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名誉毀損で有罪 〜差別ビラで執行猶予の判決
埼玉

「解放新聞」(2021.06.15-2993)

 【埼玉支局】 鴻巣(こうのす)市内で発生した差別ビラまき事件(2984号既報)の第2回公判が5月10日、さいたま地裁(第1刑事部、黒田真紀・裁判官)でおこなわれた。差別ビラをまいた被告人にたいし、名誉毀損で懲役1年6月、執行猶予3年の判決が出された。

 裁判官は「たんに被害者に精神的ダメージを負わせたいために犯行におよんだ身勝手な動機」「卑劣な態様であり、悪質」「被害者の負った苦痛はいちじるしく大きく、被害者が厳しい処罰を望むのも当然」とし、「これ以上、被害者にたいし、精神的なダメージを与えることはしないように」と強調。被告人(60歳・不動産業)は「被害者にたいして心からおわび申しあげます」とのべた。

 事件は1月、同市内の小学校の正門前電柱に差別ビラが貼られたのがはじまり。同校に通う子どもの両親の名前と住所が記され、「要注意人物/A夫婦は2人とも同和地区出身者、且つ犯罪者だ/日本人としてカウントされていない為に市県民税は免除されている」(※Aは名前)と書かれていた。その後も近くの公園などに8枚が貼られ、被害者Aさん宅周辺のポストにも投函。小学校校庭にも複数枚が投げ込まれていた。

 2月2日、鴻巣警察署は容疑者を逮捕。第1回公判(4月26日)で被告人は犯行を全面的に認めた。

 鴻巣市内で発生した差別ビラまき事件の第1回公判(4月26日)は、県連や関係行政の職員が傍聴。検察官が公訴事実を読みあげ、罪名は被害者への名誉毀損とのべた。被告人は事実に間違いがないことを認めた。

 第1回公判では、「なぜビラをまくなど事件の犯行におよんだのか」との裁判官の質問にたいし、被告人は、被害者Aさんが自宅の庭にたばこの吸い殻、瓶や缶、粗大ゴミなどを不法に投棄し、2、3回の注意をしたが、やめてもらえなかったからだとした。しかし、裁判官の質問にたいし、実際には「目撃はしていない」と証言。Aさんはゴミの投棄を否定している。

 また、被告人は「当時は犯罪になるとはまったく思っていなかった」とし、警察が自宅にきたとき「なぜ警察がきたのか、理由がわからなかった」とのべた。

 ビラになぜ「同和地区出身者」と書いたのかという質問には「Aさんの名字は同和地区出身者が多いのでそうだと思った」と説明。また、「犯罪者」と書いたのは「ゴミを不法に投棄する犯罪者であるから」とした。現在の心境については「ばかなことをした。懺悔の気持ちでいっぱいである」などとのべた。

「恐怖を感じ不安な生活」

 判決のあった第2回公判には、Aさんは出席せず、検察官がAさんの意見陳述を代読した。

 意見陳述でAさんは「今回の誹謗中傷による名誉毀損によって私たち家族はとても恐怖を感じ、不安な生活を強いられています。本来なら家族4人で平穏な生活を送ることができたのに、加害者の不法行為によって普通の生活が奪われてしまいました」「とくに娘の通う小学校前にビラを貼ったことや、小学校の敷地内や近隣の子どもたちが集まる公園内に複数回ビラをまく、娘を標的とした行為は、絶対に許すことはできません」「(娘は)学校にまかれたビラを他の児童に見られたことなど、友人宅に投函されたことで、いつかいじめに遭うかもしれないと思い、情緒不安定になってしまいました」とのべ、「加害者には強い憤りを感じる」と表明。また、「私たちにたいする誹謗中傷ビラに書かれてしまった同和地区ということばで、直接被害を受けた私たち家族以外にも、心を痛めている人がいるということを加害者は認識し、このような差別的思想をあらためることを求めます」とのべた。

 傍聴にかけつけた片岡明幸・県連委員長は「犯行の背景には部落への偏見が存在している」「名字が同和地区に多いというだけで、出身者と決めつけ、被害者の子どもが通う小学校にビラを投げ込む行為は、本当に悪質だ」と語った。

 

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