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法務省が調査結果を報告 〜自民党差別問題特命委・部落問題小委合同会議

「解放新聞」(2020.07.05-2958)

「部落差別解消推進法」第6条にもとづく調査の結果について法務省から説明を受け、部落差別解消に向けて活発に意見交換した(6月15日・東京)

「部落差別解消推進法」第6条にもとづく調査の結果について法務省から説明を受け、部落差別解消に向けて活発に意見交換した(6月15日・東京)

 自由民主党政務調査会のもとに設置されている差別問題に関する特命委員会(平沢勝栄・委員長、衆議院議員)と部落問題に関する小委員会(山口壯・委員長、衆議院議員)との合同会議が6月15日午後、衆議院第一議員会館でひらかれた。二階俊博・自民党幹事長も出席し、「部落差別解消推進法」第6条の部落差別の実態に係る調査の結果について法務省から報告を受けた。

 部落解放同盟からは、組坂委員長、片岡副委員長、西島書記長、赤井財務委員長、大西総務部長と、和歌山県連の藤本哲史・委員長が出席した。

 司会・進行は小委員会の宮内秀樹・事務局長(衆議院議員)が務め、冒頭、特命委の平沢委員長と小委員会の山口委員長があいさつ。平沢委員長は「法務省から調査の報告を聞き、忌憚のないご意見をいただきたい。私たちは差別のない社会をつくるためにどうしたらいいか。法律は、つくるのが目的ではなく、法律の心、魂を実際に活かす。問題があれば直す。法律の精神が少しでも実現できるように努力することは私たちの責務」と表明。山口委員長は「最近差別事案として出てきているインターネットへの対応も本気で考えていかなきゃいけない。この会合を持って、また大きな一歩を」とよびかけた。

 法務省からは宮﨑政久・政務官(衆議院議員)が、自身も発議者となった「推進法」に「魂を込めるべく誠心誠意とりくむ」と決意を語り、菊池浩・人権擁護局長が調査結果を報告した。

4類型の調査を報告−部落差別がコンスタントに存在

 自由民主党差別問題に関する特命委員会と部落問題に関する小委員会との合同会議で、法務省の菊池人権擁護局長は、部落差別の実態について①法務省の人権擁護機関が把握する事例②教委を含む地方公共団体が把握する事例③ネット上の差別の実態④一般国民の意識調査の4類型で調査したと報告。教育・啓発、相談対応力の向上、ネット上の識別情報摘示事案にたいする削除要請等の積極的とりくみなど、今後のとりくみの方向を説明した。

部落問題の解決にみんなで全力をあげようとよびかける自由民主党の二階俊博・幹事長(6月15日・東京)

部落問題の解決にみんなで全力をあげようとよびかける自由民主党の二階俊博・幹事長(6月15日・東京)

 ①では▽人権相談は3年分約1200件、人権侵犯事件は5年分約500件を全件調査。人権相談は年間約400件、人権侵犯事件は年間約100件前後とコンスタントに存在▽ネット上の事件が増加傾向で大半は「識別情報の摘示」▽ネット外では結婚・交際に関する差別など▽地域は大阪法務局管内が最多となっている。

 ②では▽5年間の相談件数など全国1788地方公共団体(当時)とその教委のすべてが回答▽相談件数は概ね横ばいだが、コンスタントに存在▽ネット上の事件が多い▽結婚・交際のほか、雇用をめぐる相談が毎年一定数存在している。

 ③では▽関連ウェブページを抽出し類型別に集計、閲覧者数も集計・分析、閲覧動機もアンケート調査▽識別情報の摘示、特定個人への誹謗中傷、不特定者への誹謗中傷のいずれも一定数存在▽識別情報摘示と特定個人への誹謗中傷の閲覧者が比較的多い▽引っ越先や交際相手の出身地調べなど差別的意図がうかがわれる閲覧者が一定数存在している。

 ④では▽全国1万人のうち6216人から調査票を有効回収▽部落差別・同和問題に一定の知識を持っている人のうち、約86%が部落差別は不当な差別と知っており、約73%が部落差別はあると回答、交際・結婚相手が出身者かを気にする人は約16%で西日本や中高年齢層でより多い。

 以上のような法務省の報告のほか、総務省や文科省からの報告のあと、活発に意見交換した。▽ネット上の識別情報摘示の問題では、訴訟などの行動を住民にせまるのではなく、法務省人権擁護局が前に出てきちんと法的な手続きを▽調査結果をふまえ、差別解消に向けて法務省と地方公共団体との意思疎通を▽各人権課題に個別法で対応しようとすすめてきたが、ネットの問題でも共通問題が発生しており、人権の総合的な法律の議論を▽人権委員会をつくり、世界に誇れるような制度を確立するなど、多くの意見が出された。

 こうした意見や提言を受けて、法務省の菊池局長は、ネットでの識別情報の摘示は「結局は結婚差別、交際差別、就職差別、雇用差別につながる。そういう情報だと、まずは事業者に理解してもらう必要がある。かつて『部落地名総鑑』が出回り、法務省の人権擁護機関として十数年かけて663冊を回収したことがあった。今回も、そのときの意気込みを持ってとりくみたい」と決意を語った。

 平沢委員長は「ご意見をこれからも聞かせていただき、しっかりと国政の場でとりくむ。いまの法律は不十分なことも間違いない。被害者の立場から、なぜもっと迅速な解決ができないかと誰もが思っている。しっかりと前向きにとりくんでいただきたい」とまとめた。

部落問題の解決に全力をあげようと

 二階幹事長は、生い立ちも交えて部落問題解決にたいする思いを語り、「就職の問題だ、結婚の問題だということにたいしてね、現にまだ問題があるんでしょ。この問題を解消するためにもっと真剣な対応がなくてはならん」「当事者のみなさんからすれば、あまりにも時間がかかりすぎている。問題の解決を急ごうじゃないですか。結婚の問題だとか、自分に置き換えてごらんなさいよ。こんな腹立たしいことはない。破談に追いやられるような例がいまだにある。そんなことに見て見ぬふりをする文化国家なんてない。この問題を解決することにみんなで全力をあげよう」とよびかけた。

 出席した議員はつぎのとおり。(敬称略・順不同)

 【衆議院議員】二階俊博▽平沢勝栄▽山口壯▽宮内秀樹▽宮澤博行▽櫻田義孝▽江﨑鐵磨▽門博文▽あべ俊子▽山本幸三▽伊藤忠彦▽石田真敏▽繁本護▽宮﨑政久▽武井俊輔▽白須賀貴樹▽福山守▽石﨑徹▽岡下昌平▽木村哲也
 【参議院議員】堀井巌

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