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主張

 

人権と平和、民主主義、環境の確立に向けて
参議院選挙闘争を全力でとりくもう

「解放新聞」(2022.06.25-3031)

 岸田政権は、6月7日の閣議で経済財政運営の基本方針となる「骨太の方針」と、岸田政権が打ち出している「新しい資本主義実行計画」を閣議決定した。

 「骨太の方針」では、5月23日の日米首脳会談での合意である「台湾海峡の平和と安定の重要性」についての文言を注釈に追加し、初めて「台湾有事」に言及した。また、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」「北大西洋条約機構(NATO)が軍事費を対国内総生産(GDP)で2%以上を目標にしている」ことなどを新たに本文に追加した。

 さらに、23年度予算編成でも「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」と軍事費倍増に向けた姿勢を鮮明にしている。22年度当初予算での軍事費は約5・4兆円であり、GDP比1%弱である。これを5年以内にGDP2%に引き上げるとすると、毎年1兆円程度の増額が必要である。

 このように岸田政権は、軍事費の増大を強行しようとする一方で、社会保障制度の改悪をすすめている。とくに、10月以降に75歳以上の医療費窓口負担を2倍化する「全世代型社会保障」や病床削減に向けた「地域医療構想」のほか、社会保障費の自然増分削減のもとで、公的医療保険や介護保険での負担増が検討されている。

 また、今後の経済や財政の運営については、これまで安倍政権がすすめてきた経済政策を全面的に継承する方向を明確にしている。新型コロナウイルス感染症拡大の影響があったとはいえ、経済成長が実現しなかったアベノミクスと同様に、「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の一体的推進」「2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現する」などとしている。

 しかし、すでに2%を超える物価上昇で市民生活は困窮しているのが実態である。日本銀行の黒田総裁による「家計の値上げ許容度も高まっている」などと市民生活の現実を無視した発言も厳しい批判を受けて撤回した。

 岸田政権は、「武力攻撃に対する反撃能力」と「敵基地反撃能力」を言い換えてまで、その保有の検討を明言するなど、憲法改悪と軍事大国化をすすめようとしている。

 われわれは、こうした「戦争をする国」づくりを断じて許してはならない。

 7月10日に投開票が予定されている参議院選挙では、比例代表で、石橋通宏(情報労連)、鬼木誠(自治労)、古賀ちかげ(日教組)、辻元清美(私鉄総連)、柴慎一(JP労組)、福島みずほ(社民党党首)の推薦を決定している。憲法改悪を阻止し、平和と人権、民主主義、環境の確立に向けた政治勢力を大きく結集するために、推薦候補の必勝へ全力をあげてとりくみをすすめよう。

 立憲民主党は、6月2日に人権政策推進議員連盟(会長:近藤昭一・衆議院議員)の総会を開催した。総会では、インターネット上の部落差別情報にかかわる法務省、総務省からの報告にたいして、差別情報がほとんど削除されず放置されている実態に批判が集中した。とくに部落差別情報の削除に関連して、プロバイダまかせにしている総務省や法務省の無責任な対応について、国がしっかりとした指導、要請をするべきであるとの意見が多く出された。また、国内人権委員会を中心にした人権侵害救済制度の確立に向けた国会質疑など、今後の具体的なとりくみについても協議された。

 先般開催された第79回全国大会でも、インターネット上の部落差別情報の対応について論議された。自治体でのモニタリング制度導入の拡がりや、首長などが法務局にたいして直接削除要請をするとりくみなどが報告され、今後とも、とりくみを強化していくことを確認した。

 当面、インターネット上の部落差別情報への対応については、このように国会質疑と、都府県連段階でのとりくみを有効に結合させて、実効ある措置を実現していかなければならない。

 また、8月の鳥取ループ・示現舎にたいする控訴審では、インターネット上の悪質な部落差別の居直りを許さず、完全勝利をかちとるために全力をあげてとりくもう。

 ロシアによるウクライナ侵略は、断続的な停戦協議がおこなわれているが合意にいたらず、いまだにウクライナ東部のルガンスク州を中心に激しい戦闘が続いている。6月6日に開催された国連安全保障理事会では、ロシア軍による性暴力や人身売買についての公開会合のなかで、約680万人がウクライナ国外に避難しており、多くの女性や子どもたちが性暴力被害や人身売買の危険に晒されていると報告されている。まさに戦争は最大の人権侵害である。ロシアによる軍事侵略と戦争犯罪を許さず、即時停戦を求めて協働したとりくみをすすめよう。

 岸田政権は、今回のウクライナ侵略を理由にして、自衛隊を明記する憲法9条などの改悪へ策動を強めている。さらに、中国による「台湾有事」や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を敵国として想定するなど、軍事衝突の危機を宣伝し、軍事費を増大させている。

 また、安倍元首相などは核抑止力を強調し、「核共有」を主張している。日本は、唯一の戦争被爆国である。21年1月に核兵器禁止条約が発効し、核兵器廃絶のとりくみがすすんでいるにもかかわらず、岸田政権は、アメリカに同調し、条約の批准に否定的である。

 今回の参議院選挙は、憲法改悪を許さず、いのちとくらしを守るための重要な闘いである。都府県連では、選挙闘争本部体制を強化し、選挙区での立憲民主党の候補者を中心にした推薦を決定している。

 この間の報道機関の世論調査では、かならずしも立憲民主党の支持率が高いわけではない。しかし、差別と戦争に反対し、憲法改悪を許さないためには、立憲民主党、社民党を中心にした政治勢力を大きくしていかなければならない。

 今回の参議院選挙は、安倍政権いらいの新自由主義政策のもとで深刻化してきた差別や貧困、格差の問題にしっかりと向き合う政治を実現するための闘いでもある。これまでも確認してきたように、投票行動は一人ひとりの政治参加であり、部落解放・人権政策の推進に向けた重要なとりくみである。

 差別と戦争を許さず、人権と平和、民主主義、環境の確立をめざした政治への変革に向けて、参議院選挙に全力でとりくみ、推薦候補の必勝をかちとろう。

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