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第78回全国大会の成立をむまえ、部落解放運動を大きく前進させよう

「解放新聞」(2021.08.15-2999)

 第78回全国大会は、昨年に続き、新型コロナウイルス感染症の拡大によって書面表決方式での開催となった。今年の全国大会は当初、規模を縮小し、3月に東京での開催を予定していたが、感染症拡大の影響を考慮し、5月に延期、会場も京都市内で準備をすすめてきた。しかしながら、感染症拡大が収束せず、東京をはじめとした首都圏、大阪、京都、兵庫などに「緊急事態宣言」が出されたことを受け、大会運営委員会との協議もふまえ、書面表決方式での開催を決定した。

 例年より大会規模を縮小したが、都府県連から登録された代議員300人のうち266人が書面表決書を提出した。6月14日の大会運営委員会では、中央役員もふくめて、中央会計監査報告への反対1票を除き、活動報告、決算報告、方針案、予算案などの議案が全会一致で採択されたことを確認した。なお、女性代議員は、87人が書面表決に参加し、目標とした3割以上の参加が達成されるとともに、16都府県連42人から方針案などへの意見、提案が集約された。

 これらの内容については、6月に開催された第1回中央委員会で、大会運営委員長から報告されるとともに、意見や提案にたいしては、中央執行部を代表して、西島書記長が答弁、いずれも了承された。このように2年続きで書面表決方式での全国大会の開催となったが、その後も、感染症拡大は依然として収束していない。東京などには、4度目の「緊急事態宣言」が出されるなど、菅政権による感染症対策の失敗への厳しい批判が集中している。

 このように感染症拡大が深刻な状況にあるなかで、東京オリンピック・パラリンピックの開催が強行された。さまざまな報道機関の世論調査でも、中止や延期を求める意見が多かったにもかかわらず、まさに政権維持のためだけの政治利用にほかならない。

 菅政権は、市民のいのちや生活の安全・安心よりも、みずからの政権維持が重要なのである。10月までには実施される衆議院総選挙や自民党総裁選に少しでも有利な条件をつくり出すために、市民生活を犠牲にするような強権政治を絶対に許してはならない。

 また、菅政権は、安倍政権を継承するとして、憲法改悪をすすめようとしている。「21年版防衛白書」では、初めて「台湾情勢の安定」が明記された。菅政権は、米中対立の激化を口実に「戦争をする国」づくりをすすめ、アメリカの政治力、軍事力を背景にしたアジアでの覇権の確立をめざしている。しかし、かつての侵略戦争への真摯な反省もなく、偏狭な歴史修正主義を主張することで、アジア諸国との信頼関係を喪失しているのが現実である。

 今日、新自由主義によるグローバル化は、世界市場を生み出す一方、国際社会のなかでは、自国第一主義による差別排外主義が台頭し、分断と対立が続いている。いま求められているのは、感染症の世界的流行(パンデミック)を収束させるという国際社会共通の課題の解決に向けた協調と対話の継続である。

 そのためにも、菅政権による憲法改悪を許してならない。全国水平社の闘いのなかで、戦争協力を余儀なくされた痛苦の歴史としっかりと向き合い、改憲策動の阻止に向けた協働のとりくみを全力ですすめよう。

 この間、「特別措置法」の終了にともない、部落問題解決に向けて、一般対策に工夫を加えるとの政府方針をふまえ、部落解放行政確立のとりくみをすすめてきた。しかし、人権問題のとりくみという拡がりのなかで、国や自治体の姿勢が後退するとともに、学校教育での部落問題学習の実践にかかわって教職員の人材不足や教材作成の必要性も強く指摘されてきた。

 この間、こうした困難な情況を打破するために、部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会と各都府県実行委員会の活動を積み上げ、人権や平和を基軸にした広範な政治勢力の結集をめざしてきた。2016年12月に成立、施行された「部落差別解消推進法」は、こうしたとりくみの成果である。

 「部落差別解消推進法」は、部落差別は社会悪であり、許されないものとして、その解決にあたっては、国や自治体が積極的にとりくむことが重要であることを明記した画期的な法律である。また、教育・啓発の推進、相談体制の充実など、基本的な施策を明示している。さらに「部落差別解消推進法」第6条にもとづいた実態調査が実施され、昨年8月に調査結果が公表された。調査結果についての国会質疑では、当時の法務省人権擁護局長も、結婚や交際ではいまだに部落差別意識が根強く存在することや、インターネット上の部落差別情報への対応についてもまだまだ課題があるなどの認識を示した。

 われわれは、「部落差別解消推進法」の施行以降、その具体化、活用をめざして全国で条例づくりをすすめてきた。自治体での施策の推進に向けては条例づくりが重要である。とくに、部落問題学習に向けた教職員研修や教材づくり、啓発事業の推進、隣保館などを中心にした相談体制の充実、地区の生活実態をふくめた、より詳細な部落差別に関する実態調査など、とりくむべき課題は多い。地区の要求、要望をしっかりと把握し、具体的な施策につながるような要求書を作成し、行政交渉を強化しよう。

 また、インターネット上の部落差別情報への対応については、法務局との交渉、申し入れなどで削除要請をねばり強くすすめることが重要である。この間、法務省交渉でもとりあげているように、自治体と連携してとりくみをすすめるように要求をしていこう。

 確信犯的な悪質な差別事件やヘイトスピーチが多発している。「部落差別解消推進法」制定の成果をさらに発展させ、国内人権委員会を中心にした人権侵害救済制度の創設も喫緊の課題である。幅広い力を結集して、全力でとりくみをすすめよう。

 狭山再審闘争では、下山第2鑑定や福江鑑定など、石川一雄さんの無実を科学的に明らかにした新証拠の学習、情宣を強め、石川無実の世論をさらに大きくしていかなければならない。感染症拡大の影響で、集会や学習会などの開催でもさまざまな制限があるなかで、石川一雄さん、早智子さんは、ビデオメッセージなどで再審実現への決意と活動強化を訴えている。

 鳥取ループ・示現舎にたいする裁判闘争は、9月末に判決公判がひらかれる。この間、法務省もインターネット上に被差別部落の所在地を明示するなどの情報は、差別を助長するものとして削除対象とする通知を出した。総務省も「プロバイダ責任制限法」を改定し、情報発信者開示の条件緩和をするなど、われわれの闘いは大きく前進している。彼らの差別的な居直りを許さず、裁判闘争勝利に向けて判決公判へ結集しよう。

 こうした具体的な部落解放運動のとりくみとともに、衆議院総選挙での人権・平和・民主主義・環境を基軸にした政治勢力の結集、拡大も重要な課題である。政権維持のために、東京オリンピック・パラリンピック開催を強行し、感染症対策より経済活動を優先する菅政権では、安全安心の社会は実現できない。政治の変革に向けて、社会連帯の再構築、いのちと生活を守る部落解放運動の果たす役割はますます重要である。

 第78回全国大会は、感染症拡大が収束しないなかで書面による表決となったが、組織拡大や運動の強化などについて、多くの意見や提言が出された。創意工夫しながら組織的な論議をすすめていきたい。また、来年は全国水平社創立100年という大きな節目の年である。今後の部落解放運動の方向をあらためて論議し、組織の総意として内外に発信していくことが求められている。

 今大会の成立をふまえ、感染症の拡大のなかにあっても、運動方針を具体化、豊富化する実践をすすめ、全国水平社創立100年に向けて、部落解放運動の新たな展望を切り拓くために全力で奮闘しよう。

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