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NEWS & 主張

主張

 

感染症拡大のもとで深刻化する差別情況と対決し、
部落解放運動を前進させよう

「解放新聞」(2021.01.15-2977)

 昨年12月21日に21年度政府予算案が閣議決定された。予算案の一般会計総額は約106兆6097億円と当初予算としては過去最高額となったが、新型コロナウイルス感染症拡大をふまえた医療機関への減収補填や中小企業などへの支援をはじめとする対応策としてはまったく不十分である。また、高齢化がすすむなかで、社会保障費の自然増を1300億円も削減する一方で、軍事予算は過去7年連続で最高額を計上するなど、まさに「自助」を強調し、軍拡路線をすすめる菅政権の姿勢が明確になっている。

 さらに菅政権は、憲法違反の「敵基地攻撃力」の保持についても検討を継続させるとしている。また、配備を断念したはずの陸上配置型迎撃ミサイルシステムであるイージス・アショアに替わるシステム導入に向けた調査費、空母化する「いずも」型護衛艦の改修費などを予算化している。しかも、沖縄県の辺野古新基地建設に840億円を計上するなど、民意を無視する菅政権の強権政治を許してはならない。

 全国的な感染者の急増が続くなかで、いま必要とされているのは、医療提供体制を整備するための施策である。また、深刻な状況である雇用問題、とくに非正規、派遣労働者への支援、中小企業を中心にした事業継続のための対策をすすめていくことが求められている。しかし、菅政権は観光支援事業に固執し、自治体の要請によって、ようやく「緊急事態宣言」を出すなど、まったくの無為無策を続けてきた。

 菅政権は、このように感染症拡大が続くなかでも、まさに不要不急のデジタル庁創設や携帯電話料金の値下げなどを最優先の政治課題としている。十分な補償もないままに自粛だけを強要し、普及のすすまないマイナンバーカード取得促進のためのデジタル化推進などにとりくむ菅政権に抗して、いのちと生活を守る部落解放運動の役割はますます重要になっている。

 これまで菅政権は、当時の安倍首相による「桜を見る会」前夜祭での事務所負担問題での偽証答弁について、安倍政権時代に官房長官として同様の答弁をくり返してきたことへの説明責任を放棄したままである。また、日本学術会議会員任命拒否問題でも、具体的な説明を拒否するなど、強権的な政治をすすめている。

 さらに、本年1月に発効する「核兵器禁止条約」についても、日本政府は批准をしないままである。われわれは、日本政府にたいして、米国と歩調を合わせることなく、戦争被爆国の責任として早急に条約の批准を実現するように強く求めていかなければならない。

 一方、昨年の米国大統領選挙でのトランプ大統領敗北以降、米国では、トランプ大統領に煽動された支持者が議事堂に突入、占拠し、死者が出るなど、自国第一主義によって生み出された分断と対立はいっそう深まっている。また、この間台頭してきた差別排外主義勢力は、その政治力をよりいっそう強めており、国際情勢はますます混沌としたものになっている。

 われわれは、こうした厳しい内外情勢のもとで、差別と戦争に反対し、憲法改悪を許さない闘いをすすめていかなければならない。かつて侵略戦争への協力を余儀なくされた全国水平社の痛苦の歴史としっかり向き合い、人権と平和、民主主義の確立のために、荊冠旗を先頭に全力で奮闘しよう。また、今年は東京都議選、衆議院総選挙などがある。強権政治を打破し、政治の変革に向けたとりくみの準備を早急にすすめよう。

 「部落差別解消推進法」は、部落差別が今日でも厳しく存在し、部落差別は社会悪であると明記し、部落差別を許さない社会づくりに向けて、国や自治体が相談体制の充実、教育・啓発の推進、実態調査の実施など、今後の部落解放行政の基本的な方向を示したものである。とくに、昨年8月に公表された「部落差別の実態に係る実態調査」結果報告では、いまだに結婚や日常的なつきあいのなかで、明確に差別意識が存在することが明らかになっている。

