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証人尋問を控えて「全国部落調査」復刻版出版事件裁判闘争
東西決起集会に結集しよう

「解放新聞」(2020.07.25-2960)

 鳥取ループ・示現舎にたいする「全国部落調査」復刻版出版事件裁判は、6月2日に進行協議がおこなわれ、8月31日から3回にわたって証人尋問がおこなわれる見通しとなった。足かけ4年目になる裁判だが、いよいよ法廷でのやりとりが再開される。証人尋問は、部落差別の現実を裁判長に伝え、被告Mらの行為が部落差別を助長拡散するとんでもない差別行為であることを弾劾するもので、裁判闘争の勝敗につながる重要な闘いである。

 部落解放同盟中央本部は証人尋問の予定者を激励するとともに、裁判闘争への支援運動を活性化させるために、8月に大阪、東京で裁判闘争勝利決起集会を開催する。決起集会に参加し、証人尋問で法廷に立つ原告を激励し、部落差別を助長・拡散させる鳥取ループ・示現舎を徹底的に糾弾する闘いを広げよう。

 弁護団は今回の三者協議をふまえて、二つの準備書面と追加陳述書を提出した。ひとつは、被告が5月26日に提出した準備書面(13)に反論する準備書面(21)で、もうひとつは原告を代表して片岡副委員長が追加の陳述書を提出した。

 被告らは、準備書面でさまざまな反論をおこなってきたが、なかでも大阪市立大学の阿久澤麻理子・教授が提出した意見書(第1、第2)にたいしてかなり分量を割いて的外れな反論をくり返した。

 阿久澤教授は2018年5月(第1意見書)と本年2月(第2意見書)に、部落差別が土地をメルクマールにおこなわれている実態と、インターネットの掲載がいかに差別を助長するかを明確にした意見書を裁判所に提出した。意見書では、「近代化や都市化、さらに戦争や自然災害などによって大規模な人の移動が起こると、『ある人』が、封建時代の被差別身分とつながっているかどうかを、第三者が判定するのは困難」となり、「身分調査が属地的な判断に依存せざるをえなくなる」という、部落差別の現状を説明し、部落の地名リストである「全国部落調査」を出版する行為は、差別の助長拡散になると意見をのべた。これにたいして被告Mは、「同和対策事業が同和地区をつくった」という荒唐無稽な認識にもとづいて、「同和団体の役員や、同和対策で作られた公営住宅の氏名(これは書籍や住宅地図、電話帳、現地調査で調べられる)から近辺の部落に多い名字を特定し、部落の場所をピンポイントで特定する手法が存在する」などとのべ、差別解消を目的にして建てられた公営住宅などの施策が、部落や部落出身者の氏名を特定する手がかりになる、とした。その意味で、差別の手がかりをつくったのは解放同盟と行政だと主張した。これにたいして弁護団は、被告Mらが、公営住宅などを手がかりにして部落の所在地や部落出身者の氏名を公表し、差別を拡散させていることを「自白」したものだと厳しく弾劾した。

 また、阿久澤意見書が、結婚差別について、親をふくむ親戚から婚姻を強く反対されて翻意を促され、軟禁状態におかれたり、暴力をふるわれたりする事例は現在でも多数存在していると指摘したことにたいして、被告Mは「市町村が婚姻届けを受理しないということはないし、婚姻に親の承諾は必要ない。⋮⋮結婚差別と言われるものは、実際には100%当時者の責任であることを差別問題にすり替えているだけである」などと筋違いの主張をおこなった。これにたいして弁護団は、「被告らの主張は、結局のところ『法的に結婚できるはずだから結婚差別はない。結婚できないのは当事者の責任である』ということになるが、それは『男女雇用機会均等法があるのだから、労働現場における男女差別はない』『障害者差別解消法で障害者差別は禁止されているのだから、障害者に対する差別はない』というのと実質的に変わらない言い草にすぎない」と厳しく批判した。

 今回、原告を代表して片岡副委員長が陳述書を追加し(以下、追加陳述書)、証人尋問の選出について意見をのべた。片岡副委員長は「裁判所の発想は、情報を公開している原告と公開していない原告、住所や本籍を現に置いている原告と過去においていた原告、同じく情報が本人である原告と親族である原告では被害に差があるという発想に基づいている」とのべたうえで、「この分類は的を射ていないと言わざるを得ません。類型によって被害に違いが出るという考え方は、部落差別の実際からずれており、またこの裁判の焦点ともずれている」と指摘し、「このような分類はこの裁判の焦点を見誤り、判断において本質を捉えない判断に陥る危険がある」とのべた。

 また、「部落差別の実態を考えると、『全国部落調査』に本籍・住所が現にあってもなくても、親戚がいただけだとしても被害は同じで分類に意味はありません。『全国部落調査』に掲載されている地名にルーツを持つものは等しく部落出身者と見なされて差別の対象となる、これが現在の部落差別の大きな特徴です」「公表された地区に住んでおらず親族が住んでいるだけだと差別の対象にならないということもありません。いずれの場合も部落(もしくは同和地区)にルーツを持つ部落出身者と見なされて差別の対象となります」とのべ、類型分類にもとづいて証人を選出するよう指示した裁判所にたいして結婚差別や就職差別の体験者を追加採用するよう意見をのべた。

 また、被告Mが、原告の多数が部落出身であることを公表していることを証拠として提出していることに関連して、「部落出身者が、自分が部落出身であることを公表するのは、差別をなくしたいからです。何の動機もなく唐突に自分は部落の出身であるなどと公表することはありません。そこには差別をなくしたいという強い意志が働いています」とのべ、「現象的には本人の公表も被告Mらの公表も同じように映るかもしれませんが、部落差別をなくすための公表と、誰が部落であるのか、またどこが部落か全国のリストを晒すための公表とではまったく目的や動機が違います。それを同列において、公表を正当化することは許されません。また、それを同列において被害に軽重を付けることは、部落問題の本質からずれたことになります」と主張した。そのうえで、裁判の焦点が「全国部落調査」が差別を助長拡散することを弾劾する点にあることを強調し、証人については裁判の焦点である結婚差別や就職差別など部落差別の実態を体験的に証言する証人を採用するように要請した。

 提訴から4年かかったが、示現舎の出版差し止め裁判もいよいよ法廷での裁判が再開され、9月には証人尋問がおこなわれる。裁判は、証人尋問をへて、最終書面の提出をおこない、この年内には結審となり、年度内には判決がいい渡される見通しとなった。

 証人尋問では、被告側からも質問が出る。これまでの経過を見れば、被告らは事実を歪曲したうえで、卑劣で挑発的な質問をおこなってくるに違いない。それに対抗する準備をはじめなければならない。そのために部落解放同盟中央本部は証人尋問予定者を激励するとともに、裁判闘争への支援運動を活性化させるために、8月18日に大阪(HRCビル、午後1時〜)、8月24日に東京(日本教育会館、午後1時30分〜)で裁判闘争勝利決起集会を開催する。「全国部落調査」復刻版出版事件裁判は、被告Mらの悪質きわまりない差別拡散を糾弾するとともに、全国の部落出身者とその子孫を差別から守る闘いである。また、これまで部落差別をなくすために努力してきた国や地方自治体や企業や宗教団体、労働組合などの長年の成果を守る闘いである。関係者に広く関係者に参加をよびかけ、決起集会を成功させよう。

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