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主張

 

部落解放運動の成果と課題をしっかりと総括し、
部落解放に向けた展望を明らかにしよう

「解放新聞」(2021.12.25-3012)

 政権維持のために東京オリピック・パラリンピックの開催を強行した菅政権は、開催中をふくめて、新型コロナウイルス感染症が爆発的に急増し、市民の厳しい批判ばかりでなく、衆議院総選挙に向けた自民党内の不安や反発もあり、退陣表明を余儀なくされた。後継として岸田内閣が9月6日に発足し、臨時国会の会期末の10月14日に衆議院を解散、10月31日投開票の衆議院総選挙が実施された。

 われわれは、今回の衆議院総選挙にあたって、人権や平和、民主主義と環境を基軸にした政治勢力の結集に向けて、推薦候補の必勝に全力をあげてとりくんできた。具体的には、憲法の改悪反対と国内人権委員会設置を中心にした人権侵害救済制度の確立などを大きな課題とした政策協定を締結し、部落解放・人権政策確立のとりくみへの理解を求めてきた。とくに立憲民主党は、総選挙公約でも国内人権委員会の設置を盛り込み、ジェンダー平等とともに、人権問題のとりくみ推進を強く訴えてきた。

 衆議院総選挙の結果は、自民党が議席を減らしたものの、日本維新の会が大幅に議席を増やし、衆議院での改憲発議に必要な3分の2以上の議席となるなど、厳しい結果となった。議席を減らした立憲民主党は、枝野幸男・代表が辞任し、泉健太・新代表のもとで、党再建をすすめることになり、新自由主義政策に対抗する政治勢力がどのような方向で政治変革を実現していくのか不透明な情勢になっている。

 しかし、差別問題、人権問題の解決へのとりくみが政治の重要な課題であることは、どのような政権であろうと変わりはない。これまで同様、人権や平和、民主主義と環境を基軸にした政治勢力の結集をめざして、各党での人権問題にとりくむ推進体制の確立を要請するとともに、部落解放・人権政策確立に向けた与野党協議の促進を求めていかなければならない。

 岸田首相は、衆議院総選挙で新自由主義政策からの転換として、「新しい資本主義」をめざすことを訴え、「成長と分配」を強調していた。しかし、12月6日に開会した臨時国会での所信表明演説では、これまでの自民党政権と同様、感染症が収束せず、新たな変異株が発見されているにもかかわらず、成長のみを優先する姿勢が明確になった。市民のいのちや生活を守るという政治本来のもっとも重要な課題はないがしろである。

 また、岸田首相は、衆議院総選挙の落選議員を内閣官房参与に起用し、「身内優遇」「失業対策」との厳しい批判がおこった。しかも、この落選議員が代表である政党支部が感染症対策の雇用調整助成金を申請し受給していたことが明らかになり、任命から1週間での辞任となった。まさに、お友だち内閣といわれた安倍政権や側近政治をすすめてきた菅政権と同様の政治体質であることが明らかになった。

 さらに、感染症の拡大のなかでは「緊急事態宣言」以降、十分な補償もないままでの、無責任な「自粛」や休業要請などで、中小企業の経営破綻、派遣切りや雇い止めなどが続き、格差や貧困の問題がいっそう深刻化してきた。こうした感染症対策の失敗をふまえ、中小企業への給付金や医療体制の充実が求められているにもかかわらず、岸田政権の補正予算は、軍事費を増大させ、「敵基地攻撃能力保有」を明言、沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設に固執するなど、「戦争をする国」づくりをさらにすすめようとしている。

 感染症の拡大は、これまでの医療制度の改悪、福祉や社会保障関係の予算削減、保健所や公立病院の統廃合をすすめてきた結果である。感染検査や予防、感染者への対応などに従事する医療関係者の疲弊、医療崩壊は、効率優先、経済優先の新自由主義政策による「人災」である。

 われわれは、あらためて差別と戦争に反対し、いのちとくらしを守る部落解放運動の今日的な重要性を再確認し、協働の闘いを断固すすめよう。

 感染症拡大予防のための制限、制約が長期化するなかで、人権や平和の確立を求めるさまざまな集会や、機関会議などもいままでのようには開催できない状況となった。今年の第78回全国大会も昨年に続き、書面方式の開催となり、中央委員会などの機関会議は、オンラインを併用し、討論、意見集約をしてきた。

 また、昨年は延期した福岡県北九州市での部落解放研究第54回全国集会(全研)は、開会行事、記念講演などを動画配信する方式での開催となった。合同開催の第53回全国高校生集会・第65回全国青年集会もオンライン方式で、全国の高校生や青年が参加した。

 10月の部落解放・人権政策確立要求中央集会と狭山再審要求市民集会、12月の世界人権宣言東京集会は、感染予防を徹底し、参加人数を制限したが、2年ぶりに開催した。いずれの集会も、全国から参加があり、闘いの前進に向けて意思統一することができた。

 今回の部落解放・人権政策確立要求中央集会では、衆議院総選挙中ということもあり、これまでのような国会議員要請や政府各省交渉は実施できなかった。今後とも、国内人権委員会設置をふくめた包括的な人権侵害救済制度の確立に向けて、地元での国会議員要請と合わせて、中央集会での集中したとりくみをすすめていきたい。

 また、狭山再審要求市民集会では、石川一雄さん、早智子さんが参加し、再審実現に向けた訴えをおこなった。この間、感染症拡大の影響で各地の集会へは参加せず、現地調査も難しい状況のなかで、ビデオレターなどを配信してきたが、久しぶりに集会でアピールすることができたことは集会の意義をいっそう深めるものになった。

 このように全国的な集会、機関会議の開催にあたっては、運動を停滞させることなく、さまざまな工夫をしながらとりくんできた。今後とも、対面方式を基本としながらも、感染症の拡大状況を考慮しながら対応をすすめていきたい。

 この間の感染症の拡大は、国際社会のなかでの分断と対立をいっそう深めることになった。とくに自国第一主義が生み出した対立的な国際情勢のなかで、感染症拡大防止に向けた共同のとりくみがすすまず、多くの国で医療崩壊とともに、貧困や格差、差別の問題を顕在化させてきた。

 今日の日本社会も、これまでの新自由主義政策のもとで拡大してきた貧困や格差、強まる差別意識の問題が、いっそう深刻化している。インターネット上の部落差別情報の氾濫やヘイトスピーチのように、差別や暴力が公然と煽動されている。われわれは、こうした情況の打破に向けて、鳥取ループ・示現舎裁判の控訴審闘争では、東京地裁判決の不十分点を克服し、完全勝利をかちとるために弁護団とともに全力で闘いをすすめていかなければならない。

 また、国内人権委員会の設置をふくめた包括的な人権侵害救済制度の確立に向けて、その政治責任、国際的な約束事であることを強く訴えていくことが必要である。これまでの「部落差別解消推進法」「ヘイトスピーチ解消法」などの個別人権課題の立法措置の成果をふまえ、さまざまな差別問題や人権問題にとりくむ当事者団体をはじめ幅広い協働のとりくみをすすめていきたい。

 さらに、狭山再審闘争では証人尋問の実現に向けて世論を大きく盛り上げていくことが求められている。感染症拡大のもとで、全国的な集会や現地調査など難しい状況であるが、各地での集会など工夫しながら闘いをすすめよう。

 来年は、いよいよ全国水平社創立100周年というわれわれにとって大きな節目の年である。「全国水平社創立宣言」を闘いの原点にしながら、部落解放運動の新たな展望を切り拓くために奮闘しよう。

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