 また、インターネット上の部落差別情報についても、被差別部落の有無を自治体窓口へ問い合わせる事例が多く報告されている。鳥取ループ・示現舎は「部落探訪」で、復刻版出版禁止の仮処分が出された「全国部落調査」を利用して、未組織部落をふくめて、写真や動画でインターネット上に公開しているが、こうした情報をもとに問い合わせ事例が多発している。鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争は、3月で結審し、年内には判決が出される。彼らの差別居直りを許さず、裁判闘争の勝利に向けて全力で闘おう。

 一方、鳥取ループ・示現舎のように、きわめて悪質で、しかも居直りを続ける差別者の場合、人権救済制度が不備なために、民事裁判で訴えるしか手段がないことも大きな問題である。

 この間、「障害者差別解消法」「ヘイトスピーチ解消法」「アイヌ施策推進法」などの個別人権課題についての法的措置が実現されてきた。こうした闘いの成果をふまえ、包括的な人権の法制度の確立、とりわけ国内人権委員会設置を中心にした人権侵害救済制度の確立が急務の課題である。また、法務省が実施した実態調査結果がいまだに自治体と共有されていない。高知市では、組織内議員が同様の実態調査を要求してきた結果、高知市が独自に、部落問題に関する設問を設け、「人権に関する市民の意識調査」をおこなっている。法務省が全国の自治体との連携を深め、今回の調査結果をふまえた施策をすすめるように強く求めていきたい。また、自治体でも独自の実態調査をおこなうように、行政交渉などで要求していこう。

 狭山再審のとりくみでは、半世紀以上も無実を訴え続けている石川一雄さんの不屈の闘いに応え、事実調べを実現し、今年こそ、再審実現をかちとるために全力をあげていかなければならない。狭山弁護団は、インクにふくまれる元素を分析し、石川さんの自宅から「発見」された万年筆が被害者のものではないことを明らかにした「下山第2鑑定」や、コンピュータによる脅迫状の筆跡鑑定によって、脅迫状の筆跡が別人のものであるとした「福江鑑定」など、科学的に石川さんの無実を示す重要な新証拠を提出している。

 こうした新証拠の学習や情宣活動を強化し、再審実現に向けた世論を大きく拡げていこう。感染症拡大の影響で、中央集会や現地調査、活動者会議などが実施できない状況が続いているが、石川さんも健康管理を徹底し、ビデオメッセージなどで訴えを発信している。こういう時期だからこそ、住民の会や共闘会議などと連携し、各地でのとりくみを積みあげ、要請ハガキなど、創意工夫した闘いをすすめていこう。

 また、今年は東日本大震災から10年である。これまでも地震や豪雨など、全国各地で多くの被害が出た。東日本大震災もふくめて、多くの地域で、住環境の復興や整備と生活再建などの課題が重く残っている。福島第一原発の事故処理、汚染水問題もいまだに未解決である。菅政権は、脱炭素社会実現を口実に原子力発電に固執しているが、再生可能エネルギーを中心にした政策の転換をすすめてていくことが必要である。

 感染症拡大の影響で、われわれの日常生活だけでなく、さまざまな活動にたいする制約が続いている。また、感染症の拡大によって、感染者や医療従事者、家族への差別や、「自粛警察」のような同調圧力の強要など、日本社会の人権状況の脆弱性が剥き出しになっている。こうした差別社会と対決する部落解放運動をすすめていくことも重要な課題である。

 来年は、全国水平社創立100年という大きな節目の年を迎える。今年は、そのためにも、さまざまな工夫をしながら、狭山再審の闘い、人権救済制度の確立、鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争をはじめ、「部落差別解消推進法」具体化と部落解放・人権行政の推進、男女平等社会の実現などの闘いを大きく前進させよう。

 

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