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憲法改悪・軍拡許さず、反戦・平和のとりくみを強化しよう

「解放新聞」(2022.08.15-3036)

 7月10日、参議院議員通常選挙の投開票がおこなわれた。改憲の発議には、衆参各院で総定数の3分の2以上の多数が必要だが、今回の改選でもそれを維持する結果となった。先の通常国会では、衆参両院での憲法審査会が活発にひらかれていたことをふまえると、今回の選挙結果を受けて「憲法改正」に向けた動きが加速することが見込まれる。

 この間、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化し、多くの市民が犠牲になっている。国連はこれまで市民の死者は少なくとも4889人、うち子どもが335人、国外に避難した人は879万人超と公表した。戦争によって市民の命と人権が蔑ろにされている。また、ロシアでもプーチン政権を批判するとともに、戦争反対を訴える著名人やジャーナリストが逮捕、拘束されていると報道された。国内ではアメリカの核兵器を国内に配備して共同で使う「核共有」や防衛費の倍増について議論され、岸田首相も先の参議院選挙で国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に防衛費を増やす方針を公約としていた。また、政府は敵基地攻撃能力をめぐり「集団的自衛権の行使」にも使えると見解を示すなど、人類最大の差別である戦争にみずからすすんで巻き込まれようとしている。こうした情勢のなか、反戦・平和、人権確立のとりくみを強化するために声をあげていかなければならない。

 6月23日、沖縄全戦没者追悼式がおこなわれた。1995年、沖縄戦などで亡くなられたすべての戦没者を追悼し、恒久平和の希求と悲惨な戦争の教訓を正しく継承するとともに、平和学習の拠点とするため、国籍を問わず軍人、民間人の別なく、すべての戦没者の名前を刻んだ「平和の礎(いしじ)」が建設された。「平和の礎」に曽祖父の名前が刻まれている、沖縄市立山内小学校2年の徳元穂菜(ほのな)さん(7)が自作の平和の詩「こわいをしって、へいわがわかった」を「天国にいる大きいおじいちゃんにも届きますように」と願いを込めて朗読した。徳元さんが家族と美術館を訪れたさいに目にした「沖縄戦の図」に描かれていた、集団自決や戦場を逃げ惑う人を見たときの思いを詩にしているので紹介する。

こわいをしって、へいわがわかった
びじゅつかんへお出かけ/おじいちゃんや/おばあちゃんも/いっしょに/みんなでお出かけ/うれしいな/こわくてかなしい絵だった/たくさんの人がしんでいた/小さな赤ちゃんや、おかあさん/風ぐるまや/チョウチョの絵もあったけど/とてもかなしい絵だった/おかあさんが、/七十七年前のおきなわの絵だと言った/ほんとうにあったことなのだ/たくさんの人たちがしんでいて/ガイコツもあった/わたしとおなじ年の子どもが/かなしそうに見ている/こわいよ/かなしいよ/かわいそうだよ/せんそうのはんたいはなに?/へいわ?/へいわってなに?/きゅうにこわくなって/おかあさんにくっついた/あたたかくてほっとした/これがへいわなのかな/おねえちゃんとけんかした/おかあさんは、二人の話を聞いてくれた/そして仲なおり/これがへいわなのかな/せんそうがこわいから/へいわをつかみたい/ずっとポケットにいれてもっておく/ぜったいおとさないように/なくさないように/わすれないように/こわいをしって、へいわがわかった

