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「核兵器禁止条約」発効を受け、反戦・平和のとりくみを強化を

「解放新聞」(2021.08.05-2998)

 2021年1月22日、核兵器の開発や保有、使用などを全面的に禁止する「核兵器禁止条約」の批准国・地域が50か国を超え、発効した。人類史上初の核爆弾投下から76年、核兵器を「国際人道・人権法」に反する「非人道兵器」として、核兵器の開発、実験、製造、使用、そして威嚇もふくめて国際法で禁止する、といったきわめて画期的な内容だ。

 「条約」批准は、ノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)をはじめ、被爆者や核実験被害者、原水禁運動、世界の反核運動が、長年にわたって求め続けてきた成果だ。人類の平和と戦争のない社会を希求する世界の人びとと「核兵器廃絶」の「始まり」をともに喜び合いたい。

 しかし、核兵器廃絶までの道のりは、きわめて険しい。それには、唯一の戦争被爆国である日本政府の対応も大きい。「核兵器禁止条約」は、核兵器保有国と非保有国の対立を生み、核兵器廃絶への建設的協力を阻むことになると日本政府は主張。こうしたなかで、核兵器保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任しながら具体的な提案を示さず、核兵器廃絶議案を毎年、国連に提出する一方で、米国の「核の傘」を理由に「条約」に署名していない。まして、「核兵器禁止条約」は安全保障の観点がふまえられていないという主張は、「核兵器禁止条約」を否定することであり、被爆者の思いを踏みにじることになる。政府に、唯一の戦争被爆国である日本の役割を果たすことを求めるとともに、核兵器廃絶を求める人びとの声で、「核兵器禁止条約」の署名・批准を強く迫ろう。

 2021年1月、米国の原子力科学者会報から人類の終末まで「残り100秒」と発表された。終末時計は原子力科学者会報が定期的に発表しているもので、核戦争などによる人類の終末を午前0時としている。

 2021年、前年に続いて「残り100秒」となった理由について、原子力科学者会報は、核兵器の脅威として、「▽核兵器保有国は核の近代化プログラムに莫大な金額を費やしている▽米露をはじめとする国々では核兵器をより使える兵器にする動きが見られた」とのべている。

 終末時計が発表された数日前に発効となった「核兵器禁止条約」については、つぎのように記載されている。「核兵器禁止条約は核兵器保有国が核軍縮を確実に行うために圧力を高めることを目的に非核兵器保有国が主導となって成立した。核兵器のリスク、とりわけ核兵器使用の非人道性に注目が注がれている。集団安全保障や検証などの軍縮と拡散の課題に対処するため、全ての国々の具体的な行動につながることを期待している。我々は、全ての国々に対し、真の軍縮の結果を出すよう連携し、歩み寄ることを求める」。そして、つぎのように締めくくられている。「現在までに、新型コロナウイルスで200万人以上が亡くなった。新型コロナウイルスは、紛れもなく世界的な警告である。メッセージはシンプルかつ身が凍るようなものだ。「次はさらに悪くなる可能性がある。」パンデミックの経験を考えると、警告されなかったと合理的に言うことができる人はいない。我々がこれまでに直面した中で最も危険な状況である「0時(終末)まで残り100秒」のままである。我々みんなが、本当に文字通り、地球を救うため、今こそ、必要な行動を起こそう」。

 「核兵器廃絶」の実現は、待ったなしの状況だ。

 「核兵器廃絶」の実現に向けて、日本が果たすべき役割は多い。2020年4月に開催が予定されていた「核拡散防止条約(NPT)」の再検討会議は、世界的な新型コロナ感染症拡大によって複数回延期をくり返し、2022年開催が検討されている。NPT再検討会議は、インド、パキスタン、イスラエル、南スーダンの4か国を除く世界191か国・地域の国連加盟国で構成された、核問題を議論する組織だ。

 しかし、核保有国と非核保有国との意見の違いから、2015年の再検討会議では最終合意することができず、2020年NPT再検討会議の準備会合においても、再検討会議の方向性を決定づける勧告案が採択できず、核保有国と非核保有国の溝を埋めることができなかった。NPT条約第6条には、「核軍縮競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、…全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する」と明記されており、NPT体制の強化は、核兵器廃絶に向けて欠かすことができない。唯一の戦争被爆国を名乗る日本政府が、アメリカの核抑止力に頼る安全保障政策をあらため、「核兵器禁止条約」にまず署名、批准し、核兵器保有国にたいして他の非核保有国とともに、核兵器廃絶への共通したとりくみの強化を求め、再検討会議の成立をめざす必要がある。

 原水禁運動は、連合等と協力し、日本政府に核兵器禁止条約の批准を求める「核兵器廃絶1000万署名」を展開し、800万筆をこえる署名を獲得した。そして、「核兵器禁止条約」の発効した2021年に開催される「被爆76周年原水爆禁止世界大会」を成功させなければならない。感染症拡大のなかで規模が縮小されての開催となるが、ユーチューブでの動画配信の視聴(当日、後日とも右のQRコードから視聴可能)など、あらためて各都府県連・各支部の積極的な参加をお願いしたい。

 核兵器廃絶にとりくむ国内外のNGO・市民団体との国際的な連携強化をはかり、日本国内の核兵器廃絶に向けた気運を高める必要がある。原水禁・平和フォーラムからよびかけられるとりくみに積極的に参加し、非核自治体決議をかちとり、さらに非核宣言自治体協議会や平和首長会議への加盟・参加を拡大させよう。そして、日本政府にたいし、「核兵器禁止条約」の署名・批准を求め、被爆国として核兵器廃絶に向けた積極的な役割を果たすよう追及しよう。

 福島第一原発の汚染水海洋放出問題や原子力規制委員会による六ヶ所再処理工場の新規制基準「合格」など、原子力をめぐる課題・問題は山積している。

 核をめぐる状況が、いっそう厳しくなるなかで迎える「被爆76周年原水爆禁止世界大会」は、大きな節目となる。各都府県連は、原水禁大会に積極的に参加し、同時に、核兵器廃絶・脱原発・ヒバクシャの援護連帯の輪を拡げるため、各地域で創意工夫したとりくみを強化しよう。

 私たちは、「戦争をさせない1000人委員会」や「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」に積極的に参加し、原発再稼働を許さず、脱原発とすべての核兵器廃絶にとりくみ、核と戦争のない平和な21世紀を実現しなければならない。そして、すべての市民と連帯し、「戦争法」廃止、憲法改悪阻止に向け、全力でとりくもう。

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