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第77回全国大会の成立をふまえ、部落解放運動を大きく前進させよう

「解放新聞」(2020.08.05-2961)

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって、3月に開催する予定だった第77回全国大会を延期した。延期決定以降は、会場の変更や大会規模の縮小などを検討してきたが、感染症拡大が収束しないなかで、中央委員会構成役員による意見集約をふまえ、5月段階で書面表決方式での開催を決定した。

 この間、感染症拡大の影響で第65回全国女性集会をはじめ、部落解放・人権政策確立に向けたとりくみや狭山再審要求市民集会のほか、第52回全国高校生集会・第64回全国青年集会、第54回全研などの中止も決定した。さらに、都府県連の定期大会も縮小開催や延期の措置がとられるなど、「自粛」「在宅勤務」「休校」を要請されてきたわれわれの日常生活はもちろんのこと、部落解放運動にとっても、きわめて困難な情況が生み出されてきた。

 一方、突然の小学校や中学校の一斉休校の要請や個人給付金の支給などについて、政府の感染症防止策が二転三転するなど、無責任な政府の対応によって、社会的な混乱がいっそう深まった。また、東京をはじめ首都圏での感染者数が「緊急事態宣言」を出した時点と同水準以上に拡がっているにもかかわらず、経済優先の「Go Toトラベル」事業の実施を強行したものの、東京発着を除外したり、キャンセル料の扱いでも大きく混乱した。

 こうした経済活動再開を優先した感染症防止策の迷走は、「コロナ疲れ」といわれるような疲弊感をさらに大きく増大させてきた。とくに「自粛警察」をはじめ、感染者や医療従事者とその家族などへの差別暴言、人権侵害事案は、今日の社会にある漠然とした不安や閉塞感の深まりがその背景にある。しかも、十分な補償もないままでの「休業要請」で、中小企業の倒産、解雇、雇い止めなどが続き、格差や貧困問題も深刻化している。

 また、世界各国でも、不十分な医療体制のもとで、貧困層での感染症による死亡者数が多いことも報告されている。このように感染症拡大によって露呈してきたのは、新自由主義による貧富の格差増大と自己責任化、差別排外主義の台頭など、国際社会における人権と民主主義の危機的情況である。われわれは、感染症拡大によって鋭く問われている人権と平和、これからの社会のありようなど多くの課題と真剣に向き合い、第77回全国大会の成立をふまえ、組織の強化と部落解放運動の前進に向けて論議をすすめていこう。

 書面表決方式となった第77回全国大会は、提案された議案と中央執行委員会構成役員および中央組織規律委員会役員選挙について、7月14日に大会運営委員会・選挙管理委員会による議案賛否の表決、信任投票の開票結果の確認をおこなった。また、7月15日の第8回中央執行委員会で、それぞれの委員会からの結果報告があり、第77回全国大会の成立が確認された。

 議案賛否については、中央役員と代議員をあわせた大会構成数680人のうち616人の書面表決の返信があり、第76期一般活動報告、会計決算報告、会計監査委員会報告、中央組織規律委員会報告、第77期一般運動方針案、会計予算案、大会宣言案について、会計予算案への反対が1人で、ほかの提案議案はいずれも全会一致で採択された。

 さらに、中央役員選挙では、いずれの候補者も有効投票数の過半数を獲得、信任された。また、都府県連選出の代議員のうち、女性代議員が3割をこえ、女性の中央執行委員も1人増えており、男女平等社会実現推進本部がとりまとめた「基本方針」(第2次改訂)の目標達成に向けたとりくみもすすんでいる。

 なお、書面表決にあたっての代議員などからの意見、提言については、第1回中央委員会(8月3日)で書記長答弁として集約したものを提案し、了承された。会計予算案への反対理由は、「会計監査委員会からの指摘が反映されていない」「新型コロナウイルス感染症拡大による影響を考慮した予算案になっていない」などであり、会計監査委員会からの指摘については今後とも十分に考慮し、予算編成に反映させていく方向を明確にしていきたい。

 予算編成に感染症拡大の影響が考慮されていない点については、いずれの議案も、第76期第4回中央委員会(1月27日)で了承されたものであり、議案送付にあたっての説明不足もあったが、財政問題については、ほかにも多くの意見、要望が出されている。中央執行部としては、組織および運動の強化と財政問題は喫緊の課題であると認識しており、中央財務委員会での論議もふまえながら、中央委員会などで都府県連の問題意識も共有し、十分に討議をして早急に方針を確定させていく必要がある。

 さらに、感染症対策へのとりくみとしては、対策本部(本部長・西島書記長)を設置し、6月に自民党、公明党の与党のほか、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、社民党に要請書を提出している。また、都府県連での対応のとりくみ、具体的な要望事項などの集約もすすめており、今後とも、感染症対策として、人権確立を軸にした安全安心の社会づくりに向けた提言づくりのための論議を活性化させていきたい。

 今回の書面表決にあたっては、「部落差別解消推進法」具体化、狭山再審の闘い、2年後の全国水平社創立100年に向けた提言や要望、「是旃陀羅」問題をはじめ、多くの意見、提言が出された。

 法務省は、6月15日に開催された自民党部落問題小委員会で、「部落差別解消推進法」第6条にもとづき実施した自治体での部落差別事象やインターネット上の部落差別情報の集約とともに、昨年8月の部落差別に関する国民意識調査結果をふくめた報告をおこない、今後の施策内容について説明した。とくに人権擁護局長は調査結果報告のなかで、いまだに結婚、交際をはじめ雇用にたいする差別が存在するとの認識を示し、インターネット上にある被差別部落情報が、身元調査につながるものであることを明確にした。われわれも、調査結果をふまえ、今後の施策のあり方についてとりまとめ、政府や各党にたいして強力に要請していくことが必要である。

 狭山再審闘争では、6月末に裁判長が交代したが、下山第2鑑定や福江鑑定など、石川一雄さんの無実を科学的に明らかにした新証拠の学習、情宣を強め、石川無実の世論をさらに大きくしていかなければならない。感染症拡大のなかで、集会や学習会などの開催でもさまざまな制限があるなかで、工夫したとりくみをすすめていこう。

 鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争は、8月末から口頭弁論が再開され、証人尋問がおこなわれる。この間、法務省もインターネット上に被差別部落の所在を明示するなどの情報は、差別を助長するものとして削除対象とする通知を出すなど、われわれの闘いは大きく前進している。彼らの差別的な居直りを許さず、裁判闘争勝利に向けた集会の成功と、口頭弁論への結集をかちとろう。

 こうした具体的な部落解放運動のとりくみとともに、運動方針の基調として、安倍政権による憲法改悪阻止の闘いの強化を重要な課題としている。今後とも、人権と平和、民主主義の確立をめざす部落解放運動は、差別と戦争に反対する闘いの先頭に立ち、改憲阻止のために全力をあげなければならない。経済活動を優先する感染症対策では、安全安心の社会は実現できない。社会連帯、いのちと生活を守る部落解放運動の果たす役割はますます重要である。

 第77回全国大会は、感染症拡大が収束しないなかで書面による表決となったが、組織拡大や運動の強化などについて多くの意見や提言が出された。あらためて、今大会の成立をふまえ、国内人権委員会創設や狭山再審実現に向けた闘いなど、運動方針を具体化、豊富化する実践をすすめ、部落解放運動を大きく前進させよう。

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