 核兵器をめぐる動きでは、「核兵器禁止条約」に参加する世界各国の代表やNGOなどが結集し、6月21日からオーストリアの首都ウィーンでひらかれた。昨年1月に発効した「核兵器禁止条約」は、6月30日の時点で86の国が署名、65の国が批准を終えている一方、アメリカやロシアなどの核保有国に加え、核抑止に頼る安全保障政策をとる国は参加していない。「オブザーバーとして参加してもいいのではないか」との声があるなか、日本は不参加だった。被爆地・広島が選挙区の岸田首相は今年5月、日米首脳会談のさいに、来年、日本が議長国を務めるG7サミット(主要7か国首脳会議)を広島市で開催する意向を表明し、「唯一の戦争被爆国である日本の総理大臣として(…)核兵器の惨禍を人類が二度とおこさないとの誓いを世界に示し(…)G7の首脳とともに平和のモニュメントの前で平和と世界秩序と価値観を守るために結束していくことを確認したい」と決意を語った。また、6月におこなわれた「アジア安全保障会議」の基調講演でも、すべての核兵器保有国に核戦力の情報開示を求め、米中2国間で核軍縮に関する対話をおこなうよう各国と後押ししていくことを強調した。しかし「核兵器禁止条約」については、唯一の戦争被爆国でありながら否定的だ。岸田首相は、「核兵器のない世界という大きな目標に向け重要な条約だが、核兵器国は1国たりとも参加していない」と説明している。「核兵器禁止条約」には、アメリカやロシア、中国など、核兵器を保有する国々が参加していない。そこに日本だけ加わって議論をしても、実際に核廃絶にはつながらないという考えだ。一方で、8月1日から国連本部で開催されているアメリカ・フランス・イギリス・中国・ロシアの5か国以外の核兵器の保有を禁止する条約であるNPT(「核拡散防止条約」)の再検討会議に、日本の総理大臣として初めて参加した。被爆者たちはこうした政府の姿勢にたいして、「本来なら、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約に参加すべきだが、それもしない。さらには、アメリカの「核の傘」に頼り、「核共有」の議論まで起きている。日本政府は、言っていることとやっていることが違う」と強く批判している。

 敗戦から77年、平和フォーラムが主催する「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8・15集会」が千鳥ヶ淵戦没者墓苑でひらかれる。満州事変から日中戦争、太平洋戦争へと拡大した戦争は15年にもおよんだ。政府によると、日本の戦没者は軍人・軍属230万人、民間人80万人とされている。また、アジア・欧米諸国にも多くの犠牲をもたらした。そしていまなお戦火の記憶に苦しむ人は少なくない。「B29爆撃機がおびただしい数の爆弾を落とす様子を目の当たりにした」「学徒出陣で徴兵され激戦地におくられた」など、戦争体験者の当時の記憶の語りは想像を絶する。戦後生まれが人口の8割超を占め世代交代がすすむなか、戦争の悲惨さ、平和であることの大切さに次世代が真剣に向き合い、どう継承していくかが大きな課題だ。

 7月8日、安倍晋三・元首相が、参議院選挙候補者への応援演説中に銃撃にあい、倒れた。私たちの運動は、安倍元首相の政治理念とは相容れることはなかったが、暴力でみずからの主張を成し遂げようとすることは、侵略戦争と同義で民主主義を根底から覆す行為であり、断じて許すことはできない。蛮行によって命を絶たれた安倍元首相のご冥福を心から祈りたい。

 この間、岸田首相は、「民主主義の重要性をあらためて国民とともに確認する」ことを理由の一つとして、亡くなった安倍元首相を今秋に国葬とすることを発表した。安倍政権下では、「戦争法」をはじめとする平和主義や基本的人権の尊重に反する法制度が、多くの反対の声があるなか、数の力で採決された。まさに民主主義を無視した国会運営だった。法的根拠のない国葬を閣議決定でおこなうことも民主主義に反する。そして国葬とすることで、安倍元首相の「神格化」をはかり「政治利用」することは民主主義の軽視以外の何物でもなく認めることはできない。

 私たちは、「戦争をさせない1000人委員会」や「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」に積極的に参加し、核と戦争のない平和な21世紀を実現しなければならない。そして、すべての市民と連帯し、「戦争法」廃止、平和憲法改悪阻止に向け、全力でとりくもう。

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