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地域共生社会の実現へ生活・福祉のとりくみの強化を

「解放新聞」(2022.03.25-3021)

部落解放第27回中央福祉学校では、3つの報告を受け、質疑応答のあと、9府県連からコロナ禍での支部や隣保館の活動状況などが報告された(2021年12月18日・大阪市)

部落解放第27回中央福祉学校では、3つの報告を受け、質疑応答のあと、9府県連からコロナ禍での支部や隣保館の活動状況などが報告された(2021年12月18日・大阪市)

 新型コロナウイルス感染症が発覚してから、3年目に入った。アルファ株、デルタ株、現在流行しているオミクロン株と新たな変異株がつぎつぎと明らかになり、依然として収束の気配は見られない。この間、「緊急事態宣言」が地域によって異なるが数度にわたって出され、現在、「まん延防止等重点措置」(2021年2月13日施行)が多くの都道府県で出され、延長されることになっている自治体も多い。

 飲食店などへの時短要請、酒類提供の禁止要請等があいついで出され、この2年間、飲食店は転廃業の危機となり、そこで働くアルバイトやパート労働者は解雇・雇止めの状況に追い込まれ、退学を余儀なくされたり家賃を払えず住む場所を失ったり、毎日の食事にも困る人が増加している。

 新型ウイルス感染症の長期化は、さまざまな規制の長期化をともない、環境が整わないテレワークの推奨や自粛生活は、ストレスを生み、深刻化するDVや児童虐待、自殺者とりわけ女性の自殺者が増大している。2020年では前年比で男性の自殺者が減ったのに、女性は935人増の7026人である。(厚生労働省・警察庁発表)また、感染者や濃厚接触者、医療従事者、日常生活には欠かせない仕事をしている人びとや、ワクチン接種ができない人、接種を望まない人への差別も増幅し、感染したことがいえない、いいづらい社会になっている。

 このようなときこそ、地域共生社会の実現に向け、生活・福祉活動のとりくみを強化していかなくてはならない。昨年12月に開催した「部落解放第27回中央福祉学校」では各地のとりくみや課題が報告された。

 「食」に関してのとりくみでは、フードバンクと協力した緊急食支援・子ども食堂・ふれあい会食・ワンコインランチや子ども食堂を土台にした子どもの居場所づくりのとりくみなどのなかで、コロナ禍による「家計激変」で「食」への支援が喫緊の課題であることが報告された。

 地域での相談で明らかになったことは、昨年大きな問題となった新型コロナウイルスのワクチン接種において、接種したいがインターネットでの予約ができない人が地域に多数存在したことや、被差別部落に多い中小零細企業者が持続化給付金手続き等をインターネットで予約できないことなどで、従来からいわれてきた情報格差の問題があらためて浮き彫りになった。

 隣保館については、昨年10月「緊急事態宣言」が解除されたのち、少しずつではあるが活動の再開が報告された。「緊急事態宣言」中は完全に閉鎖したところ、相談事業だけ受け付けたところ、人数制限をおこない隣保館事業にとりくんだところなど多岐にわたった。

 「新型コロナウイルス感染症流行における暮らしアンケート調査」や「困りごと調査」をおこなった府県で明らかになったことは、高齢者、障害者、母子・父子家庭に課題が集中しており、非正規雇用が多く、雇止めや収入減、人とかかわれないことからくるストレスや不安感の増大が訴えられたことだ。人とのかかわりを希薄にする、いわゆるステイホームによって、女性に課題が集中している実態も明らかにされた。

 福祉学校や日常の相談活動で明らかになった課題に支部・地区協議会・都府県連、中央本部がしっかりと連携しとりくんでいくことが、いま必要とされている。私たちは差別撤廃に向けて「人権のまちづくり」運動をすすめてきた。そのとりくみは、部落内外を問わず、困難な課題をかかえているすべての人にとって共通の課題であり、課題の解決に向けて人と人との豊かな関係性を築いていくことが大切だ。

 3年目に入ったコロナ禍においてワクチン接種のインターネット予約ができない人が多い高齢者や障害者、ワクチン接種を望んでいるのに予約が取れない人について、さまざまなとりくみがおこなわれた。隣保館やコミュニティセンター、公民館などに予約担当者が出向き、予約受付をおこなった自治体や、2回目の接種に向けて工夫を凝らして接種できるようにとりくんだ自治体など、住民の要望を吸いあげ、情報格差を生じさせない工夫を凝らした自治体など、新型コロナウイルスが急速に増加するなかで、地域と連携したとりくみがいかに重要であるかを示すものであった。

 いま、自治体から「住民税均等割非課税世帯等の皆さまへ」との名目で「住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金」(1世帯10万円)の案内が届けられている。このような施策についても相談のなかで、自治体からきた文書の意味がよくわからず「確認書」「申請書」を出すことへの不安を生じさせている現実があり、このようなことに、ひとつずつていねいに相談に乗っていくのが隣保館であり、支部での相談事業である。

 厚生労働省では「「地域共生社会」の実現に向けた隣保館の役割〜重層的支援体制整備事業の実施について〜」と題して、「地域共生社会」とは、制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会、と位置づけている。また、「改正社会福祉法」(2021年4月施行)は、「地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に関する事項」を新たに加えている。市町村による包括的支援体制整備には隣保館も当然ふくまれ、関係機関の一つとして地域福祉を担う機能を有していることから、地域福祉の拠点施設としての役割が期待されている。

 地域での相談は、複雑化・多様化している。相談者から、しっかりとていねいに傾聴し、解決につながる相談活動が求められている。多岐にわたる相談内容が背景にある相談活動は支部活動の基本である。NPO法人や社会福祉協議会、地域包括支援センター、生活困窮者自立支援制度にもとづくサポートセンターなどと連携し、情報の共有とともに多くの人に情報を届け、必要な人に必要な情報を届けられているのかどうか、解決につながる相談活動ができているかなど、支部活動を相談活動の視点からふり返り、いのちと暮らしを守る地域福祉運動をしっかりと展開していこう。

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