の対象にすることで、差別―被差別の関係を固定化する疎外されたみずからの実体があるにもかかわらず、多くの場合、そうしたことには無自覚である。

 インターネット上の差別情報への対応は、部落解放運動にとって重要な課題である。この間、全国的な対策会議を開催し、自治体でのモニタリング活動を全国的に拡げることや、情報戦略を担う人材の育成など、具体的な課題について確認してきた。

 さらに、より根本的には、部落差別の実態や、部落解放をめざす、生き生きとした活動を情報発信するとりくみが必要である。それはたんに教宣活動の強化ということだけではない。いまだに出会えていない他者とのつながりを双方から模索するという営みでなければならない。そこでは、まずわれわれ自身を律するということから出発して、運動と組織の強化と深まりをめざすための連帯を生み出すことが求められている。

 現代の荒廃した社会的政治的情況のなかから、その荒廃と向き合うことでしか現出しない、差別―被差別の関係性の変革をめざす連帯―協働のありようを獲得するために、困難な情況に抗して闘いをすすめよう。

 

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