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著者や編集担当者と話し合い 〜講談社現代新書での問題表記で

「解放新聞」(2023.07.15-3070)

 『ネット右翼になった父』(講談社現代新書)のなかでの事実誤認の問題表記について、6月12日午後、東京都内の中央本部で、著者の鈴木大介さんと、出版元の講談社の編集総局役員や編集担当者と話し合いをもった。中央本部から赤井書記長と大西中執が出席した。

 問題の箇所は、著者の父親の大学時代の友人Sさんを取材したときの証言。関西地方で不良債権を回収した経験として、Sさんによる「揉めるんですよ。いちばん怖かったのは部落解放同盟だよね。朝鮮人が仕切っていて、暴力団よりおっかない、始末に悪い…」との発言をそのまま記述した部分。中央本部はまったくの事実誤認であるとして「抗議の申し入れ」(4月19日付)を送付していた。

 話し合いでは、赤井書記長が「申し入れ」の内容をあらためて説明したあと、著者と講談社から、それぞれ提出されていた回答書(4月27日付)にもとづいて見解が示された。

 著者の鈴木さんは、自分の記述スタイルとして、取材した証言や発言はそのまま掲載することにしているが、今回は事実と違う内容があり、そうしたことを点検せずにそのままにした点は軽率であったことや、厳しい債権取り立てに対抗する存在として部落解放同盟を想定していた思い込みもふくめて、深く反省しているとのべた。また、講談社の担当者から、事実誤認であり、不適切な記述であったことを認め、新規の出荷停止と、書店での販売中止の要請、電子版の販売・配信も停止していることが報告された。

 赤井書記長から、担当編集者の段階で、事実誤認であることが確認されなかったことを強く反省してもらいたいと強調。また、Sさんの証言にもある関西地方での具体的な事例を示して地区内に居住する在日コリアンと部落解放運動の関わりは協働してきた課題もあるが、アイデンティティの違いから対立してきたことも事実。そのなかで、さまざまな論議があり、たんなる事実誤認という以上に、歴史的な背景や経過もふくめて、しっかりと認識してもらいたいと厳しく指摘。具体的な再発防止策についても強く要請した。

 さらに、鈴木さんには、反差別、反ヘイトの立場から書かれているなかで、こうした記述はきわめて残念。反省だけでなく、あらためて部落解放運動や、部落に居住してきた在日コリアンの存在を掘り下げた取材をしてもらいたいと要望した。

 大西中執からは、鈴木さんにたいして、父親の在日朝鮮人にたいする嫌悪感の背景を探るなかで、「部落解放同盟」という「こわい存在」を出すことによって、Sさんの証言に、よりリアルな凄みを読者に与える効果を、意識的にではないにせよ期待したのではないかということも、あらためて考えてほしいと要請した。

 この話し合いをふまえて、鈴木さんと講談社側から、それぞれ文書回答(6月8日付)が出された。鈴木さんからは、歴史的な事実を学ぶことはもちろんのこと、それ以上に当事者たちの心情や、発せられた言葉にふくまれた想いを受けとめることのできる表現者となるように、継続的な努力をしていくとの回答があった。

 また、講談社からは、再発防止策として、今回の事例を社内全体で共有し、人権研修内容を充実させていくことや、校閲体制として、フリーランスの校閲者もふくめた人権研修を実施することなどが示された。

 さらに、再版にあたっては、鈴木さんが、本書全体を見直すとともに、問題になった箇所は、前後の文脈や内容を損なわないようにして削除する方向で検討することが、あわせて報告された。

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